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建設プロジェクトの保険証明書類を一括で管理!リスク マネジメントのBilly

  • 建設プロジェクトのリスクマネジメントにおいて、保険証明書の管理が課題となっている
  • アメリカ発のスタートアップBilly(ビリー)は、保険証明書の管理を一括で行うことのできるリスクマネジメントサービスを開発・運営している
  • Billyは2023年に建設管理SaaSのProcore(プロコア)との連携を発表した

はじめに

画像引用元:Billy公式ホームページ

建設業界におけるコンプライアンス(法令遵守)リスクは無数にあります。大規模な建設プロジェクトでは、数百人から数千人にものぼる作業員が関わることになりますが、管理者は現場の一人ひとりがすべての安全要件を満たしていることを確認しなければなりません。これは通常、訓練を実施したり、現場の作業員に安全管理についての書類に署名を求めたりすることによって行われます。

さらに建設業者は地域の法令だけでなく、現場の場所によって保護・制限されている土地や活動に関する、州(県)レベル、国レベルにおける法令や条例にも注意する必要があるでしょう。そのような複雑な安全管理を簡単かつミスなく行うためには、ITソリューションが有効な解決策となります。

今回ご紹介するBilly(ビリー)は、建設現場における全ての必要な保険証明書の有効性やバージョンを管理するリスクマネジメントサービスを展開しています。一体どのような企業なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

Billyとは?

Billyは2020年にアメリカ合衆国ニューヨーク州にて創業された企業です。建設業界に特化して保険管理を支援するリスクマネジメントサービスを展開しています。共同創業者であるNyasha Gutsa(ニャーシャ グッツァ)氏の建設製品管理の経歴と、 Grant Robbins(グラント ロビンズ)氏の10年にわたる建設事業経営の経験を組み合わせ、建設コンプライアンス管理のプロセスをデジタル化・合理化するというミッションを掲げて創業されました。

2023年4月にシードラウンドにて250万ドル(約3億4600万円)の資金調達を実施し、これまでの調達総額を670万ドル(約9億2800万円)としました。本ラウンドは、テクノロジー系スタートアップの後期シードからシリーズAまでに特化した投資を行うEntrada Venturesと、不動産関連のスタートアップアクセラレーターであるMetaPropが主導し、これまでに参画した株主にはCoelius Capital、Global Village、Shadow Ventures、Hustle Fund、Laguna Canyon Groupといった名が並びます。Billyによると今回の調達資金は、販売促進及び顧客の維持に活用される予定です。

複雑な保険証明書を管理するサービス

画像引用元:Billy公式ホームページ

保険証明書(Certificate of Insurance: COI)とは、保険契約者の保険内容を簡潔にまとめたものであり、保険契約の基本情報や保険会社の情報などを含みます。しかし、COIは入力時のミスや、伝達時の書類不足などにより、正確な情報を反映していない場合があります。そのような場合、事故が発生したときに有効に保険を活用できず、リスクが作業員やその請負企業に移転してしまう可能性があります。

そこでBillyでは、請負業者を含む全てのコミュニケーションを管理し、全てのCOIや関連情報を一ヶ所に保存できるサービスを提供しています。チームのメンバーはモバイルデバイスやラップトップからアクセスできます。さらに、手動のデータ入力が不要のため、オフィスにおける事務作業も効率化することができます。

画像引用元:Billy公式ホームページ

Billyは現在、30社以上の保険会社を代理するデジタル・ブローカーのライセンスを持ち、保険会社のワークフロー管理を支援しています。また、建設管理ソフトウェアProcore(プロコア)へのサービス提供を開始する契約を結んでいます。

建設管理SaaSのProcore(プロコア)と連携


Billyは、建設系SaaSとして多彩な拡張機能を持つProcore(プロコア)と、建設コンプライアンスのニーズに対応した総合的なソリューションとして連携しています。Procoreは建設管理サービスでは世界最大級の規模を誇り、全世界で130万ユーザー、9000社が利用しています(注)

Procoreのユーザーは、インテグレーション(機能の統合)を通じてBillyを利用できます。具体的には、Procoreからコンプライアンス関連書類の管理や情報の確認を行うことができ、ログインの必要なくメールのやり取りを行ったり、ダッシュボードから、すべての請負業者は保険の状況を確認することができるのです。

BillyはCOIから重要な情報を抽出し、保険要件を並べて比較します。統合により、ProcoreとBillyのデータが自動的に同期されるため、二重入力がなくなります。またコンプライアンスに関する情報のレポーティングについても自動化することができます。これにより、プロジェクトに従事している請負業者とその保険加入状況を俯瞰することができるのです。

(注)Procore Technologies Statistics and User Count (2023)

まとめ

画像引用元:Billy公式ホームページ

いかがでしたか?今回は、建設プロジェクトの保険証明書類を一括で管理する、リスクマネジメントサービスを展開している、Billyをご紹介しました。建設プロジェクトではリスク管理のために保険の管理が重要ですが、扱う保険証明書は膨大で、情報が煩雑になりがちです。そこでBillyはそれらの保険証明書に関する情報を整理するITソリューションを提供しているのです。

現在Billyは建設関連の保険会社のベンダーとして市場拡大を目指しています。同社の今後の展開が注目されます。