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バーチャルオフィスを活用して急成長する不動産仲介会社「eXp Reality」のビジネスモデル

  • アメリカの不動産仲介会社「eXp Realty」は現実にはほぼオフィスを持たず、バーチャルオフィスに出社
  • バーチャルオフィスを活用することで、仲介取引手数料を下げ急成長を支える

はじめに

不動産仲介の「eXp Reality」はバーチャルな世界でビジネスを行うことで、設立から10年で著しい成長を遂げました。この記事では、現実のオフィスを持たない不動産仲介「eXp Reality」のビジネスの仕組みに迫っていきます。

バーチャルオフィスに出社してビジネスを行う「eXp Reality」とは

eXp Realityは、アメリカ合衆国ワシントン州に住所をもちますが、実際に社員が通うオフィスは1つもありません。

「eXp World」という専用のソフトをダウンロードし、バーチャルオフィスにログインすることで出社することになります。約200人の社員がアバターとしてオフィスに出社しています。

eXp Realityは、2017年10月以来、株価は3倍以上に伸び、2018年5月にはナスダックに上場するなど急激な成長を見せています。また、ナスダックで株式公開した際には、取引初日に時価総額10億ドル(約1,100億円)を記録しました。

現在のエージェント数は約13,000人で、7か月間で2倍にも伸ばしています。

不動産仲介eXp Realityのビジネスモデル

eXp Realityのビジネスモデルを解説する前に、アメリカの不動産取引の仕組みを解説します。

2重の仲介手数料が発生するアメリカの不動産取引

アメリカの不動産取引には「Agent(エージェント)」と呼ばれる営業と「Brokerage(ブロウカリッジ)」と呼ばれるエージェントを管理する仲介会社が存在します。

個人が不動産の売買をする場合に、必ずエージェントが入ります(親族間取引などは除く)。物件の売り手から仲介手数料5~6%が徴収され、売り手のエージェントと買い手のエージェントがそれぞれ半分ずつを受け取ります

エージェントは自分の稼いだ仲介手数料のうち平均15%を管理者である仲介に支払います。

インターネットの普及前は情報の非対称性もあり、上記の手数料が普及していましたが、情報がノウハウがオープン化していくことで、

・売主からするとエージェントは5-6%の手数料の価値の働きをしているのか?
・エージェント
に対して、仲介会社は15%分の価値を提供できているのか?

という疑問が多く上がってきています。

この2重の仲介構造に対して、現在多くのスタートアップが業務効率化をし価格を安くすることで、挑んでいます。

eXp はエージェントの手数料を下げるビジネスモデルで急成長

eXpはエージェントに対して手数料を下げることで新規のエージェントを大量に獲得することが可能になり、急成長しました。
eXpは20%をAgentから徴収しますが、マージン総額が年間$16,000を超えたらそれ以降の課金は免除するというCapモデルを武器にしています。

アメリカの不動産取引において最終的に顧客との接点を握っているのはエージェントになります。
通常、仲介会社は物件情報や問い合わせの紹介などだけでなく、エージェント用に全国に豪華なオフィスを建設したりすることでサポートしてきましたが、インターネットが普及した現在、eXpはスマホとカフェさえあればオフィスは不要というスタイルでコストを削減し、彼らの低価格のモデルを実現しました。

バーチャルオフィスという切り口は業務効率化により手数料削減し競争優位性を生むための施策なのです。

バーチャルなオフィスを持つ利点とは

画像引用元:eXp Realty公式HP

バーチャルオフィスの利点として、実際にオフィスを持たないため、社員数の制限を受けず、建物のメンテナンスなどにも費用がかかりません。

またネット環境さえあれば、住んでいるところに関係なく、世界中の優秀な人材を採用することができます。

現在の会社のCEOはワシントン州、COOはアリゾナ州、CFOはネバダ州、CTOはニューヨーク州と各地に点在しています。現実のオフィスであれば集まることが難しかったかもしれません。しかし、バーチャルオフィスでは、どこに住んでいてもアバター同士で会議をすることができます。

社員同士のコミュニケーション手段は?

近年、ビデオチャットなどを使って、実際に集まらずに会議などを行っている会社は珍しくありません。

しかし、オンライン上で会議するだけでは、やはり社員間でのコミュニケーションは不足してしまいます。そこで、eXp Realtyでは、湖やサッカー場、フリースペースなど休息の場も設けています。

画像引用元:eXp Realty公式HP

そこで他の社員と交流を深めたり、会に向かう道中で同僚と雑談をしたりすることができます。しかし、コミュニケーション不足は生じてしまいがちであるため、新たにバーを作るなどコミュニケーションの場を増やすなど改善していきたいとのことです。

コロナ渦で、仮想オフィス空間技術を外部販売し売上7倍を達成

eXp Realityで使用される仮想空間オフィス技術を開発するグループ会社 VirBELA(ヴァーベラ 親会社: eXp World Holdings)は、コロナ渦でリモート需要の高まりに答える形で、仮想空間オフィスの技術を月額100ドル(10人)、月額500ドル(150人)といったプランで、外部提供を強化。昨年対比で7倍の売上に成長している。

顧客は日本を含むアジアや南米、欧州など世界約100カ国の企業で、業種もテクノロジー会社から会計事務所、大学(スタンフォード大学など)、宗教団体によるバーチャル教会まで幅広い。

また、eXp Realityの株主総会についてもフロリダディズニーワールドでの開催が予定されていたが、新型コロナウィルスの影響で仮想空間に変更。結果、参加者1万人と今までの総会を上回った。

まとめ

アメリカの不動産取引における手数料に対して、バーチャルオフィスという形で業務を効率化して急成長していく動きはとても注目されています。

今後も様々な業態でバーチャルオフィス化していく企業が増えてていくかもしれませんね。