Categories: 海外事例

建設機械もシェアリング時代! 全米に展開するEquipmentShareとは?

  • アメリカに拠点を置く EquipmentShare(エクイプメントシェア)は、個人や企業が所有する建設機械のシェアリング事業を行なっている
  • 建設機械に取り付けるIoT機器を通じて車両の施錠や解錠を行うことで、車両のシェアが可能に
  • 建設機械の位置や機械の異常をリアルタイムで把握する同社のトラッキングシステムTrack(トラック)は、車両の整備や盗難防止に活用されている

はじめに

ライドシェアのUBER(ウーバー)や、不動産シェアのAirBnB(エアビーアンドビー)などの企業に代表されるように、個人の所有物やスキルをレンタル商品化するシェアリングエコノミーと呼ばれる市場が拡大しています。

ARA(全米レンタル協会)は、2020年の建設機械のレンタル市場の規模について、カナダとアメリカを合わせた北アメリカ全体で518億ドル(約5兆5千億円)に上ると試算しており、遊休資産となってしまいがちな建設機械をシェアリングするというビジネスモデルが生まれているのです。

今回ご紹介するEquipmentShare(エクイプメントシェア)は、トラックやクレーンなどの大型建設機械から、脚立やチェーンソーなどの小型工具まで、幅広い種類の建設機械のシェアリング事業を行なっている会社です。2020年8月に発生したハリケーンローラの被災地であるルイジアナ州では、復興作業のために同社を通じてレンタルされた建設機械が多く活用されたと言います。一体どのような企業なのでしょうか?早速見ていきましょう。

EquipmentShareとは?

EquipmentShareは2014年にアメリカ合衆国ミズーリ州コロンビアに創業された企業で、建設機械のシェアリング事業を行なっています。2017年1月にシリーズBラウンドで2600万ドル(約27億6千万円)を調達するなど、これまで総計5870万ドル(約62億円)を調達しており、拠点のミズーリ州を中心に全米35都市で事業を展開しています。

EquipmentShareが運営するオンラインマッチングプラットフォームは、遊休建設機械を持つオーナーと建設機械を使用したい人をマッチングすることで、遊休資産となりがちな建設機械を活用する仕組みです。空中リフトや掘削機、ブルドーザーなどの大型機械から、電動工具や標識などの小型の機械や用具までの幅広い製品のレンタルに対応しており、さらに機械の動作状況を追跡するソフトウェアを活用することで、盗難を防止したり、燃料不足や異常等をリアルタイムで検知し、整備に役立てることが可能となります。

建設機械のオーナーはレンタル料を得られ、使用者は建設機械の購入や整備にかかるコストを削減できるというメリットがあります。

2024年にベンチャーキャピタルのYcombinatorが2024年に発表した投資先の中でTOP50の売上をあげているスタートアップとして、EquipmentShareはランクインしております。Ycombinatorは5000以上のスタートアップに投資しているベンチャーキャピタル。

建設機械のトラッキング

画像引用元;EquipmentShare 公式ホームページ

EquipmentShareのシェアリング事業を支えているのは、Track(トラック)と呼ばれる建設機械トラッキングシステムです。Trackは、建設機械に取り付けるIoT(アイ オー ティー)機器と、IoT機器から得られたデータを活用するためのウェブ上で利用できるソフトウェアからなる製品です。

IoT機器とは、インターネットに接続しデータのやりとりを行うことができる機械のことを指し、同社のIoT機器を建設機械に装備すると、位置情報や機械異常の検知、鍵の施錠解錠やエンジンの始動などを、インターネット通信を通じて遠隔地から行うことができます。

TrackのソフトウェアはPCやスマートフォン、タブレットで利用することができ、建設機械の所有者は所有物の管理を、建設機械の借り手はレンタルの契約や建設機械の位置情報や整備状況などを確認することができます。

画像引用元;EquipmentShare 公式ホームページ

大型建設機械に搭載されたEquipmentShareのIoT機器の操作系統は上の画像のようなシンプルな数字キーとなっています。Trackは建設機械の管理ができるだけではなく、使用者の運転時間を記録するタイムカード機能や、作業の記録などを行うことができます。

画像引用元;EquipmentShare 公式ホームページ

特にセキュリティ面では様々な工夫がなされます。例えばEquipmentShareが開発したGeofencing(ジオフェンシング)は、建設機械の所有者が、建設機械が使用できる範囲をあらかじめ設定することで、その範囲を超えて建設機械が移動した時、所有者がアラートの通知を受け取ることができる仕組みです。これはIoT機器に搭載されたGPSによる建設機械のトラッキング機能が活用されています。

このようにTrackは建設機械のあらゆる情報を管理することにより、シェアリングへの活用のみならず、機械の故障や盗難の予防や早期発見、使用者の作業管理にも役立てることができるのです。

小型機械の管理に活用されるTrack

画像引用元:EquipmentShare 公式ホームページ

Trackは事業者内の機械のシェアリングにも活用されています。例えば大規模な建設事業者では、多くの建設機械を事業所が所有し、作業者は小型機械を1日単位で現場に持ち出すという形が取られています。しかし、誰がいつどの小型機械を利用しているかや、小型機械の整備状況を把握するためには多大なコストがかかります。小型機械にTrackを導入すると、こうした情報は全てIoT機器が自動で取得し、リアルタイムでオンライン上のソフトウェアに共有され管理されるため、機械の維持管理にかかっていたコストを抑制することができるのです。

まとめ

日本において建設機械のシェアリングはまだまだ普及していませんが、建設機械の管理コストを抑制するシステムについては、先進諸国より一足早く開発が進んでいます。例えば建設機械メーカーのコマツは、建設機械に搭載する「KOMTRAX(コムトラックス)」と呼ばれる追跡システムを開発しています。コムトラックスは位置情報を測定するGPSと建設機械の作業状況を測定するトラッキング技術が搭載されており、遠隔地から建設機械の位置や建機の運転状況を把握することができるというものです。2015年時点で30万台以上の建設機械に搭載されています。

EquipmentShareの創業者であるWilliams Schlacks(ウィリアム シャラックス)氏らは、2018年8月の資金調達以降、建設機械の整備状況などを詳細にセンシングする技術の開発や、全米での市場開拓に資金を活用していくと述べています。同社の今後の展開が注目されます。