2018年1月、ソフトバンク傘下のソフトバンク・ビジョン・ファンドが建設スタートアップKattera(カテラ)へ8億6500万ドルを出資しました。Katerraは2015年に設立し、わずか3年で評価額は30億ドルとなる急成長をしています。またソフトバンクは2019年1月の段階で追加で40億ドルの評価額で7億ドルの追加投資を計画中との一部報道もございます。
この記事ではKaterraとはどのような会社か、その全容に迫っていきます。
Katerraは、アメリカ合衆国カリフォルニア州に本社を置き、長年変化のなかった建築業界に変革をもたらしているスタートアップ会社です。フレクストロニクスやテスラでCEOを勤めたMichael Marks、Silver LakeのマネージングディレクターJim Davidson、住宅会社Wolff CompanyのFritz H. Wolffというシリコンバレーの経験豊かなメンバーによって設立されました。
現CEOは、モトローラモビリティやGoogleでサプライチェーンを担ってきたMark Randallが勤めています。
今までの建築業界は20年でわずか1%しか生産性が向上していませんでした。その結果、過去数十年間で米国の建設生産性は低下していますが、コストは上昇し続けています。そこで生産性を大幅にあげるべく登場したのがKaterraです。
従来の建築業界は、部材調達から配送・ディーラー・下請け業者・ゼネコンまで、長いサプライチェーンが特徴でした。しかし、それでは手数料や相互連絡といった無駄が多く、余分なコストや時間を要してしまいます。そこでKaterraは、資材調達から建設までを垂直統合し、サプライチェーンの最適化を目指しています。2018年の売上は20億ドルに達すると言われています。
こちらがKaterraの紹介ムービーです。非常にこの会社のコンセプトが分かりやすいのではないでしょうか?高品質・低価格なサービスをより早く届けるべく、自社で一元管理されていることがよくわかります。
こちらはKaterraの工場の様子になります。
従来の建築業界では、設計から施行までを水平分業制で行っていたため、仲介業者を挟むなどコストや時間の面で多くのロスを生じていました。
しかし、Katerraでは、自社工場ですべての工程を管理し、垂直統合を行うことで、高品質・低価格な建築物をより早く提供することが可能となったのです。
また、設計士やデザイナー、インテリアや土木工学の専門家などが在席しており、デザインや品質にもこだわっているといえるでしょう。
Katerraでは、RFIDと呼ばれるICタグが利用されています。現場の電子機器でタグを読み込むことで、組み立て方の動画が見たり、出荷状況を確認したりできます。下記の動画でRFID(ICタグ)を使ってすべての建材類をトラッキングする様子を見ることができます。
また、「BIM(ビルディングインフォメーションモデリング)」という3D(3次元)設計データも用いて、デザインから施行までの情報共有を行っています。
KaterraではERP(統合基幹業務システム)を導入しており、RFIDやBIMもERPによって管理されることで、大幅な生産性の向上へとつなげています。
katerraでは、コスト・期間の削減とデザインに力を入れた、マスカスタマイゼーションの実現をしようとしています。マスカスタマイゼーションは、単一仕様の製品を多量生産するのではなく、デザイン面での顧客の要望に応えながらも、資材などの面での標準化を進めています。
Katerraは4つのデザイン会社とコンソーシアムを設立するなど、建築デザインに対して積極的に投資してきました。また、その内の2社Michael Green Architecture、Lord Aeck Sargentを買収しています。
特に、Michael Green Architectureは木造高層建築手法「マスティンバー」を手がける革新的な会社であることにも表れているでしょう。
Katerraは木造の集合住宅を中心に事業を展開してきましたが、2017年4月にはリフォーム事業者の米United Renovationsを取り込み、リノベーション事業に参入。さらに2018年6月には、コンクリートを使った建設を手がける米KEF Infraを買収し、ビル建設にも乗り出しています。
100年以上もの間変革がなかった建築業界に、新しいビジネスモデルを取り込むことで、高品質・低価格な建築の実現を可能としました。
カテラは現在約4,000人の従業員がおり、37億ドルの新規プロジェクトを実施する予定です。今回予定されている追加資金は、カリフォルニア州トレーシーに新しい施設を建設し、年間12,500戸の集合住宅を生産する準備を整えるとのことです。
建設業界の様々な領域に事業展開を進めるKaterraのこれからの動向が期待されます。