画像引用元:GROPYUS公式ホームページ
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建設業界は、資材不足、サプライチェーンの混乱、労働力の慢性的な不足、そして脱炭素化への対応など、これまでにない複合的な課題に直面しています。こうした環境の中で、垂直統合はサプライチェーンの安定化、品質向上、コスト削減、さらには温室効果ガス排出(特にScope 3)の可視化と管理を可能にする、有効なアプローチとして注目されています。自社で主要部材を製造し、計画から施工までを統合的に管理することで、建設プロセス全体の効率を高め、手戻りや遅延を減らすことができます。また、標準化や工業化を推進することで、熟練労働力の不足にも対応でき、環境負荷の低減にも寄与します。このように、垂直統合は建設のあり方を根本から変える可能性を秘めています。
そこで今回は、この垂直統合モデルを軸に住宅建設を再定義するGROPYUSをご紹介します。いったいどのような企業なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
GROPYUSは2019年に設立されたオーストリア・ウィーン発の建設テック企業です。Delivery Hero(デリバリーヒーロー)の共同創業者Markus Fuhrmann氏や、Zalando(ザランド)の元CIOであるPhilipp Erler氏が経営陣に参画しています。ドイツ、オーストリアに拠点を構え、約400名の体制で持続可能な多層木造住宅の開発・製造に取り組んでいます。同社は、建物をプロダクトと捉え、設計から製造、現場組立、運用までを一貫してデジタル化・自動化する垂直統合モデルを強みにしています。
直近の調達としては、2024年3月19日に欧州投資銀行(EIB)から4,000万ユーロのベンチャーデット融資を獲得しました。また、2024年10月9日にはSemapaおよびPractical Venture Capitalから1億ユーロを調達し、累計調達額は3億ユーロ(約550億円)を超えています。これらの資金は、オーストリアのリチェン工場を高度自動化されたロボティック・スマートファクトリーへ進化させるために投じられ、壁パネル17分、天井パネル16分で製造できる86%自動化ラインの拡張を進めています。
GROPYUSが向き合う課題は、欧州で深刻化する住宅不足、建設費の高騰、そして環境負荷の高い従来の建設方式です。建設業は依然としてアナログで非効率な作業が多く、生産性の低さや計画の不確実性が問題でした。また、コンクリート主体の建設はCO2排出が多く、EUの掲げる脱炭素化住宅の実現にも壁がありました。
これらに対し、GROPYUSは木材を活用したハイブリッド構造、完全デジタル設計、そして高自動化工場を組み合わせることで解決を図っています。この仕組みにより、建設時間は最大50%短縮され、コスト予測の精度も向上。環境負荷の低い住宅を迅速かつ安定的に供給できる体制を構築しました。さらに、サプライチェーン全体のデジタル統合により、品質管理とプロジェクト管理の効率化も実現しています。
GROPYUSは、住宅不足と脱炭素という重要課題を同時に解決する新たな建設モデルとして、今後も大きな注目を集める企業です。
画像引用元:GROPYUS公式ホームページ
GROPYUSのソリューションは、建設産業の非効率と環境負荷という複合課題に対し、スマートファクトリー、スケーラブルな建物設計、そして独自のビルディング・オペレーティングシステムという3つの中核技術を組み合わせ、住宅建設を“産業化”する点に特徴があります。
まず、ドイツ・RichenのGROPYUS Smart Factoryは、ロボット工学の世界的リーダーであるKUKAとの戦略的提携により、工場内には45台以上の産業用ロボットと12台の無人搬送車(AGV)が稼働しています。これにより、天井パネルを80%超のプレハブ率で製造。年間最大3,500戸相当の生産能力を持ち、正確性の高い木造ハイブリッド構造を短期間かつ安定品質で供給します。この工場で製造された部材は、窓や断熱材、配管があらかじめ組み込まれた状態で出荷され、現場では「組み立てるだけ」の状態になります。これにより、従来の工法と比較して建設期間を最大50%短縮することに成功しています。
次に、スケーラビリティを担う建物プロダクトは、モジュール化された多層住宅として設計され、地域やプロジェクトに応じた柔軟な構成が可能です。EH40やEUタクソノミーにも準拠し、助成金活用や仕様拡張も容易で、持続可能性とコスト効率を両立します。
