Categories: 海外事例

建設業界の人材不足をITで解決!求人アプリ運営のCOREとは?

  • 世界GDPの13%の市場規模、労働人口の7%を抱える建設業界だが、近年人材不足が深刻に
  • 人材獲得競争が激化する中、求職者とのマッチングは仲間内の紹介が主要手段であり続けている
  • アメリカ創業のCOREが運営するアプリ「CREWS」は、ITを活用して雇用者と求職者を高精度でマッチングすることで、人材不足の解決を目指している

はじめに

画像引用元:CORE公式ホームページ

建設業界は、世界GDPの13%を占める巨大産業です。先進国のうち北米や欧州は今後15年間安定的な成長が見込まれる一方で*、少子高齢化による労働人口減少や建設業界の忌避により、人材不足がすでに深刻になっています。

この課題に対応するにあたって、失業者や求職者がより良い職場を早期に見つけ、失職期間を短縮することが一つの解決策です。そこで、労働市場の流動化を促進するためのオンライン人材市場が勃興しつつあります。

今回ご紹介するCORE(コア)は、こうした市場動向を受けて、建設業界の人材不足を解決するために雇用者と求職者をマッチングするサービスを運営しています。一体どのようなサービスなのでしょうか?詳しく見ていきましょう。

*Deloitte (2018)

CORE運営の「CREWS」とは?

2020年9月、建設業界に従事する建設作業者とゼネコン等の建設事業者をマッチングする人材プラットフォームアプリ「CREWS(クルーズ)」がアメリカで公開されました。運営元は、Google(グーグル)出身の起業家であるDi-Ann Eisnor(ディアン エイソナー)氏らを中心に創業されたCORE(コア)という会社です。

COREはGoogleの親会社Alphabet(アルファベット)傘下のファンド会社Google Ventures(グーグルベンチャーズ)を筆頭株主として、2020年9月にシードラウンドで400万ドル(約4億2000万円)を調達しています。

COREの強みは、高い情報活用技術を駆使して、建設作業者側のスキルや経験と企業側の求人要件の高精度のマッチングを実現する点にあります。

求人サイトなどオンラインの人材プラットフォームはすでに建設産業に数多く存在しています。しかし、建設業従業者が新しい仕事を探す時、自らの経験やスキルと一致する求人情報にたどり着くためには、数多くの求人情報を比較しなければなりませんでした。そこで就職活動に伴うこれらのストレスを軽減するツールとして、CREWSが開発されたのです。

建設人材事業の課題は「求職者のスキル評価」

画像引用元:CORE公式ホームページ

これまで建設産業における主要な人材獲得手段が「紹介」であり続け、雇用の流動性が低かった背景には、求職者の実践的なスキルを評価するための方法が整備されていないことにありました。COREはこのプロセスを、人の手による人材評価とIT活用のブレンドによって改善することを目指しています。

CREWSでは、求職者がアプリに自身でスキルや経験を入力し、COREスタッフが実際に求職者の就労資格やスキルの認定を行います。将来的には新型コロナウイルスのPCR検査結果など、広範な情報にアクセスしつつ求職者のプロフィールを充実させていく予定だといいます。

こうした情報を収集しつつ、強力なアルゴリズムを用いて求職者のスキルや経験が会社側のニーズと適合する求人情報とマッチングします。求職者は適合度の高い情報にのみ接することができるため、求職者の実践的スキルと企業側の求人要件のミスマッチを抑えることができるのです。

アプリで求職者と雇用者をマッチング

CREWSはiOS、Androidのスマートフォン向けアプリとして提供されています。

雇用者である建設事業者がアプリ上で求人広告を配信し、求職者は自らアプリに入力したスキルや経験に適合する求人情報を選べるという仕組み。求人広告の配信は無料で、雇用者と求職者のチャットや電話面談、タスクマネジメントなどの機能が搭載されています。

マッチングが完了すると、双方に対してレーティング(評価)が可能で、評価の高い雇用者や求職者が選ばれやすくなるように工夫がなされています。

今後は人材開発事業にも進出

画像引用元:CORE公式インスタグラム

COREは人材プラットフォームのCREWSだけでなく、建設作業者向けの人材開発事業を通じて建設業界への貢献を目指しています。

人材開発事業の全体像はまだ明らかになっていませんが、CEOのエイソナー氏は、社内に「グローバルピープルチーム」という組織を立ち上げたことを述べています。この組織は、建設作業者への技能資格取得支援を通じて、より高待遇の職場への就労につなげることを目的としており、建設作業者とゼネコン、サブコン、労働組合などと協力して建設作業者のスキル向上のためのプログラムを実施する予定だといいます。

COREは人材紹介事業と人材開発事業の両面から、建設業従業者の就労とスキル開発を支援し、労働市場の流動性の改善を目指しているのです。

日本の建設人材動向

建設業の有効求人数、求職数、有効求人倍率の推移
画像引用元:国土交通省(2018)「建設業を取り巻く現状について」

日本における建設人材紹介市場の動向について確認しておきましょう。日本の直近10年の建設産業従事者は約500万人*で推移していますが、建設業における求職者数は2009年度の約80万人から2017年度の約30万人と大幅な減少傾向にあることが分かります。一方、建設業界全体の求人数は2009年度の約60万人から2017年度の120万人と大幅な増加傾向にあり、建設業界の人材不足がここ10年間で急速に進んでいることが分かります。

*総務省「労働力調査」

建設技術者の新規求職申込件数の比較
画像引用元:ヒューマンタッチ総研『ヒューマンタッチ総研~Monthly Report 2020年5月』

ここで、建設従業者のうち建設現場の技術管理の役割を担う「建設技術者」の新規求職件数を見てみましょう。公的機関のハローワークを通じた新規求職申込件数は2014年度の約4万1千件から2018年度の約3万1千件と、約25%の減少が見られたのに対し、民間事業者による有料職業紹介件数は2014年の約6万4千件から11万5千件とおよそ50%の増加が見られます。

つまり、直近5年間での国内建設労働市場では人材不足が深刻化しており、民間事業者による人材紹介事業が存在感を増しているのです。

職人と建設現場をつなぐアプリ「助太刀」

画像引用元:株式会社助太刀 公式ホームページ

日本でも、建設人材のマッチングサービスは競争が加速しています。2017年にサービスがリリースされた「助太刀」は、76の職種ごとに職人が現場を、建設事業者は職人を双方向に見つけることができるサービスを提供しており、現在アプリユーザー数は13万人を突破。

助太刀は、建設工具の修理や労災保険、作業代金支払いなどの周辺サービスにも事業を展開しており、将来的には、建設業界で働く人のあらゆる課題をワンストップで解決するプラットフォームを構築していくとしています。

まとめ

今回は2020年9月に建設人材サービスを公開したCOREをご紹介しました。COREの運営するCREWSは求職者の情報を基に適合度の高い求人情報を探しだしてマッチングさせることで、建設業界における雇用の流動性を促進しています。また同社は今後、人材開発事業のリリースを計画しており、複数の人材関連事業によって建設業界の人材不足解消を目指しています。

日本国内においても、建設業界の人材不足から民間事業者による人材紹介事業が急速に存在感を増していることをご紹介しました。今後どのようなサービスが現れるのでしょうか。建設人材市場の動向が注目されます。