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渋滞知らずの空飛ぶタクシー!医療にも貢献するBLADEとは?

  • 都市部における交通渋滞は、過剰なエネルギー消費などが世界的に問題視されている
  • BLADEはアプリで手配可能なエアタクシーサービスを展開
  • 病院と連携して臓器輸送も行うなど、空から医療現場をサポートしている

はじめに

画像引用元:trafic-jam.html

現在、都市部における交通渋滞は世界共通の問題となっています。例えば日本における交通渋滞によって生じる損失は国民1人あたり年間約30時間、貨幣価値換算すると約12兆円というデータも。また、長時間の交通の滞りはエネルギーの過剰な消費や環境問題の悪化にも繋がるなど、年々事態は深刻さを増してきています。

このような交通渋滞問題を解決するために道路の拡張や新設、地下道を作るなどの工夫がこれまでは施されてきました。しかしそれらの整備や維持には莫大な費用が掛かる上、交通渋滞がなくなる訳ではないので根本的な解決ではありませんでした。このように、現在の社会における平面的な道路インフラは限界を迎えています。

今回は、そうした交通問題をアーバンエアモビリティ(都市航空交通)によって解決を試みるアメリカの企業「Blade Urban Air Mobility, Inc.(ブレードアーバンエアモビリティインク)」についてご紹介します。

 BLADEとは

画像引用元:https://blade.flyblade.com/

Blade Urban Air Mobility, Inc.(ブレードアーバンエアモビリティインク、以下「Blade」)は、2014年にワーナーミュージックとソニーの元幹部であるRob Wiesenthal(ロブ・ヴィーゼンタール)氏と、ミュージッククリエーターの為のデジタルプラットフォームを提供するsplice(スプライス)の共同創立者Steve Martocci(スティーブ・マルトッチ)氏によって設立されました。
BLADEはニューヨーク市に拠点置き、エアタクシーやそれに付随するサービスをアメリカ国内やインドにおいて提供している企業です。

現在同社はアメリカ国内ではニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコ、国外においてはインドのカルナタカ州などで、エアタクシーやジェット機チャーターサービスを展開しています。エアタクシーは車やバスでの移動であれば、時間のかかる道のりを、ヘリコプターや水上飛行機によって半分以下の時間で移動する事を可能とした、費用対効果の非常に高い交通手段です。

BLADEが提供するエアタクシーサービスの注目すべきは、自社ではヘリを所有しておらず、個人事業者が保有するヘリ・タクシー会社と契約をしているという点にあります。このような業務形態から「空のウーバー」とも呼ばれており、同社が提供するのは、豪華なヘリポートラウンジや予約アプリのみとなっています。このような形態をとることで人件費はもちろん、機材の購入やメンテナンスによるコストを抑えることができ、少ない固定費で運用していくことが可能なモデルとなりました。

同社は2018年3月にはシリーズBのラウンドにおいて、Colony NorthastarやLerer Hippeauといった企業から3800万ドル(当時、約40億円)の資金調達に成功し、事業を拡大。2020年12月に同社は、SPAC(特別買取会社)であるExperience Investment Corp.(エクスペリエンス・インベストメント)の子会社と合併しました。それにより、2021年にはNASDAQに上場する見込みです。他にも出資元にはAirbusやGoogle、IACといった錚々たる顔ぶれが並び、同社のサービスの信頼性を物語っています。

それでは、このようにアーバンエアモビリティという新たな分野において、大きな注目を浴びている同社がどのようなサービスを展開しているのかを早速みていきましょう!

