現在、新型コロナによるサプライチェーンの混乱や世界的な住宅・消費財需要の増加により、建材価格はかつてないほど高騰しています。例えば、2021年度第四四半期の銅価格は9%増、平鋼はなんと130%以上増と必須建材価格は過去最高を記録しており、2021年度中の建材部門全体の平均価格は昨年度より17.5%上昇しています(注1)。
建設業者にとって建材関連コストの削減は、建設プロジェクトの入札競争を勝ち抜く上で決定的に重要です。というのも、建設部門におけるデータ活用の進展により入札競争は激しくなっており、建設業者はプロジェクト獲得のため、コスト効率向上のためのあらゆる努力が必要とされるからです。
このような厳しい市場環境において、小規模の建設業者は少ない予算で運営するために施工直前に建材を購入する可能性が高くなります。そのためのコストを吸収しきれず、一部のコストを顧客に転嫁しなければならない可能性が高くなるでしょう。一方の大規模な建設業者では、一括で建材を購入し、将来のプロジェクトのために自社の倉庫に保管することができるかもしれません。しかしこの場合でも、建材の管理と追跡のプロセスはさらに複雑になるでしょう。
以上の課題を解決するためには、建設業者による建材の調達管理を最大限に効率化することが必要となります。今回ご紹介するKojo Technologies, Inc.(コジョ テクノロジーズ、以下Kojo)は、建材サプライチェーンの「シームレスな」管理をサポートするソフトウェアの開発と運営を行っている企業です。一体どのような企業なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
(注1)forconstructionpros.com “Construction Materials Prices Rose in Q4 2021 but Declines Expected in Q1 2022”
Kojoは、2018年にアメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコにて創業された企業で、建設業者による建材調達管理を支援するSaaSソフトウェアを提供しています。2022年9月にはシリーズCラウンドで3900万ドル(約58億800万円)を調達し、合計調達額を8360万ドル(124億5000万円)としました。筆頭株主には、北米及びイスラエルのテクノロジー企業への投資を展開するBattery Venturesや世界有数の投資件数を誇るTiger Global Managementの他、8VC、Bienville Capital、Schneider Electric、RXR Realty、Suffolk Construction、Nine Four Ventures、Human Capital、BoxGroup、AME Cloud Venturesなどが名を連ねています。
Kojoは2022年度初めに旧社名のAgora Systems(アゴラシステムズ)からブランドを刷新すると共に、対応業種について電気設備のみであったところ、機械、コンクリート、乾式壁、屋根、床、現場準備、ゼネラルコントラクターと8つの業種に対応を拡大しました。対象顧客は売上高500万ドル(約7億4000万円)から10億ドル(約1480億円)までの建設業者で、2020年初めに製品を市場に投入して以来、病院、学校、スタジアム、オフィスビル、多世帯住宅開発など、約1万件の建設プロジェクトでサービスを提供してきました。
CEO兼共同設立者のMaria Rioumine(マリア リウミネ)氏によると、KojoのSaaSを活用することで、建設業者は建材注文処理時間を平均約50%削減でき、廃棄物を最大90%削減することができ、これまでに建材費のムダを1900万ドル以上削減してきたといいます。
Kojoは2022年の1年間でチームを2倍以上の90人に、年間経常収益(ARR)を3.5倍に伸ばし、さらに2022年9月までの1年半でユーザー数を12倍へと増加させています。
Kojoは、建材調達プロセスを1つの包括的なデジタルプラットフォームに統合し、オフィス、現場、倉庫、ベンダーをシームレスにつなぐことで、建材調達の効率化を支援しています。提供形態はマルチテナントSaaS(複数業者でサービスを共同利用可能とする形態)で、サブスクリプションで販売されています。
サブスクリプションは、契約モジュールの数と契約者収益の組み合わせに基づいて価格設定されており、サブスクリプション価格には、導入に向けたトレーニングの料金が含まれています。建設業者は、数日から3週間程度でKojoを利用可能です。主要機能は以下の3つです。
作業を計画通りに進めるためには、現場と事務所間で必要な建材について正確に連絡する必要があります。これまで現場とオフィスのコミュニケーションは電話や電子メール、Faxなど、さまざまなチャネルの情報が入り混じって使用されてきました。KojoのSaaSでは、現場とオフィスが統合されたプラットフォームを使用することにより、現場が必要とする資材を、必要なときに提供することが可能となります。
ソフトウェアはモバイルにも対応しており、現場の端末から操作可能です。オフィスの担当者も、現場の作業者も、建材の注文状況、倉庫の在庫、バックオーダー中の建材をリアルタイムで確認することができます。
ロジスティクス業界で在庫管理のオートメーション及びデータ連携は常識となっていますが、建設産業における建材管理ではそうした効率化はまだ途上にあります。そこでKojoの在庫管理ソリューションは、建設産業に特化して現場、オフィス、倉庫のいずれにいても、現場で使用できる建材在庫を把握可能としました。
これにより顧客は建材在庫を効率的に活用し、無駄のない購買決定や現場への資材配送にかかる時間の短縮ができるようになります。また、買い切りや大量注文を増やすことで、さらなるコスト削減を実現します。
発注業務には手間と人件費がかかります。Kojoは注文書発行、見積書要求、依頼書受領、注文確認記録、請求書管理をすべて一箇所で行うことで、発注業務の効率化に貢献します。
また、請求書と注文書や納品書を自動的に照合し、過払いを防止する機能や、ERPシステムと統合することでリアルタイムの原価価格を更新し続けることで、最適価格で建材を調達することが可能です。
Kojoは、顧客が既に使用しているERPやプロジェクト管理システムと統合し、チームやシステム間で一貫性のある最新のデータを使用して業務を行うことができます。
これまでに次の9つの外部サービス、プロジェクトマネジメントソフトウェアを展開するAutodesk(オートデスク)、Procor(プロコア)、発注書発行を自動化するComputerEase(コンピュータ イーズ)、Quickbooks(クイックブック)、Sage 100(セージ 100)、Sage 300 CRE(セージ 300)、Viewpoint Vista(ビューポイント ヴィスタ)、Viewpoint Spectrum(ビューポイント スペクトラム)、COINS(コインズ)との統合/連携が可能となっています。
いかがでしたか?今回は、建設業者による建材の調達管理を効率化するソフトウェアを開発運営しているKojoをご紹介しました。Kojoは建材価格高騰という市場環境において、現場、オフィス、倉庫をシームレスにつなぐ統合されたプラットフォームを提供することにより、建設業者の建材調達業務を効率化しプロジェクトにかかるコストの削減に貢献していました。同社は今後どのように展開していくのでしょうか。今後の動向が注目されます。