今や建物の建設には欠かせない素材となったコンクリート。このコンクリートは、型に注がれてから約1ヶ月の期間をかけて硬化・乾燥します。しかし、これらのプロセスは刻一刻と変化する周辺の気温や湿度に左右され、当初想定していたものとは異なる挙動を示すことが多々あります。
そのため、現場ではコンクリートに穴をあけたりしてコンクリートの状態を測定したりして調整しますが、その分多くの時間と、測定のためのコストをかけることになってしまいます。さらに、コンクリートの状態は毎時変化するのでその状態を常に追うことが重要になります。その点に注目し、事業を展開したConcrete sensors(コンクリートセンサーズ)について見ていきましょう。
Concrete sensorsは2013年にマサチューセッツ州のボストンに設立され、コンクリートの状態を、ワイヤレスセンサーを内部に埋め込んで常時把握することを可能にした会社です。
従来コンクリートの内部を調査するには、コンクリートを取り出してたり、有線を埋め込んだりする必要がありましたが、Concrete sensorsはコンクリートを流し込む前の鉄筋にセンサーをくくりつけ、コンクリートを流し込んで、あとはスマートフォン上でBuletoothを活用してコンクリートの状態を把握できるという画期的なものです。
Concrete sensorsの詳細な仕組みは次章で解説いたします。
先ほど、Concrete sensorsではコンクリート強度測定のセンサーを開発したと紹介しましたが、では具体的にどんなふうにそのセンサーが活用され、どのような利益を生み出しているのでしょうか?ここではその仕組みについて説明します。
NovoConcreteはコンクリートの中に埋め込んで、リアルタイムでコンクリートの温度・強度・水分量を計測し、そのデータをワイヤレスで送信するセンサーです。このセンサーの良さは主に4つ。以下で順に説明します。
・業界唯一のオールインワン
・設置が容易
・信号強度が高い
・耐久性が高い
まずは、業界で唯一となる温度、強度、水分量を全て一つの機器で測定できることで複数の機器を設置するコストを省くことができます。そしてなにより設置が簡単で、パッケージから取り出して鉄筋に結びつけるだけで作業が完了するのも魅力です。そしてBluetoothによる高い信号強度でコンクリート表面から6インチ(15.24cm)の深さまで到達することができ、耐久性も高いため現場で使用しても壊れることはなくバッテリーも2年以上持たせることができます。
また、センサーには自動データ収集用とオンサイト収集用とあり、用途が異なります。自動のほうではNovoHubにワイヤレスでデータが送信されるため、利用者が近くにいる必要はありません。それに対してオンサイトはNovo Syteにつながっており、アプリと連携するため、100フィート以内の距離にいなければなりません。このように用途に応じてセンサーを使い分けることができるのも高い対応力を示していると言えます。
NovoSyteはセンサーからのデータを分析し、タブレットなどのデバイスに表示するソフトウェアです。これにも複数の長所があります。
・簡単なセットアップ
・高品質の問題解決とレポーティング
・制限なくかつ容易なデータの共有
まず、さきほどのセンサーの時にも述べたように、スキャン一つでセットアップが完了し、コンクリートの挙動の監視をすぐに始めることができます。
また、リアルタイムでデータを表示したり、同時に深さの異なる点でのデータを簡単に比較できたり、それらの結果を完全にまとまったレポートの形でビジュアル化して表示してくれます。さらに、詳細な図面と問題の生じている箇所を詳細に特定し、未然に問題への対策を講じるため、コンクリートの硬化過程で障害になりそうな部分を解決することができます。そして、それらのデータはブラウザやアプリを通して関係者に共有されます。
NovoHubはワイヤレスゲートウェイハブとも呼ばれ、センサーからのリアルタイムデータを自動的に収集する機器です。この機器の良さは主に以下の3つ。
・現場で簡単にセットアップ、データは自動で同期
・途切れることのないデータ収集
・非常に頑丈な構造
まずはセンサーと同様、セットアップが簡単で、サイトから設定し接続するだけでセンサーと自動的に同期します。また、24時間365日常時データを収集し続け、それをクラウドに同期します。これによってデータはいつでも最新の状態でクラウドソフトウェアを通して見ることができます。そして最後に、高い防風性と防水性により、ツンドラ気候から砂漠まであらゆる過酷な環境でも稼働することができるのもこの装置の利点です。
NovoDBはは収集したデータを蓄積し、配合設計されたコンクリートが時間の経過とともにどのような変化をするのかを計算し、グラフ化すシステムです。このシステムの特徴は主に3つあります。
・即自的な計算によるコンクリートの硬化の曲線の導出
・膨大なデータの活用による最適な配合の選択
・正確な予測による、プロジェクトのスケジューリング
まず、リアルタイムで収集されるデータに対して、ASTMと呼ばれるコンクリートの成熟に関する基準によって承認された方法を使うことで正確かつ素早く成熟曲線を導き出すことができます。
そして、膨大なデータベースを参照することで強度目標と時間経過に応じた最適な配合を選択することができるというわけです。さらに、これらのコンクリートの挙動の予測ができることにより、いつフローリングを敷くことができるかなど、コンクリートの硬化に関わって生じる複数の作業のスケジューリングを可能にし、作業の無駄を省くことができます。この点はConcrete sensorのシステムがもたらした非常に大きな利点であると言えます。
NovoLabは実際に配合されたコンクリートの強度をテストする試験室です。このテストには、成熟度法という方法が用いられているが、これはコンクリート強度がセメントの水和温度に直接関係するという原則に基づき、コンクリートの初期強度の増加を予測するものです。これによってコンクリートの配合と養生条件の最適化なども行うことができます。novoDBでのコンクリートの挙動の予測精度を高めるために使用されます。
それぞれの仕組みついては以上になります。簡単に5つの仕組みがどのように連動しているのかが気になりますよね? 続いてはそのシステムについてご説明します。
上の図にあるように、センサーで測定したデータをNovoHubで自動的に収集したり、NovoSyteといったアプリケーションを通してデータベースに集積され、その分析結果を計算してデバイスを通して見ることができるという仕組みになっています。システムとして明快でシンプルなのが長所ではないかと思います。
日本におけるコンクリートの状況測定はどうなのでしょうか?実は、すでにConcrete sensorsのようなワイヤレスセンサーは取り入れられています。Keytecという企業ではカナダGiatec社のワイヤレスコンクリート温度センサー SmartRock2の導入を支援しております。
Concrete sensorsと同様にワイヤレスセンサーを埋め込み、アプリでそのデータを見ることができ、センサーはオンラインで販売されています。SmartRock2は温度強度湿度が同時に計測スルのではなく端末が分かれるため、Concrete sensorsの方が一元管理できる点がメリットになりそうです。
このように類似の製品も上陸していることもあり、日本においてもコンクリート測定の効率化は注目されており徐々に浸透しつつあるようです。
いかがだったでしょうか?コンクリートは建設現場において欠かせないものであり、硬化する際にその材質を保つため、温度や湿度の調整など様々な対策がなされてきました。
しかし、その時々のコンクリートの状態を適切に見定められず、無駄なコストを掛けてしまっていることもあります。その中で、変化するコンクリートの状態を内側からデータとしてとらえ、リアルタイムで扱えるようにしようと考え、そのシステムを実装したところにConcrete sensorsの新規性があったと言えるでしょう。
その技術は、スマホで利用できるなどの容易さから日本など他国への広がりも見せています。今後のさらなる飛躍にも期待しましょう。