現在世界各国でシェアリングエコノミーと呼ばれる市場が拡大しています。シェアリングエコノミーとは空いている労働力や資源を活用し、これまで以上にコストを抑えてサービスを提供する市場のことで、タクシー業界からクラウドソーシング、宅配にまでその領域は広がりつつあります。
今回ご紹介するCurriは、建材輸送を個人の輸送業者が請け負うことで、従来より柔軟で安く便利な輸送サービスを提供しています。どのようなサービスなのか、早速見ていきましょう。
Curriは2018年アメリカ合衆国カリフォルニア州で創業したスタートアップです。建材の輸送事業を展開しており、空いている輸送車両と輸送を依頼したい個人や法人を、モバイルアプリやWeb上でマッチングさせるサービスを提供しています。
依頼できる建材は建設に関連するもの全てで、パイプやボルト・電設資材・木材等の建設部品・工具・業務用什器なども含まれています。Curriに登録するドライバーが輸送依頼に基づいて資材を倉庫や販売店から依頼者の元へと輸送する仕組みで、輸送料金は平均で約77ドル(約8000円)となっています。
Curriは2019年8月にY Combinator(ワイ コンビネーター)からシードで15万ドル(約1560万円)の資金調達を得て、これまでに(2020年3月時点まで)毎月平均112%の成長をしています。また、現在のサービス提供地域は東海岸から西海岸まで、アメリカ合衆国の50%以上の地域をカバーしています。
建材輸送には独特の構造的課題が存在します。まず、建物の立地や設計は現場によって大きく異なるため、必要な建材の種類や量をオーダーメイドする必要があります。また、工事終了とともに建材の納品先も変化するため、配送方法を定型化することが困難です。加えて人口の減少や、危険な労働としてのマイナスイメージによる人手不足、そして大型の輸送車両の保有者減少。これらの理由により輸送手段をオンデマンドで手配することが難しく、建材輸送は効率化は困難を極めています。
こういった問題の打開策として、今注目されているのがシェアリングエコノミーです。
Curriが輸送業者と輸送依頼者(以下顧客)をマッチングさせる仕組みは次の通りです。
CurriのモバイルアプリやWeb上で顧客が輸送依頼を行うと、資材の形状などの特徴に適した輸送設備を持つ輸送業者が自動でマッチングされます。続いて輸送業者が依頼を承認すると、自動で資材購入の決済が完了し、輸送業者は倉庫や販売店で資材を受け取れるようになります。最後に輸送業者が資材を依頼者の元へと配送すると、輸送業者には輸送料が支払われる仕組みとなっています。
資材購入や輸送の料金はCurriのアルゴリズムに基づいて定められており、輸送業者の需給一致を図るため、特定の地域や天候で輸送料金が変動するようになっています。また、建設資材の価格は実売価格と同じで、顧客の支払いは商品代金の他に輸送料を支払うのみとなっています。
輸送業者は資材運搬に必要な運転免許やトラック、保険に自ら加入することとなっており、これらの準備を証明することで初めてCurriに登録することができます。Curriは自ら輸送設備への投資や輸送業者の雇用をすることなく、多様な輸送設備を整えることができるのです。輸送業者は建材の配送によって得た輸送料のうちの一部を手数料としてCurriに支払うこととなっており、これがCurriの売上となります。
建材の輸送依頼から実際に届くまでの様子を確認してみましょう。
① 依頼者がモバイルアプリからCurriのアプリを開き、建材をオンラインで購入します。輸送先の登録、配送時間を確認し、依頼を確定します。
② Curriに登録している輸送業者が建材を輸送します。販売店でのピックアップ時にオーダー通りに建材が揃っているかを輸送業者が確認し、建材の写真を依頼者に共有します。
③ 輸送状況はアプリを通じて確認することができます。
④ 輸送業者が到着すると、依頼者のモバイルアプリが通知します。建材を受け取ることでサービスが終了します。
Curriは法人向けの大型建材の輸送にも対応しています。上記は水道管の輸送時の画像ですが、トレーラーやクレーンなどの輸送設備を持つ輸送業者が登録されている地域では、こうした大型の貨物にも対応して輸送を行うことができるのです。
上記は電設資材をCurriが輸送した時の画像です。約1時間で商品が依頼者の元へ届き、輸送代金は20ドル以下でした。自ら販売店に赴いて購入する場合、作業時間1時間とガソリンに7ドルの費用がかかるところ、これらの費用を節約することができました。
空いている車両を使って移動したい人とドライバーを繋げるUBERなどのライドシェアサービスや、空いている駐車場と駐車場を探しているドライバーを繋げるakippaなどのシェアリングサービスが次々と登場しています。こうした中、日本の物流業界でも空いている輸送車両を活用するサービスが登場しています。オンライン印刷のラクスルは小型物流の部分で輸送社をマッチングする新事業ハコベルを運営しており、同様の領域でもスタートアップのCBcloudがPickGoなどのサービスを運営しており、多くのプレイヤーが出現しております。
また、2017年11月に富士運輸、トラボックス、イーソーコ、NTTドコモの4社が共同開発したサービス docomap Japan (ドコマップ ジャパン)は、貨物を積載していない配送車両の情報を共有して活用することで、空車回送率を抑制しています。シェアリングサービスは物流業界でも存在感を示しつつあるのです。
Curriでは、輸送車を持っていれば誰もがドライバーとして登録でき、またドライバーも特定の雇用契約を持たずに隙間時間を活用して仕事をすることができます。柔軟な輸送方法の確保が求められる建材輸送に対し、Curriのサービスは最適解を提供していると言えるでしょうか。Curriはどこまでサービスを展開できるのか、今後の動向に注目です。