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元Waymo技術者が挑む 建設機械を自動化するBedrock Robotics

  • 自動運転建設機械市場は、2023年時点で192億ドル(約2兆8400億円)のところ、2032年には534億ドル(約7兆9000億円)へと年率12.8%で成長する見込み
  • アメリカ・カリフォルニア州のBedrock Roboticsは、既存建機に後付けで自動化できる「レトロフィット」型の製品を開発
  • Bedrockは2025年現在大手ゼネコンなどと実証実験を行い、2026年中の製品投入を目指す

はじめに

画像引用元:Bedrock Robotics公式ホームページ

建設機械の自動運転市場は、建設業界の慢性的な人手不足や安全性の向上要求、そして生産性改善への強いニーズを背景に急速に注目を集めています。従来、建設業界は労働集約的で技術革新が進みにくい分野とされてきましたが、自動運転やAI技術の進展に伴い市場は拡大しており、自動運転建設機械市場は2023年時点で192億ドル(約2兆8400億円)のところ2024年から2032年にかけて年率12.8%で成長し、2032年には534億ドル(約7兆9000億円)に達するとの見通しです

そこで今回はアメリカ・カリフォルニア州の自動運転建機企業Bedrock Robotics(ベッドロック・ロボティクス)をご紹介します。一体どのような企業なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

Bedrock Roboticsとは?

企業概要

Bedrockは2024年に米国カリフォルニア州サンフランシスコで設立されました。アルファベット傘下の自動運転技術企業であるWaymo(ウェイモ)に在籍していたエンジニアたちが中心となり、建設機械の自動化という課題に挑むことを目的に立ち上げられています。創業者兼CEOはWaymoにおける技術開発を担っていたBoris Sofman(ボリス・ソフマン)氏、またCOOとしては、Uber Freight(ウーバーフリート)で上級幹部を務めたLaurent Hautefeuille(ローレント・オトフェイユ)氏が参画しており、輸送や物流における事業開発の知見をもとに組織運営を担っています。

資金調達・パートナーシップ

Bedrockは2025年7月にシリーズAで6,000万ドル(約89億円)を調達し、累計調達額を8,000万ドル(約118億円)としました。、シリーズAは8VCが主導し、NVIDIAの投資部門であるNVenturesValor Equity PartnersRaine Groupなども参加しています。

事業面ではアリゾナ州フェニックス拠点の大手ゼネコンであるSundt Constructionが、Bedrockの製品の実証テストと製品改良に深く関与しており、「現場で技術の価値を実証する上で非常に重要なパートナー」であると位置づけられています。さらに、テキサス州を拠点とする複数企業とも連携が進んでおり、Zachry ConstructionChampion Site PrepCapitol Aggregatesなどが実証プロジェクトに参加しています。これらの建設会社との協業を通じて、Bedrockは技術の現実適用性を高め、市場導入に向けた実践的な知見を蓄積しています

製品概要

同社の主力製品Bedrock Operator(ベッドロック・オペレーター)は、既存の油圧ショベルやブルドーザーなどの建設重機に当日中で取り付け可能な、レトロフィット型(既存機械や設備に対して、新しい技術や機能を後付けで組み込む)製品です。高精度カメラ、LiDAR、GPS、慣性センサーなどを組み合わせ、センチメートル単位の精度で自動操作を可能にします。さらに通信機能を備えて遠隔からの監視や介入も行えるため、安全性と柔軟性を兼ね備えています。従来の重機を買い替えることなく自動化できる点に強みがあります。

建機を後付けで自動運転化するBedrock Operator

画像引用元:Bedrock Robotics公式ホームページ

後付け可能なレトロフィット製品

Bedrock Operatorは既存の建設重機をわずか数時間で自動走行機械へと変える後付け型のプラットフォームです。新たに重機を購入し直すのではなく、既存の油圧ショベルやブルドーザーなどに装着可能な点が最大の特長であり、工期や設備への影響を最小限に抑えながら自動化を可能にする設計になっています。

ハードウェアの詳細

技術的には重機のキャブ上部に設置されるラック型の装置と、キャブ内部に配置される演算用コンピューターで構成されています。このハードウェアにはLiDAR、GPS、慣性計測装置(IMU)、そして8台の高精細カメラが搭載されており、センチメートル単位の精度で位置を測定し、周囲の状況をリアルタイムに認識しながら作業を行うことができます。取り付けは1日以内に完了し、元に戻すこともできるため、柔軟な運用が可能です。これにより、一度の装着で24時間体制の稼働も実現し、プロジェクトの効率化に直結しています。

作業を見える化するソリューション

Bedrock Operatorは稼働の「見える化」を強化する役割も担っています。現場進捗を遠隔からリアルタイムでモニタリングし、可視化することで、プロジェクト管理の高度化を支援しています。また、事故のリスクを低減し、現場安全性を向上させる効果も期待されています。

活用事例

画像引用元:Bedrock Robotics公式ホームページ

Bedrockは実証段階にあり、製品化を見据えたテストを実施しています。大手ゼネコンのSundt Constructionは道路建設や都市インフラの大規模プロジェクトの担い手であり、最初期からの協力パートナーとして現場におけるBedrock Operatorの運用実験に深く関与しています。

また、Zachry Construction、Champion Site Prep、Capitol Aggregatesといった地域の建設会社と共同で現場適用を進めています。これらの事例では、掘削や整地といった標準的な建設作業を自動化し、遠隔から監視しながら効率的に作業を進めることが試みられています。

Bedrock Roboticsは2026年に「完全無人のオペレーターなし稼働」を実現するという目標を掲げています。

まとめ

画像引用元:Bedrock Robotics公式ホームページ

いかがでしたか。Bedrock Operatorは、既存の建設重機に後付けで自動運転機能を与えるという独自のアプローチによって、建設現場の効率化と安全性向上を同時に実現しようとする製品です。Waymo出身のエンジニアたちが培った自動運転技術を基盤とし、センサー群とソフトウェアを組み合わせることでセンチメートル単位の精度を確保しながら、従来の重機を最新の自動型マシンに変えることを可能にしています。すでにSundt ConstructionやZachry Constructionなど米国の建設会社とのフィールドテストが始まっており、実運用に耐える信頼性と価値が検証されています。2026年には完全無人運転の実現を目指しており、労働力不足や安全性への懸念が深刻化する建設業界において大きなインパクトをもたらす可能性があります。