画像引用元:ConCntric公式ホームページ
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建設プロジェクトの成功を左右する重要な工程として、プレコン(Preconstruction=施工前計画)業務のデジタル化が急速に進んでいます。プレコン領域とは、入札管理、見積り、設計検討、工程計画、リスク評価、ライフサイクルコスト分析など、プロジェクトの方向性と成功確度を決定づける一連のプロセスを指します。これらは従来、Excelやメール、PDFなど分断されたツールで運用されてきましたが、近年はデータ統合、AI、シミュレーション、コラボレーションツールによって大きく進化しています。
市場規模も拡大傾向にあり、プレコンのデジタル化市場は2025年の約22億6,370万ドルから、2035年には45億ドル規模へと成長する見通しで、年平均成長率(CAGR)は7.1%とされています。建設需要の増加、プロジェクトの複雑化、意思決定の高度化、省人化の必要性などがこの成長を後押ししています(Wise Guy Reports 2025)。
こうした背景のもと、プレコンを支える新たなソリューションとして注目されているのがConCntric(コンセントリック)です。プレコンにおける情報の分断や非効率を改善し、データとワークフローを統合することで、より精度の高い判断を支援するプラットフォームとして導入が広がりつつあります。一体どのような企業なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
ConCntricは、建設プロジェクトのプレコン(Preconstruction=施工前計画)業務を体系化し、データとワークフローを一元管理するために設計されたクラウドプラットフォームです。同社は、アメリカで建設大手Clark Constructionにて26年以上プレコンおよび施工管理を担当したスティーブ・デロルト氏によって創業されました。現場経験に基づく、プレコン領域の非効率性や情報分断への問題意識が事業の起点となっています。
2025年にはシリーズAとして1,000万ドルを調達し、リード投資家は53 Stations、ほかArgonautic Venturesなど複数の戦略投資家が参加しました。この調達によりプロダクト開発やカスタマーサクセス、営業・マーケティング体制、エンジニアリング組織の強化が進められています。
ConCntricが対象とするプレコン領域は、プロジェクトのコスト、リスク、スケジュール、設計方針などの重要事項を固めるプロセスでありながら、多くの企業では未だにExcelやPDF、メール、各種ローカルフォルダなど、統合されていないツールの組み合わせに依存しています。その結果、情報更新の遅延、属人的な判断、データの重複管理、プロジェクト関係者間の不整合などが発生し、計画精度や意思決定速度に影響が出るケースも見られます。
ConCntricはこうした課題に対し、プレコン工程を単一のワークスペースに集約するアプローチを採用しています。入札パッケージの構成、レビュー、承認、コストやリスクの可視化、履歴データの整理などを同じ基盤上で扱うことで、情報の更新性と透明性を確保し、関係者が共通のデータに基づいて意思決定できる環境を整備します。また、BuildingConnectedとの連携により、入札情報の自動引き渡しが可能となり、手作業による入力やファイル移動の負担を削減しています。
さらに同社は、「Amplify」と呼ばれるエージェント型AI機能を開発・展開しています。Amplifyは、構造化データ・非構造化データの双方に対するアクセス性を高め、レポート作成、情報抽出、分析補助などを効率化することを目的としたもので、プレコン業務の作業負荷軽減に寄与する仕組みとして位置付けられています。このAI機能を活用することで、ユーザーはデータ参照や資料作成の手間を削減し、より多くの時間を判断・調整・戦略立案といった業務に充てることが可能になります。
ConCntricは現在、Consigli、Big-D Construction、Berglund Construction、Satterfield & Pontikes Constructionなど、北米の複数のゼネコンで導入が進んでおり、関係者間のコラボレーション改善、意思決定の迅速化、入札獲得率の向上、コスト・リスクの可視性向上などの効果が報告されています。
画像引用元:ConCntric公式ホームページ
ConCntricは、プレコンストラクションにおける分断されたデータやワークフロー、関係者をひとつの基盤に統合し、プロジェクトの予測性や生産性を高めることを目的としたSaaSプラットフォームです。従来はExcelやPDF、メールなど複数のツールが混在し、情報更新の遅延や認識のずれが生じやすい状況でしたが、ConCntricはこれらを単一の情報基盤として整理することで、リアルタイムな判断と透明性の高いコラボレーションを可能にします。ゼネコン、オーナー、設計者、専門工事会社など幅広い関係者が同じデータを参照しながら見積り、コスト管理、リスク評価、入札準備といった重要業務を進められる点が特徴で、プロジェクト開始前の不確実性を大きく解消する役割を果たします。さらにConCntricのエージェント型AI、Amplifyは現場のワークフローに合わせて設計されており、プレコンの複雑さを軽減する実務的なAIとして活用が広がっています。
またConCntricは、建設業のデジタル化を支援する業界横断ネットワークBuilt by Buildersにも参画しています。このネットワークは、実務経験を持つ建設プロフェッショナルとテクノロジー企業が協力し、現場の課題に即したソリューションを普及させることを目的としており、教育コンテンツやウェビナーを通じて企業のデジタル導入を支援します。ConCntricは、プラットフォーム、AI、業界ネットワークという三つの軸を通じて、プレコン領域の標準化と業務最適化を推進し、建設プロジェクトの計画段階の高度化を後押ししています。
画像引用元:ConCntric公式ホームページ
米国西海岸を拠点に42年以上の歴史をもつゼネコンのAbbott Constructionは以前からプレコンを重視していましたが、多くの企業と同様に、長らくExcelベースでの予算管理やスコープ・設計変更の追跡を行っていました。この方法では、オーナーとのリアルタイムな情報共有が難しく、設計が進む中での意思決定を円滑に進められないという課題がありました。特に見積りの節目以外での判断材料が限られる点や、設計変更の影響が把握しにくい点が問題となっていました。
こうした課題を解決するため、AbbottはConCntricをプレコン管理プラットフォームとして採用しました。導入後、Abbottではプレコンプロセス全体の透明性が向上しました。オーナーはダッシュボードや視覚化されたデータを通じ、設計・スコープ変更の履歴とその影響を一目で確認できるようになり、見積りレビューや合意形成がスムーズになりました。また過去プロジェクトの比較分析により、初期段階でのオーナー期待値の調整が容易になり、信頼関係の構築にも寄与しています。
シャリー氏は、ConCntricを単なるコスト管理ツールではなく、オーナーとの関係構築や合意形成を支える基盤であると強調しています。必要な情報を正確に伝え、データに基づいて判断を導くことで、プロジェクト全体の成果を高める役割を担っていると評価しています。ConCntricの導入により、Abbottはより明確で効率的なプレコンプロセスを実現し、オーナーとの信頼を深めながら確度の高いプロジェクト遂行を支えています。
画像引用元:ConCntric公式ホームページ
いかがでしたか?今回は、プレコンストラクション領域の効率化と高度化を支援するConCntricについてご紹介しました。従来、Excelやメールなど分断されたツールに依存していたプレコン業務は、情報の非連続性や判断の遅れなど、多くの課題を抱えていました。ConCntricは、これらのプロセスを一つの基盤に統合し、データに基づく透明性の高い意思決定を可能にすることで、プロジェクト初期段階の精度向上と関係者間の連携強化を実現しています。
さらに、AIを活用したAmplifyや、業界横断の取り組みであるBuilt by Buildersへの参画により、現場で求められる実践的なテクノロジーの普及にも貢献しています。Abbott Constructionの事例にも見られるように、ConCntricは単なる管理ツールにとどまらず、オーナーとの信頼構築やプロジェクト成功確度の向上を支える基盤として評価されています。同社の今後の動向が注目されます。