Categories: 海外事例

インフラ投資計画をデータ分析するCitylitics

  • 世界的なインフラ投資需要の高まりに伴い、膨大なデータを集約、分析するサービスへの需要が高まっている
  • Citylitics(シティリティクス)は公共交通、道路、高速道路、電力、ガス、ヘルスケア、廃棄物管理など多領域をカバーする、北米で最大規模のインフラ関連データプラットフォーム
  • Cityliticsはアメリカ合衆国とカナダを中心に、31,000以上の都市、16億件以上の文書資料を収集、分析し、顧客の投資計画最適化を支援している

はじめに

画像引用元:Citylitics Inc.公式ホームページ

現在、世界的にインフラ投資への注目度が高まっています。今後15年間にアジア諸国で必要とされるインフラ投資の総額は26兆ドルに上ると予想されており、また、アメリカ合衆国ではバイデン大統領による1兆2000億ドルに上るインフラ投資法案が可決されています。これに伴い、今後官民の両サイドでインフラ投資に参入するプレイヤーが増加し、データ分析への需要が高まることが予測されます。

インフラは流動性の低い長期的な投資となるため、インフラ投資特有のリスクとリターンがあり、またESG (環境・社会・ガバナンス) リスクやサプライチェーン全体の効率化、行政や立法府との調整も必要となります。ところが、これらのデータは議会の議事録、予算書、資本計画書、許可申請書、環境報告書など、それぞれ情報源やフォーマットが異なり、構造化されていません。

今回ご紹介するCitylitics(シティリティクス)は、このようなデータを大規模に収集・分析することで、顧客の投資計画を最適化する支援をしています。一体どのような企業なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

公共インフラ投資計画のデータ分析予測サービス Cityliticsとは?

Cityliticsはカナダのトロント、アメリカ合衆国のウィスコンシン州ミルウォーキー、テキサス州オースティンに拠点を置く企業で、2012年に創業されました。創業時の社名はWatrHub(ウォーターハブ)で、水道設備に特化したデータを扱う企業として事業を拡大させてきましたが、2021年1月にCityliticsとしてブランドを刷新、水道以外のインフラ投資関連情報を扱う企業として事業を展開しています。

Cityliticsは2022年3月にシリーズAで500万ドル(約6億8300万円)の資金調達を実施し、ブランド刷新以降の累計調達額を580万ドル(約7億9500万円)としました。主要な株主として、トロントに拠点を置くKlister Credit、ウィスコンシン州のGCI、アーリーステージに特化した投資を展開するテキサス州のDallas Venture Capital、インフラ関連企業への投資実績のあるCerium Technology Venturesが名を連ねています。

Cityliticsはメーカーからエンジニアリング、建設、コンサルティング会社等を顧客としており、現在、パイプライン関連企業のAegion、パイプライン検査に特化した事業を展開するEchologics、インフラ関連で多角的な事業展開をしているEXPなどを含む80社以上と取引をしています。

2021年度の経常収益は前年度比2倍で成長しており、今回のシリーズAの資金調達を受けてインフラプロジェクトの迅速な完成と透明性の向上を支援するというビジョンに向け、データパイプラインとプラットフォーム機能の拡張を続けていくとしています。

公共投資におけるサプライチェーンの課題

画像引用元:Citylitics Inc.公式ホームページ

インフラ業界が直面する課題の一つに、サプライチェーンの制約があります。資材や部品の供給不足や、輸送手段の不足が公共事業の工期遅延や予算超過をもたらしているのです。Cityliticsの調査によると、サプライチェーンの制約の影響を受けている公共事業の33%を上下水道プロジェクトが占めており、公共交通機関が25%と2位につけています。また、公園(17%)、橋梁(14%)でも、必要な資材調達に影響を受けています。

以上の状況は、Covid-19の感染拡大によってさらに深刻さを増しています。米国水道協会(American Water Works Association、AWWA)の調査によると、水道事業者の72%がパイプ等のインフラ部品に問題があるとしており、さらに40%の水道事業者が、オペレーターやサービス技術者等の人材の獲得に問題を抱えているとしています(注)。

サプライチェーンの制約によって引き起こされる工期遅延や予算超過から投資リスクをカバーするためには、これまで以上に高度なプロジェクト予測と自治体や公共事業の予算の明確な把握が必要とされているのです。

注)AWWA, 2021, “COVID WATER SECTOR IMPACT SURVEY 5

Cityliticsのソリューション

画像引用元:Dallas Venture Capital公式ホームページ

Cityliticsは、都市、電力会社、公共機関によって生成された膨大な量の公共データを集約・分析し、投資判断に寄与するマーケット情報を生成します。Cityliticsがカバーしているのは、公共交通、道路、高速道路、電力、ガス、ヘルスケア、廃棄物管理など多領域のインフラ関連情報で、31,000以上の都市、16億件以上の文書資料を扱っています。

Cityliticsでは、これらの膨大な情報をAIにより収集・分析し、顧客の需要に合わせてデータを戦略的に活用するための支援ツールを提供しています。

インフラ投資事業のマーケティング支援

画像引用元:Citylitics Inc.公式ホームページ

Cityliticsのソフトウェアでは、インフラ投資計画を策定するためのマーケティング支援を提供しています。ここでは業界、地域、コンプライアンスデータ、法的措置、環境排出データに基づいて、戦略的な販売キャンペーンを行う潜在力の高い顧客を絞り込むことができます。ソフトウェア上ではマップビューとフィルタを使用して、リソースを割り当てる必要があるビジネス上のホットスポットを見つけることができます。

営業支援ツール

また、Cityliticsのソフトウェアでは、営業支援の機能も実装されています。ここでは、顧客が早い段階でビジネスチャンスを発見できるよう、顧客のインフラニーズや予算、計画を管理することができます。また、顧客のニーズ、課題、将来の計画に関する最近のイベントや活動に基づいて、販売戦略を立てることで、商談獲得の可能性を高めることができるのです。

まとめ

画像引用元:Citylitics Inc.公式ホームページ

いかがでしたか?今回ご紹介したCityliticsは、31,000以上の都市、16億件以上のインフラ関連資料を収集、分析する北米最大級のデータプラットフォームとして、インフラ投資に関する情報支援をしています。同社は今後どのように事業を展開していくのでしょうか。今後の動向が注目されます。