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“廃プラスチック製”の砂利!?社会課題に取り組むArqliteの技術とは

  • 現在、廃プラスチックによる環境問題は世界共通の課題に
  • Arqliteは、従来の方法ではリサイクル不能だった70%の廃プラスチックをリサイクルし、建設資材に作り変える技術を開発
  • Arqliteが製造するプラスチック性の砂利は軽量で汚れにくく、造園の現場や排水設備などで活用されている

廃プラスチック問題は深刻な世界共通課題に

引用元:世界自然保護基金 公式HP

現在、廃プラスチックの問題は世界共通の深刻な問題へと発展しています。プラスチックは焼却の際にCo2などの温室効果ガスが発生することから、地球温暖化が加速するなどの問題が発生。他にも、限りある石油資源が枯渇してしまうなどの問題があげられます。また、これらに加えて近年は、深刻な海洋汚染にもつながっているという声も。既に世界の海に存在するとされる廃プラスチックは、合計で1億5000万トンと推定され、加えて毎年800万トンもの廃プラスチックが新たに海に流入されていると言われています。廃プラスチックの海洋汚染により、魚類やイルカなどの海洋哺乳動物や、700種以上の海中の生物がプラスチックを誤って摂取することで、負傷したり、死亡するなど、被害は深刻なものとなっています。

こうした状況をうけ、2019年6月に大阪で開催されたG20では、2050年までに海洋への廃プラスチックの新規流出ゼロを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が盛り込まれるなど、廃プラスチック問題は世界共通課題として認識され、非常に注目を集めています。

今回は、こうした廃プラスチックの問題に取り組み、プラスチックごみを建設資材へと再利用する技術を開発した、アルゼンチンのスタートアップArqlite (アークライト)をご紹介します。

廃プラスチック問題に取り組むArqliteとは?

Arqlite (アークライト)は、廃プラスチック問題に取り組み、再生プラスチック性の砂利を建設資材として製造しているテクノロジーカンパニーです。

ArqliteのCEOであるSajoux(サジュー)氏は、Arqliteの設立以前に、環境コンサルティング会社を設立し、消費財のメーカーなどを主な顧客として、食品包装におけるプラスチック利用に関してのコンサルティング業務を行っていました。Sajoux氏は当時のコンサルティング業務の中で、従来の方法ではリサイクル不可能な廃プラスチックが70%も存在することに直面。そこで、廃プラスチックのリサイクル問題を解決するため、2014年にアルゼンチンを拠点とするテクノロジーカンパニー、Arqliteを設立しました。

Arqliteは設立後、実験室規模の研究開発から事業を開始し、従来の技術ではリサイクルが不可能であった食品包装物やプラスチックフィルムなどを建設資材としてプラスチック性の砂利へと再利用する技術の開発に成功しました。後にArqliteは、ニューヨーク市で開催されたCTMC(Curb-To-Market-Challenge) というコンペで賞を共同受賞し、$ 250,000 (約2500万円)もの資金調達に成功しています。2018年にはブエノスアイレスに最初の工場を開設し、毎月50トンもの再生プラスチック性の砂利を建設資材として製造。アルゼンチンの建設や造園市場に製品を販売しています。2019年にはセメント製造大手のCEMEXの投資会社やコカ・コーラなどからシリーズAラウンドとして現在$1.7million(約1.7億円)を調達しております。アメリカ カルフォルニアで月1500トン生産な工場の建設を計画しています。

環境配慮×高機能!独自の建設資材を開発

画像引用元:https://resource-recycling.com/recycling/2019/08/06/how-a-startup-is-recovering-multi-layer-flexible-packaging/

Arqliteが開発した製品は、リサイクルされたプラスチックから構成されるプラスチック性の砂利で、主に建設資材として利用されています。プラスチック性の砂利であるArqlite(Arqliteの製品)が鉱物などの砂利と異なる点として、大きく3つの特徴があげられます。1点目は、重量が非常に軽いことです。一般的な建設現場で利用される通常の砂利と比較すると約3分の1の重さであり、搬送にかかる費用を安く抑えることが可能です。2点目に、劣化しづらいことや、ほこり等がでないことから、非常に建設現場において使いやすく、工事の際に異臭などが発生しないことがあげられます。3点目に、プラスチック性であることから、一般的な資材に比べて水はけが良く、排水設備などで積極的に利用されています。このように、Arqliteは環境配慮がなされているだけでなく、機能性として優れている点が多いことから、造園の現場や排水設備や建設現場などで積極的に活用されています。

オランダでは再生プラスチックによる道路舗装の事例も

画像引用元:https://www.ecoist.life/news/1384

再生プラスチックが建設現場で活用された事例としては、オランダの道路開発が注目を集めました。オランダでは2018年、オーファーアイセル州のズブォレ市とヒートホールン市にて、オランダの建設会社 “Volker Wessels” が開発した再生プラスチックによるプラスチックロードが実際に使われました。プラスチックロードは、アスファルトで舗装して道路をつくる従来の建設方法とは大幅に異なり、工場で製造された後に現場へと運ばれ、レゴブロックのように組み立てられます。建設資材を製造しているArqliteの事例とは多少異なりますが、建設資材として再生プラスチックが幅広い使われ方をしていることが伺えます。

まとめ

Arqliteは、廃プラスチックの再利用にイノベーションを起こし、建設業界において従来では再利用不可能とされた廃プラスチックから、建設資材を生み出すことを実現しました。廃プラスチックの問題が世界共通課題として存在感が強まる中、建設業界における再生プラスチックの活用を牽引するArqliteに今後も注目です。