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建設環境コンプライアンスへの対応・評価・報告をDXするデンマークのAcembee

  • 欧州の建設産業では環境コンプライアンスへの対応の必要性が高まっている
  • デンマークのAcembeeは、建設現場におけるエネルギー利用や排出物のモニタリングや報告をDXする
  • Acembeeは省エネ率や環境配慮を定量的に把握することにより、ESG報告や公共入札をサポートする

はじめに

画像引用元:欧州評議会公式ホームページ

欧州では、製品や建築物の環境影響を原料調達から廃棄・リサイクルに至るまで全体で評価するライフサイクルアセスメント(LCA)と呼ばれる手法が、国際規格 ISO 14040 に準じて普及しています。また建設製品規制(CPR)、環境性能を含む宣言(EPD:環境製品宣言)、またEUで販売される製品がEU規制に適合していることを示すCEマーキングの義務化が進んでいます。

建設産業においては排出量がライフサイクル全体の大きな割合を占めることが問題視されており、欧州委員会は建設プロジェクトのCO₂排出を段階的に削減する方針を示しています。2025年以降は建設現場ごとに排出量を定量的に報告する義務が強化され、国ごとに異なる形式でデータ提出が求められることとなります。こうした法的要件を人力で処理するのは非現実的であり、データ収集から報告書作成までを自動化するSaaSの需要が急速に高まっています。

そこで今回ご紹介するのは、建設環境コンプライアンスへの対応・評価・報告をDXするデンマークのスタートアップAcembee(アセンビー)です。一体どのような企業なのでしょうか。詳しくみていきましょう。

建設現場の環境報告を自動化する「Acembee」とは?

画像引用元:EU-Startups公式ホームページ

Acembeeはデンマーク・コペンハーゲンを拠点とするスタートアップで、建設現場における安全、省エネルギー、環境コンプライアンス報告の自動化を進めるSaaSを提供しています。2025年8月26日には、シードラウンドで120万ユーロ(約2億1700万円)の資金調達を実施。リード投資家にはアーリー向けVCのnode.vcが参画し、そのほかKiilto Ventures、およびエンジェル投資家が参画しています。

欧州では建設段階のエネルギー使用やCO₂排出に関する報告義務が急速に拡大しており、Acembeeはその対応をデジタル化することで、現場の監査・報告業務を効率化することを目指しています。

同社が提供するプラットフォームは、建設現場の電力メーターや照明、クレーン、仮設設備などから得られるエネルギーデータを自動的に収集し、クラウド上で一元管理します。従来は現場担当者が手作業でまとめていたデータを、AIとクラウドを用いてリアルタイムに整理・可視化することで、どの設備がどの程度の電力を消費しているのか、どの時間帯に無駄が発生しているのかを即座に把握できるようになります。さらに、収集したデータをもとに自動生成されるレポートを使って、LCA(ライフサイクルアセスメント)の各種様式にも対応。建設段階のエネルギー消費とCO₂排出量を算出・報告可能となります。これにより、建設会社はEUの新しい環境基準や脱炭素目標に迅速に対応できるようになります。

AIとIoTでリアルタイム可視化するAcembeeのソリューション

画像引用元:Acembee公式ホームページ

Acembeeのビジネスモデルは、クラウドベースのサブスクリプション型サービスを中心に構成されています。主要ターゲットは建設会社やゼネコン、または現場設備を担当する下請け業者です。契約後に現場の電力メーターやIoTセンサーを接続することで、自動でエネルギー使用データを収集可能に。生成されたダッシュボードでは、CO₂排出量や電力使用量の推移、改善効果がグラフとして可視化され、報告書作成にそのまま活用できます。

Acembeeのウェブサイトでは、同社のツールを導入した現場で平均40%の電力消費削減が確認されたと述べられています。従来のエクセルや手書き帳票で行っていた管理に比べ、導入準備にかかる時間は数分、運用開始まで15分程度という手軽さも特徴です。これにより、現場管理者がエネルギーデータの記録作業に費やす時間を減らし、改善策の検討や安全対策などより付加価値の高い業務に集中できるようになります。

建設環境コンプライアンスと課題

画像引用元:Acembee公式ホームページ

北欧という地域的背景も、Acembeeの成長に追い風となっています。デンマークやスウェーデン、フィンランドなどでは環境対応に積極的なゼネコンが多く、現場ごとにCO₂排出量を開示する動きが進んでいます。これらの国では既に建設段階での電力や燃料使用をモニタリングすることが一般的になりつつあり、Acembeeのサービスはそうした企業のニーズに合致しています。また、北欧諸国は公共建築でのグリーン調達が義務化されつつあり、省エネ報告を正確に出せることが受注条件となるケースも増えています。その意味で、Acembeeのソリューションは環境認証の獲得支援という側面も持ちます。

一方で、課題もいくつか存在します。まず、各国の報告フォーマットやLCA計算ルールが異なるため、国ごとにデータの処理や書式を調整する必要があります。AIを用いた自動分類の精度を高めるには多様な現場データを学習させなければならず、時間がかかる可能性がある。また、IoTセンサーの導入・保守コストや現場スタッフの習熟度も普及の壁となります。さらに、既存の施工管理ソフトやBIMプラットフォームとの連携をどう進めるかも今後の焦点となります。

まとめ

画像引用元:Acembee公式ホームページ

いかがでしたか?今回は建設環境コンプライアンス対応をDXするデンマークのAcembeeをご紹介しました。建設の生産性向上を掲げるスタートアップの多くが設計や施工後工程に焦点を当てるなか、Acembeeは「現場運営」と「規制報告」という地味だが不可欠な部分に価値を見出しています。これにより、プロジェクト全体の省エネ率や環境配慮を定量的に把握でき、最終的には建設会社のESG報告や公共事業入札での加点にもつながります。

日本やアジアの建設市場にとっても、Acembeeのモデルは示唆的です。日本では建設業の高齢化や人手不足が進み、現場管理の効率化が急務となっています。さらに、建築物省エネ法の改正や自治体による環境報告義務の強化が進む中で、現場単位のエネルギー使用や排出量を自動で把握できる仕組みの重要性は高まっています。電力使用や燃料消費のモニタリング、仮設設備の稼働管理、廃棄物排出の自動記録など、Acembeeが欧州で手がけている機能はそのまま日本の現場にも適用可能でしょう。とりわけ、環境認証取得やESG経営を重視する大手ゼネコンや公共工事主体にとって、報告業務の自動化は導入効果が明確ともいえます。

同社の今後の動向が注目されます。

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