人口の増加に伴う食糧不足が世界共通の問題としてよく取り上げられますが、住宅不足も多くの国で深刻な問題となっています。
実際に、頑丈な屋根や柔らかいベッドといった最低限の設備を備えた住宅に住めずにいる人々が世界には約15億人存在するとのこと。加えて、近年では自然災害により住居を失う人々も増えており、一時的な避難所や住居の確保の為に、スピーディーかつ機能的な住居の建設が求められています。
しかし、住宅の建設には多額の費用や時間だけではなく、地理的な制約なども考慮する必要があるなど、十分な数の住宅の確保には様々な課題があります。
今回ご紹介するjupe(ジュープ)は十分な住居性を備えつつも、スピーディーな建設が可能な自立型住居を提供する企業です。
Jupeは2020年にアメリカのサンフランシスコベイエリアにて創業されたスタートアップで、最短一時間で設置が可能な独自の自立型住宅をアメリカ国内で展開中です。同製品は世界中で起きている住宅不足を解決するという目標のもと開発されました。
そして、2020年12月から発売を開始しており、一軒あたりの価格は1万7,500ドル(約216万円)。これまでの予約注文数は300件以上となっており、すでに700万ドル(約8億円)程度の収益を上げています。
CEOであるJeff Wilson(ジェフ・ウィルソン)氏は環境科学者で、極小スペースで快適に暮らす可能性を追求するために、ゴミ容器に1年間住むという奇抜な実験などを行なった経験を持つ人物です。そして、同氏はこのときの経験をもとに、2015年には極小プレハブ住宅を展開するスタートアップKasita(カシータ)を設立しています。
また、同社の開発メンバーには、SpaceX(スペースエックス)の宇宙船の構造設計を行なっていた人物やTesla(テスラ)社でソーラーパネルや電気自動車設計に携わった人物、Airbnbでブランドの舵取りを行なっていた人物など、幅広いジャンルの優れた人材が多数集結しています。
2021年12月に行われたInitializedCapital(イニシャライズド・キャピタル )が主導するシードラウンドの資金調達では、スタートアップアクセラレーターのY Combinator(ワイコンビネーター)などから、950万ドル(約10億8000万円)の資金調達に成功しています。
それでは、こうして注目を集めるJupeが展開する自立型住居とは一体どのようなものなのか、詳しく見ていきましょう。
Jupeが展開する自立型住居サービスの最大の特徴は、山の頂上や海辺などの様々な地形においても、たった1時間で設置を行えるという点にあります。そんな常識外れの建設を可能にしているのが、同社が独自に開発したシャーシ(基礎)とフラットパックです。
同社の住居はテント部分を地面から持ち上げる独自のシャーシ上に設置されます。このシャーシは移動を簡単に行えると共に、あらゆる地形に適応できる柔軟性が備えられており、整備されていない過酷な環境においての住居のスピーディーな設置を可能とし、僻地での住宅不足の解消に貢献することができます。
ちなみに、同住居はアルミニウム製の外骨格を組み上げた頑丈な構造のためであり、強風にも耐えますが、主に5〜27℃の温暖な気候での利用を想定しており、現段階では雪が降る地域への設置は行えないとのこと。
上記画像のフラットパックには、ベッドなどの家具や照明、電源、ソーラーパネルが内蔵されており、シャーシ上に展開することによって住居スペースを構築する事ができます。そして、画像からも分かるように非常にコンパクトな設計をされており、トラック一台で15軒分のフラットパックを運ぶことができます。
同住居には、ソーラーパネルと200Ahのバッテリーが備え付けられているので、どのような環境であっても、電気を使用する事ができます。これらの電気は照明やWi-Fiルーターなどに給電され、近代的な暮らしを実現させてくれます。。そして、4つのACコンセントとUSB充電ポートにも給電されているので、オフグリッドの環境で様々な家電製品を利用する事ができ、さらにオプションでクーラーやアレクサなどをつけることも。
あらゆる環境でのスピーディーな設置が可能な上に、十分な電力の確保も行えるので、イベントの際や災害時などのありとあらゆる場面での活躍が期待できます。
こだわり抜かれたデザインや空間もJupeの住居の魅力の一つです。上記画像の住居のデザインはブティックホテル経営者のLiz Lambert(リズランバート)氏によって手掛けられており、銀河系を意識した、近未来的な仕上がりとなっています。銀河系をモチーフにした理由としては、映画「2001年宇宙の旅」に強いインスピレーションを受けたからなのだとか。
また、高いビジュアル性は勿論の事ながら、内装にも数多くのこだわりが。室内はクイーンサイズのベッドや3mを超える高い天井、LED照明、床下収納など、ただ早く建つだけではない、居住性にも優れた空間になっています。
Jupeが展開している自立型住居サービスは、地球上のあらゆる場所に自立型住居を設置する事を目的としており、同社では住居の開発だけではなく、それらを運用をしていくためのソフトウェアの開発も行なっています。
創業間もない企業という事もあり、詳細な情報などはありませんが、これらの同社のプラットフォームはUniversal Autonomous Housing(UAH)と呼ばれています。
前述した通り、同社の自立型住居は一軒1万7,500ドル(約216万円)で販売されていますが、事業者向けのプランも用意されています。事業者向けのプランでは、利用者が予約プラットフォーム上から申し込みを行うことで、住居の設置及び利用が可能になります。
詳細な価格設定は非公開となっていますが、基本的には初期費用としてライセンス料を支払うのみとなっており、設置費用などは一切発生しません。。そして、同住居を利用して得られた収益は、同社と利用者との間で分配するという契約になります。
さらに、住居は常に最新の状態が保たれる様になっており、同社によって無料で最新型の住居の設置や交換が行われます。
今回は独自の自律型住居を展開するJupeをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?同社の自立型住居は、スピーディーな建設が可能な上に住居性にも優れている事から、住宅不足問題の解決に大きく役立つ事が期待されます。そして、今後は過酷な気候の地域での利用を念頭に開発が行われていくようなので、同社の動向に注目していきましょう。