建設産業における人手不足と、効率性向上への圧力の中で、建設管理をデジタル化、省人化していく流れはますます加速しています。そうした中で、全世界における建設管理ソフトウェア市場の規模は2023年に63億ドル(約8880億円)であったところ、2032年までに100億ドル(約1兆4400億円)へと年平均10%で成長していくことが見込まれます(注)。建設現場において問題を発見した際に、現場とオフィスで迅速に情報を共有して問題解決することが求められており、その際に情報管理のためのプラットフォームが力を発揮するのです。
今回ご紹介するのはスウェーデンを中心に事業を展開する建設ソフトウェア企業、Infobric Group(インフォブリックグループ)です。一体どのようなサービスを展開しているのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
Infobric Groupは、2004年創業の建設ソフトウェア企業大手で、主に北欧とイギリスにて事業を展開しています。現在の従業員数は300人超、2022年度の収益は6億3200万スウェーデンクローナ(約89億6000万円)となっています。創業当初の事業は、現場ゲート管理システムSafeTool(セーフツール)です。SafeToolは建設現場における人員の入退場を管理するハードウェアで、2010年頃からSaaSとして建設管理ソフトウェアとしての機能を強化。2016年までに使用実績は15,000件を超え、イギリス、フィンランド、ノルウェー市場に展開しています。
Infobricは2019年に、スウェーデンのベンチャーファンドSumma Equity(スーマ エクイティ)によって、金額非公開にて買収されました。これによって得た資金を元に、同社はサービスの多角化を開始。以下のように次々と関連サービスを買収していきます。
2020年
2021年
2023年
Infobricは2022年4月にブランドの統一と各ソフトウェアの機能統合を図っています。それぞれのソフトウェアは請負業者管理のInfobric Construction、建設機械やアセット管理のInfobric Fleet(フリート)、人材及びプロジェクト管理のInfobric Workorder(ワークオーダー)、発破・掘削管理のInfobric Blast(ブラスト)、労働時間管理のInfobric Timeなどとしてリブランドされて展開されました。Infobricはブランド全体をQHSE(品質、健康、安全、環境)プラットフォームとして位置付け、建設管理ソフトウェアを提供していくとしています。
Infobricが展開する建設ソフトウェアのうちの一つ、Infobric Fieldは、建設現場における作業員の健康や安全を管理するためのソフトウェアです。主に現場の作業員の目線から建設現場の情報共有を簡素化していくことが目指されており、主な機能は次の5点です。
Infobric Fieldを導入した現場では、問題発見率が300%増加、アクションまでの時間が70%削減、インシデントの発生率が50%以上削減といった成果が出ているとしています。
いかがでしたか?今回はスウェーデン、イギリス、ノルウェーを中心に建設ソフトウェア事業を展開するInfobric Groupについて、ご紹介しました。Infobric Groupは2019年のファンド買収を通じて資金力を強化し、現場における作業前後のより多くのプロセスで安全管理を促進していくためのソフトウェアプロバイダ-として成長を遂げています。
建設ソフトウェアは領域ごとに各社がソリューションを展開している状況ですが、Infobric GroupはQHSE(品質、健康、安全、環境)プラットフォームとして各種領域を統合し、各種のソフトウェアを統一ブランドの下で展開しています。同社の今後の展開が注目されます。