インテリアデザインの分野において、ジェネレーティブAI(生成AI)がますます重要な役割を果たしつつあります。ジェネレーティブAIとは、文章、画像、動画、音楽など、新しいコンテンツやアイデアを生成することのできるAI技術の一種で、最近ではChatGPT(チャットジーピーティー)が注目を集めています。
本記事では、インテリアデザイン分野においてジェネレーティブAIを活用しているサービスを10本ご紹介します。これらのサービスは、ジェネレーティブAIを用いて魅力的で機能的なインテリアデザインの提案を行っています。一体どのようなサービスがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
OCCO(オッコ)は、エストニア発のインテリアデザインテックスタートアップです。2021年11月にシードラウンドで、個人投資家のオリバー・アールベリ氏から75万ユーロ(約1億1200万円)を調達しました。
OCCOが対象とするのは法人顧客のオフィスです。AIがオフィスインテリアや家具を提案し、OCCOのマーケットプレイスを通じてインテリア製品や家具を販売するのです。OCCO既にエストニアとオランダで利用可能で、これらの地域で250人のユーザーを獲得しています。今後2年間でオランダを含む新たなヨーロッパ市場10か国に進出する予定です。
Planner 5(プランナ- 5D)は、2011年にリトアニアで創業されたスタートアップです。2015年を最後にシードラウンドで2回資金調達を実施しており、これまでの資金調達額を290万ドル(約4億570万円)としています。
Planner 5は900万人のユーザーがこれまでに作成した住宅のリフォーム、インテリアデザインの変更、新しい家具や装飾の選択など、2億通りのデザインに関するデータを保有しています。これに、入力されたテキストから画像を生成するStable Diffusion(ステーブル ディフュージョン)と呼ばれるAIモデルを掛け合わせることで、ユーザーの指示に従って様々なデザインの選択肢を瞬時に提示するサービスを提供しています。
また、Planner 5Dは、VR、およびARといったクロスプラットフォームのデザインツールを提供することで利便性を向上させています。
roomGPT(ルーム ジーピーティー)は、AIを使用して部屋のデザインを再設計することができるOSS(無償のオープンソースツール)です。このOSSの機能は、任意の部屋の画像を送信すると、その部屋の壁紙、家具、照明といったインテリアをAIが生成して提案するというものです。
有償版のSaaS製品であるRoomGPT.ioでは、レンダリングの枚数の制限がなくなるといった付加機能があります。
Reimagine Home(リイマジン ホーム)は、Styldod(スタイルドッド)が開発したAIデザインツールです。Styldodは2015年にアメリカ合衆国で創業されたスタートアップで、2022年1月にシードラウンドで100万ドル(1億4000万円)を調達しています。本ラウンドには、不動産関連スタートアップへの投資実績のあるVenture MLS(ベンチャー エムエルエス)が参画しています。
Reimagine Homeのデザインプラットフォームは、部屋や建物の外観をアップロードすると、異なるインテリアが複数提示されるというシンプルなもの。デザインやソフトウェアに関する知識の必要なしに利用することができるので、インテリアデザインに興味がある人は自分のデザインスタイルや色の好みに基づいてインテリアを考えることができます。
Spacely AI(スペースリー エーアイ)は、タイ発のAIを活用したインテリアデザインツールを展開する企業です。資金調達に関する情報は公開されていませんが、タイの他、日本語、インドネシア語、ベトナム語、中国語が利用可能など、アジア圏での市場拡大に向けて開発が進められています。
Spacely AIは部屋の画像を元にAIがインテリアを提案するサービスですが、特徴は、「個人住宅」、「事業所」、「家具」、「コンドミニアム」と4つの場面に応じて機能が使い分けられる点にあります。ユーザーが内装デザイン画像、家具リスト、カラーパレットから希望を入力することで、AIがユーザーの好みに合わせて個別にインテリアデザインを提案するのです。
Coohom(クーホーム)は中国の企業で、インテリアデザインの3DモデリングSaaSを提供しています。中国国内向けの製品である酷家乐(Kujiale)と、世界市場向けの製品であるCoohomを展開しています。日本ではエスキスがCoohomの代理店として日本市場での展開を進めています。