そして、GROPYUS Building Operating Systemが建物のデジタル中枢として機能し、運用管理の自動化、予知保全、エネルギー最適化、住民向けアプリ体験を一体的に提供。オーナーには運営コスト削減と新たな収益モデル、居住者には快適性・安全性・透明性の高い暮らしを実現します。これら3つを統合することで、GROPYUSは建設の生産性向上、環境配慮、居住体験の向上を同時に達成する新しい住宅供給モデルを提供しています。
さらに、GROPYUSはビルのガス・電気・水道を電子制御するBuilding Operating System(ビルディング・オペレーション・システム)を居住者、管理者向けに提供しています。居住者は専用アプリを通じて、照明、暖房、ブラインドの操作、鍵の開閉、エネルギー使用量の確認などが可能です。また、共用スペースの予約や、インターネット・TVサービスへのアクセスも統合されています。また、管理者・オーナー向けとしては、センサーデータを活用した予知保全(Predictive Maintenance)を提供。設備が故障する前に異常を検知し、メンテナンスコストを削減します。また、事務作業の自動化により運営コストを低減し、新たな収益源(サブスクリプションサービス等)の創出も可能にします。このようにGROPYUSの製品は、SaaSとしてのスケーラビリティも有しています。
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GROPYUSの活用事例として象徴的なのが、ベルリン・リヒテンベルクで進む大規模住宅プロジェクトです。本プロジェクトは、ドイツ最大級の住宅企業Vonoviaの子会社BUWOG Bauträger GmbHからの依頼により、GROPYUSが全9棟・総延長170メートル、延床面積約16,000平方メートルの新たな住宅区画を建設するものです。計158戸の住戸が供給され、1〜4ルームまで多様な住戸タイプを備え、都市部で深刻化する住宅不足に対応する取り組みとして注目されています。2025年7月の着工が予定されており、GROPYUSの工業化・デジタル化された建設モデルの本格的な実装例として位置づけられています。
このプロジェクトの特筆すべき点は、GROPYUSが提供する高いプレハブ率のオフサイト生産と、柔軟な設計対応力が組み合わさっている点です。同社のスマートファクトリーで生産される木造ハイブリッド構造のユニットは、品質を均一化しながら施工スピードを大幅に短縮。都市部の限られた敷地でも、周辺環境やデザイン要件に応じて個別最適化できるため、新築区画、狭小地でのインフィル開発、既存街区の再構築など、幅広い用途に活用可能です。
GROPYUS共同創業者でCTOのフィリップ・エアラー氏は「製品とプロセスの磨き込みを経て、最も住宅需要が逼迫するベルリンで初の大型プロジェクトに臨む」と述べ、工業化×デジタル化が、持続可能かつ魅力的な住宅を短期間で供給できる鍵であると強調しています。一方、BUWOGのエヴァ・ヴァイス氏は「高品質な住宅をいかに早く提供できるかが都市にとって重要。GROPYUSの系列的(シリアル)建設はその実現に大きく寄与する」と述べ、パートナーシップへの期待を示しています。
本プロジェクトで建設される建物はKfW55の効率基準に準拠し、QNG認証取得も想定されるなど、環境性能・規制対応の面でも高いレベルを実現。GROPYUSの建設モデルが、持続可能性・コスト効率・施工速度のすべてを兼ね備えた新たな都市住宅供給モデルとして機能し始めていることを示す代表的な事例となっています。
画像引用元:GROPYUS公式ホームページ
いかがでしたか?今回は設計から製造、現場組立、運用までを一貫してデジタル化・自動化するGROPYUSをご紹介しました。同社は、スマートファクトリーによる高精度な工業化生産、モジュール化されたスケーラブルな建物設計、そして建物運用を最適化する独自のオペレーティングシステムを組み合わせ、住宅建設の新たなモデルを確立しています。ベルリン・リヒテンベルクの大規模住宅プロジェクトでは、これらの技術が統合的に活用され、環境性能・施工速度・コスト効率のすべてを満たした158戸の住宅供給を実現。都市部の深刻な住宅不足に対し、持続可能で迅速な解決策を提示しました。GROPYUSは、製造業レベルの精度とデジタル化を建設分野に持ち込み、次世代の住まいづくりをリードする存在として注目されています。