全世界での建設需要が高まる一方で労働力不足は深刻化しており、建設管理ソフトウェアの導入により省人化とコスト削減をするという流れがますます主流となっています。そのなかで、全世界における建設管理ソフトウェア市場は、2024年の97.3億ドル(1.38兆円)から2029年の152億ドル(2.16兆円)へ、年平均9.33%の成長が予測されています(注)。
この領域における主要プレイヤーとしてContechMagではProcore(プロコア)やFieldwire(フィールドワイヤ)などに言及していますが、統合は比較的進んでおらず、多数の企業が競合している状況が続いています。そこで本記事では建設管理ソフトウェアの一つ、BaseStone(ベースストーン)をご紹介します。一体どのようなサービスなのでしょうか。詳しくみていきましょう。
注)Construction Software Market Size & Share Analysis – Growth Trends & Forecasts (2023 – 2028)
BaseStoneは、2012年にイギリスのロンドンを拠点とするBlue Robin Ltdが開発したWebアプリケーションで、2020年5月に同じくロンドンの事業会社Ensign Advanced Systems Ltdへと事業譲渡されました。BaseStoneは2016年5月にシードラウンドにて100万ユーロ(約1億5500万円)を調達するなど、これまでに230万ユーロ(約3億5700万円)を調達しており、主要株主にはアメリカのコロラド州発で世界最大級のプレシードファンドとされるTechstarが参画。その他にイギリスの起業家支援プログラムPitch@Palac、スペインのベンチャーキャピタルWayraが名を連ねています。
BaseStoneが目指すのは、建設現場とオフィスとの間の情報ギャップをデジタル化を通じて改善することで、建設プロジェクトのコストと危険性を抑制することです。同社CEOのアレクシヤ・シルヤノフスキ-氏は建設エンジニアとして10年の経験を経た後に起業家として独立。建設現場の状況がオフィスの管理者やデザイナーに共有されるまでのプロセスがアナログであることに注目し、このプロセスをタブレットからアクセスできるWebベースのアプリケーションでデジタル化するものとして、BaseStoneが誕生しました。アプリケーションはWeb版とiOS版が提供されています。
2020年の事業譲渡後の情報発信はありませんが、それ以前の5カ年連続で収益の前年比成長率が120%という実績を残しています。
ヨーロッパにおいて130年以上の歴史を持つ建設会社Skanska(スカンスカ)はBaseStoneをプロジェクト管理に活用する企業の一つ。SkanskaはBaseStoneを建設現場における施工状況の点検や品質保証に活用しています。SkanskaによるとBaseStoneを導入したことにより、時間ベースで65%の作業が削減できたとしています。
2017年8月に実施されたロンドンのウォータールー駅改良プロジェクトにおいて、BaseStoneが活用されました。このプロジェクトはプラットフォームの延長によって同駅発着の旅客輸送能力を30%向上させるもので、4億ポンド(約735億円)規模の予算がつけられました。BaseStoneチームは先述のSkanskaと協力し、プロジェクトにおける4Dビルディング・インフォメーション・モデリング(BIM)のサポートを実施しました。
Skanskaはあらかじめ設計図面の4Dモデルを作成し、これを元に作成されたPDFやビデオアニメーションが作成されました。BaseStoneチームはこれらのデータをBaseStoneで扱えるように統合し、施工期間中にSkanskaチームが自動同期された最新の4Dモデルデータを常に確認しながら施工を行えるよう支援しました。
いかがでしたか?今回はロンドンを中心に展開する建設管理ソフトウェアの BaseStoneをご紹介しました。BaseStoneは主に図面データの共同編集機能を中心に建設管理をデジタル化するというものでした。BaseStoneのほかにも建設管理ソフトウェア市場では新規プレイヤーが続々と登場しており、技術革新と統合が続いています。今後の動向が注目されます。