Coohomは2021年にはアメリカでIPOを申請し、株式公開に向けた準備を進めています。酷家乐は中国のインテリア3D CAD市場で10.3%のシェアを持ち、8000万以上の3Dデザインモデルのライブラリーを提供しています。サービスとしては、インテリアデザインの高速レンダリングと、3Dイメージ上で家具の配置をドラッグ&ドロップによる直感的操作によってモデリングできる点に特徴があり、200以上の国や地域で利用されています。
AiHouse(エーアイハウス)は、2013年に中国の広東にて創業されたGuangdong 3Vjia Information Technology Co., Ltd(以下3Vjia)が開発運営する、インテリアデザインの3Dビジュアライゼーションツールです。3Vjiaは2019年のシリーズCでの資金調達を最後に、合計8億元(約156億円)の資金調達に成功しています。
間取り図、写真のようなリアルなレンダリング、720度パノラマ画像を作成できる他、作成して3Dモデル内部のウォークスルー動画を作成する機能があり、より質の高い顧客の没入体験を提供しています。Webブラウザ版のほか、Windows、Mac、Chrome OS、Android版など、さまざまなプラットフォーム向けに製品を展開しています。
Interior AI(インテリア エーアイ)は、RoomGPT同様、オープンソースで使用可能な無償のインテリアデザインツールです。部屋のテイストや画像生成時のモードなどを複数選択できることが特徴となっています。
Interior AIのホームページからレイアウトを考えたい部屋の画像をアップロードすると、部屋の種類を「寝室」、「リビング」といった選択肢から、「Contemporary(近代的)」、「Art Deco(アールデコ)」といった30以上の選択肢から選ぶことができます。上の画像では、左が「ノーマル」、右が「ハロウィーン」モードにて作成されたベッドルームです。
また、壁、天井、梁などの構造物を自動検出し、それを変更しないようにする一方で、レンダリング速度が遅い「ヴァーチャルステージング」モード、早いレンダリング速度で部屋のインテリア画像を確認できる「インテリアデザイン」モードといったレンダリングの精度に関する4つのモードを選ぶことができます。
事務機器や光学機器を製造する日本企業である株式会社リコーは、空き部屋のパノラマ画像に、AIがコンピューターグラフィックス(CG)家具を自動で配置する「AIステージング β版」を2021年1月より展開しています。
本サービスでは、リコーが開発した360度カメラで撮影したパノラマ画像に対して、AIがCGで家具の画像を重ね合わせることで、複数のバリエーションの部屋のイメージ動画を作成します。最短翌日納品となっており、不動産業者は空き部屋を探している人に物件の魅力を遠隔で伝えることが可能となります。
自動デザイン生成ソフトウェアstadi(ステイディ、旧studiffuse)は、不動産・建設領域で先端技術を用いたサービスを展開する東京発のスタートアップ企業、mign(マイン)が開発・運営しているサービスです。
stadiは、建物の設計段階におけるデザイナーとクライアントのコミュニケーションコストの削減のために活用することができる、インテリアデザインの自動生成ソフトウェアです。デザイナーは入力した画像やキーワードをもとにインテリアの画像を生成することができ、生成した画像に対して類似画像を検索エンジンからキュレーションすることで、クライアントの要望に近いデザインを見つけることを支援します。
最新版では、ChatGPTを用いて画像や議事録等からキーワードを抽出し、よりクライアントのイメージに近い画像を生成する機能が追加で実装されています。また本サービスは、初期カスタマイズ料金($0〜)とメンテナンス料金($800〜)のSaaS形式で提供されます。
いかがでしたか?今回はジェネレーティブAIを用いたインテリアデザインサービスを10本ご紹介しました。本記事でご紹介したように、インテリアデザインの分野では、ジェネレーティブAIの活用が増えています。
ジェネレーティブAIは、新しいコンテンツやアイデアを生成するAI技術であり、インテリアデザインにおいて魅力的で機能的な提案を行うために利用されています。今後この領域で様々なサービスが展開していくことが予想されます。今後の動向が注目されます。