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フランス発!建設現場をDXする現場管理コミュニケーションアプリKraaft

  • 建設ソフトウェア市場は2024年の98.7億ドルから2032年には210.4億ドルへ、年平均9.9%で成長が見込まれている
  • フランス発スタートアップKraaftは、建設現場向けコミュニケーションアプリを開発運営している
  • 2024年時点で950社以上により利用。2025年以降、プロジェクト管理機能を強化する計画

はじめに

ChatGPTにより画像生成

全世界における建設ソフトウェア市場規模は、2024年の98.7億ドル(約1兆5000億円)から2032年には210.4億ドル(約3兆2650億円)へ、年平均9.9%で成長すると予測されています(Fortune Business Insight 2025)。アプリケーション別では、プロジェクトマネジメント、スケジュール、安全管理、プロジェクトデザイン、フィールドサービスマネジメント、コストマネジメントなどに分類されます。

中でも建設におけるフィールドサービスマネジメント(FMS)は、オフラインで行われる活動や資材の管理のことを指します。作業員や機器のスケジュール管理、追跡、施工状況のトラッキング、レポーティング、請求書作成をすることが含まれます。

FSMにおけるモバイルデバイスやソフトウェアの普及は、現場における作業員同士、作業員と管理者間のコミュニケーションのDX(デジタル・トランスフォーメーション)に役立っています。なお、全世界における建設や医療、清掃、公共サービス等を含む一般FSM市場規模は、2024年の47.2億ドル(約7300億円)から2032年には118.7億ドル(1兆8400億円)へ、年平均12.2%で成長すると予測されています(Fortune Business Insight 2025)。

今回ご紹介するのは、フランスにて創業された、建設現場のFMSソフトウェアを開発、運営するKRAAFT SAS(クラフト、以下Kraaft)です。一体どのような企業なのでしょうか。詳しくみていきましょう。

Kraaftとは?

Kraaftは2019年にフランスにて創業された、建設現場向けモバイルコミュニケーションアプリを開発運営するスタートアップです。公式ホームページ及びLinkedinによると、2025年1月時点での顧客数は950社以上、企業人員は約45人、導入現場数は230,000以上とされています。

2025年1月にシリーズAにて1300万ユーロ(約20.9億円)を調達し、累計調達額を1620万ユーロ(約26億円)としました。リード投資家にはイギリス・ロンドンのDawn Capitalが参画。その他にアメリカ・カリフォルニアで建設テック関連投資に実績のあるBrick & Mortar Ventures、イギリス・ロンドンのChalfen Ventures、同じくイギリス・ロンドンのStride VC、フランス・パリのOSS Venturesが参画しています。

Kraaftが提供するのは、現場と事務所の連携を強化するコミュニケーションアプリです。建設現場のWhatsApp(コミュニケーションアプリの一つ)と銘打たれており、チャット機能、写真の位置情報付きタグ付け、Word/PDF/Excelレポート生成、外部アプリ連携(SharePoint, Kizeo Forms等)などの機能を備えています。2024年時点で、ヨーロッパの主要建設会社、SAUR、NGE、SPIE CityNetworks、Ramery、Serfim、Sade、Gagneraud等との利用契約を締結。アプリは5言語(英語、スペイン語、ドイツ語、イタリア語、フランス語)に対応しています。

建設現場のコミュニケーションをデジタル化するKraaft

画像引用元:KRAAFT SAS公式ホームページ

Kraaftは、建設現場とオフィス業務の連携を強化するための、直感的でシンプルなソリューションを提供しています。最小限のトレーニングで導入可能な点も特長です。建設現場の特徴は、作業内容ごとに事業者の役割が細分化されている点にあります。そこでKraaftは多岐にわたるレポーティングフォーマットを用意。それぞれの作業内容に合わせてレポーティングをカスタマイズすることができます。対応しているフォーマットとして、例えば以下のものがあげられます。

  • 道路工事・復旧工事
  • 上下水道工事、管理
  • 街路灯・電気自動車充電スタンドの管理
  • ボイラー・ヒートポンプ・ストーブの設置、管理
  • 換気・断熱工事、管理
  • コンクリート打設管理・型枠検査・鉄筋検査
  • ケーブル敷設・溶接工事、管理
  • 消火栓点検・漏水検知作業
  • アスベスト曝露対策工事
  • 足場検査・機械操作管理

その他にも、一般的な作業報告書・工事確認(開始前、工事中、完了)のレポーティングフォーマットが用意されています。以上を通じて、現場の進捗、安全管理、事故報告などを効率的かつスピーディに実施することができます。

料金体系は3つのプランが選べます。個人・中小企業向けの無料プランでは、メッセージ機能、写真の位置情報タグ機能、プロジェクト管理、デフォルトのレポーティングフォーム及びWordおよびExcel形式のレポート作成機能が利用できます。チーム向けのProプランは、月額20ユーロ/ユーザーで、上記のほかに無制限の履歴アクセス、レポーティングフォームのカスタム、管理者権限の設定、KML形式の地図データが利用できます。大企業向けのEnterpriseプランはカスタム価格となっており、Proプランの全機能のほか、外部システムとの統合、複数チームの管理、専用の導入支援が利用できます。

建設現場管理における活用事例

Sogea Hydraulique Provence(ソゲア・ハイドロリク・プロビンス)は、下水道や飲料水の施工を専門とする建設会社で、Kraaftの導入により現場管理の効率化を実現しました。従来は紙の報告書や写真を基に作業進捗をまとめる手間がありましたが、Kraaftを活用することで、進捗写真やコメントをリアルタイムで共有し、全情報を現場ごとのニュースフィードに整理可能に。報告作業が効率化し、1日30〜40分の時間を節約できるようになりました。

Kraaftは、ジオタグ付き写真や時系列で整理されたレポート作成機能を備え、現場状況を詳細かつ迅速にクライアントへ伝えることができます。これにより、信頼性が向上し、作業の透明性が確保されました。また、不測の事態への対応も迅速化し、現場とオフィスをスムーズに連携。「効率的で健康的な働き方ができる」と同社担当者も高く評価しています。

まとめ

画像引用元:KRAAFT SAS公式ホームページ

いかがでしたか?今回は建設現場をDXする現場管理・コミュニケーションアプリを開発運営するKraaftをご紹介しました。Kraaftは建設管理ソフトウェアの中でも、現場におけるコミュニケーションを改善するフィールドサービスマネジメント分野でサービスを展開しています。直近2025年1月に実施されたシリーズAの資金調達を受けて、同社はプロジェクト計画、タイムシート機能を導入することにより、プロジェクト管理ソリューションとしての機能豊富化を目指していくこと、API統合機能を強化していくこと、AI活用によるワークフロー効率化機能を追加していくことを目指しています。今後の同社の動向が注目されます。