 

アプリ一つで完結する高い利便性と充実したサービス

画像引用元:https://blade.flyblade.com/

BLADEの基本的な利用は非常に簡単で、Bladeアプリから既存のフライト又は独自のフライトをアレンジチャーターし、Bladeが提供するラウンジから出発するという流れになります。また、Bladeでは現在地からラウンジ、到着後のラウンジから目的地への車による送迎も手配ができます。ヘリでの移動と聞くと、事前の予約の煩わしさや敷居の高さなどが感じられますが、アプリ一つで予約できる手軽さと送迎などの充実したサービスにより、身近な移動手段としてヘリを利用することができます。

主な料金と所要時間

次に、BLADEの主な利用料金とフライト時間についてご紹介します。

 

例えば短距離の96km~160kmのフライトをすると、料金は1席595〜795ドル(約6万2千円〜8万2千円)。車やバスなどの移動であれば3時間以上はかかる距離を1時間10分程と、半分以下の時間で移動することができます。
他にも、ニューヨーク地域全ての空港から、マンハッタンにある専用のラウンジまでのフライトで1席195ドル(約2万円)などがありますが、どの路線においても車やバスでの移動の半分以下の時間で移動することができます。
同社が販売している通勤パスや年間空港パスを購入すると、さらに安い値段で上記のフライトを利用することもできます。実際、これを活用した通勤サービスも同社は展開しており、移動時間の短縮に加えて遅刻のリスクがなくなるという点がユーザーに支持され、年間37,000人ほどが利用しているのだといいます。

また、他に特筆するべき点としては、希望の時間でのフライトをアレンジしチャーターした際に、余っている座席をBLADE内でクラウドソーシングをして販売できるということが挙げられます。この際に販売した座席の売上はBladeクレジットとして返金され、次回のフライトの際に利用することが可能となっています。

快適なラウンジサービスの提供

画像引用元:https://blade.flyblade.com/p/lounges

BLADEが高い人気を集める理由は利便性に加えて、充実したラウンジの提供にもあります。各地の乗降場所となるBladeラウンジは空港や市内ビルの屋上などに併設されており、洗練されたデザインの空間で、軽食やドリンクを無料で楽しむことができます。また、各地のラウンジはそれぞれが個性的なコンセプトを持って設計されていることからも、BLADEがただの交通の手段ではなく、移動を快適で楽しいものとするサービスであることが伺い知れます。

医療現場を空からサポート

画像引用元:https://blade.flyblade.com/p/medimobility

BLADEは、これまでに紹介してきたスピード感を活かして、ニューヨーク市において地域の病院と提携しBLADE MediMobilityというグループを設立しました。同グループは臓器移植の際の輸送用ヘリの配備を24時間体制、依頼を受けてからヘリの手配までを約20分というスピードで行っています。このような病院とエアモビリティー企業の提携により、従来であれば5時間を要していたところが3時間に短縮され、1分1秒を争う臓器移植においてこのような迅速さが医療現場では高い評価を受けています。また、NYU Langone Transplantlnstitute(ニューヨーク移植研究所)のエグゼクティブディレクターBrigittesullivan(ブリジット・サリバン)氏は商用ヘリコプターの使用がドクターヘリの使用コストの4分の1であり、コスト削減にもなると述べています。

そして現在、コロナ禍において同社は医療機器や医療従事者の運搬、個人からの注文を受けての商品配達、新型コロナウィルスによって帰国が難しくなった人々の為のジェット機チャーターなどのサービスも展開。医療現場だけではなく、市民の生活や社会全体を感染対策を徹底した上で空からサポートしています。

まとめ

画像:https://blade.flyblade.com/UAM-evtol

今回はアメリカのアーバンエアモビリティー企業、BLADEについてご紹介しました。BLADEは新たな交通手段として、費用対効果の高い空の交通を、誰でも気軽に便利に使えるようなサービスを提供しています。同社が提供するサービスは交通渋滞の解消だけではなく、都市部の医療インフラを支援するなど、アーバンエアモビリティの可能性を開拓している点が特徴的です。

また、同社はヘリ主体のこれらのサービスを、環境に優しく低コストなeVTOLs(電動垂直離着陸車両)へ5年以内に移行することを計画しており、今後エアタクシーサービスはより身近な交通手段として社会に定着することが予想されます。
日本国内においても、このようなサービスや付随する事業が活発化していくことで都市デザイン・建物の価値にも大きな影響を与えることが予想されます。今後どのようにアーバンエアモビリティが進化をしていくのか、注目しておきましょう。