Categories: 海外事例

「見える」ことは守ること。ILLUMAGEARが建設の明日を照らす!

  • アメリカのスタートアップILLUMAGEAR社は、作業現場の安全性を追求したプロダクトを提供している。
  • 注目を集めている背景には、アメリカの作業現場での深刻な事故の件数が挙げられる。
  • 今後より一層安全性を追求した画期的なプロダクトを建設業界に投入していくことが期待されている。

はじめに

毎年、アメリカでは約20万人もの作業員が建設現場で負傷をしています。さらに、2015年には937名もの死者を出してしまいました。このような悲劇的な事故を防ぐためには、作業現場の人間がきちんと周囲を見れるようにすることと、遠方からも作業現場の人間を見えるようにすることが非常に重要です。

今回は、作業現場における痛ましい事故を少しでも減らすために、安全対策に特化した商品を考案しているアメリカのスタートアップ、”ILLUMAGEAR”をご紹介します。

ILLUMAGEARとは?

画像引用元:ILLUMAGEAR 公式Facebookページ

ILLUMAGEARは、2012年にAndrew RoyalとMax Bakerらによりローンチされたスタートアップ。
米国証券取引委員会によると、ILLUMAGEARはすでに創設7年目で累計660万ドル(日本円で約7億1500万円)もの資金調達をし、さらに、2019年2月には250万ドル(日本円でおよそ2億7000万円)を追加で個人投資家から調達。まさに、いま建設業界の誰もが注目する若手企業です。

彼らは、作業員の安全性を改善する革新的な製品の開発を行っています。彼らの代表的なプロダクト、「HALO」は360度光るコードレスタイプのヘッドライトで、シンプルな発想ながら、作業の質を格段にあげた画期的な製品です。

創業者の経験から生まれた「HALO Lights」

HALOは、徹底して作業現場の作業員の安全性を追求した設計となっており、これまでのヘッドライトとは大きく異なります。機能性や堅牢性を兼ね備えており、労働環境を格段にアップさせることを可能にしました。

便利な多機能性

画像引用元:ILLUMAGEAR 公式サイト

これまでのヘッドライトが一部分を照らすものだったのに対し、360度に光る点がHALOの一番の特徴です。また、360度光るモードと、前方のみを照らすモード、点滅するモード、光を弱めるモードの4つのモードを搭載しており、それぞれのシーンに合わせて使い分けることが可能です。

過酷な環境下でも使用できる強靭性

HALOは、過酷な環境下でも作業員を守れるように、非常に頑丈な設計になっています。ILLUMAGEARが行なった実験によると、HALOは25フィート(約7.62m)からの落下やジープによる轢過にもビクともしないほど頑丈な作りになっています。また、水や泥に沈めてもプロダクトの性能には問題がありません。

従来製品との違い

実際に使用している作業員からは「従来の照明より明るく、広範囲が照らされるようになっているので、まるで日中に作業しているかのように感じられるという声が上がっています。なお、その差は遠方から見たときにさらに顕著に現れ、夜間の作業現場では特に目立つと評判です。

また、これほどまでに明るく光るにも関わらず、コードレスな点も特筆すべき点でしょう。本製品は充電可能なバッテリーで最長12時間も灯りがもち、過酷な作業現場でも突然消えてしまうことのないように設計されています。

「見る」と「見られる」。2つのこだわり

HALOは、”SEE(見る)”と”BE SEEN(見られる)”の2つの側面から設計されています。夜間の作業現場では、狭い範囲しか目視できないと作業効率が悪化してしまいますし、接近している乗用車や建設機械を避けられないと非常に危険です。また、乗用車や建設機械などの運転手からも目視されないと、思わぬ事故に繋がってしまう恐れがあります。そのため、HALOは作業員が周囲を認識できるように、なおかつ、作業員自体が外部からも認識されるように設計されています。

HALOの導入で労働環境は変わったのか?

実際に、HALOの導入によって作業現場は変わったのでしょうか?ブラジルに本拠地を構えるOdebrecht(オデブレヒト)という建設会社は、アメリカ・マイアミのダウンタウンに向かうの高速道路で行われたインフラプロジェクトで、HALOを導入しました。

作業現場の状況

この高速道路では、毎日20万もの自動車が平均時速60㎞を上回る速度で行き交います。、時にはトラックも通過する現場で、夜間に作業をする際には主要車線の閉鎖も伴う作業でした。もちろん、作業時には照明を使用しますが、それでも随所には、照らしきれない暗闇が存在しました。

どのように使用されたのか

このような過酷な現場でHALOは使用されました。道路を閉鎖している際には、交通整備の旗振り役が360度光るHALOを使用、視界の悪い暗闇の中でもドライバーに存在を認知させることに成功しました。また、作業現場における建設機械の移動の際には、前方にHALOを装着している作業員を配置ことで、オペレーターに移動の進路を明示し、作業効率を向上させることを可能にしました。

このような導入事例から、HALOの使用は作業員のより安全な労働環境を守るために一役かっていることがわかります。が。今回の事例を踏まえ、Odebrecht社は今後のプロジェクトでもHALOを使用していく方針を定めました。

創業者が見る建設業界の未来とは?

画像引用元:ILLUMAGEAR 公式サイト

ContechMagでは様々な建設テック企業を紹介してきましたが、ILLUMAGEARの創業者、Max Bakerはこの業界の進化にどのような見通しを抱いているのでしょうか。彼はインタビュー記事で、以下の3点が大きく変化していくだろうと語りました。

安全管理の進化

従来であれば、作業員はそれぞれ孤立した状態で作業していますが、今後は現場作業員同士や建設機械、また、本部がインターネットで繋がり、すべてが横軸で安全を管理できるシステムが構築される。

3Dプリンティングによる建設

全ての素材が3Dプリンターを通してプリントされる日がくる。

建設機器の自動作動化

他の業界で例えれば、自動車の自動運転が開発されているように、建設機械の自動作動化も今後どんどん進んでいく。

このインタビュー記事は2017年のものですが、2019年現在、実現しているものが多くあることに気づかされます。安全管理にはSafesiteや、3Dプリンティング建設にはXtreeEなど、ContechMagでもご紹介した企業が挙げられます。

まとめ

建設現場における安全確保に特化したプロダクトを提供するスタートアップ企業、ILLUMAGEARをご紹介しました。同社を筆頭に、重労働で知られる建設業界が、技術の力を借りることで、どんどんいい方向に変化していく兆しが伺えます。創業者であるMax Bakerは自らの経験を生かし、より良い労働環境のために製品を開発しました。彼は、これからも全ての建設従事者が安全に家族の元に帰ることができるよう、環境改善に力を入れていくと述べています。また同社から新しいプロダクトが出た際には、ContechMagでご紹介していきます。