建設業界はコンストラクション4.0と呼ばれる技術革新の只中にあります。コンストラクション4.0とは、建設プロセスの効率性と生産性を向上させるためのデジタル技術、データ分析、建設プロセスの自動化などを指します。これには、ビルディング・インフォメーション・モデリング(BIM)、モノのインターネット(IoT)、ロボット工学と自動化、プレハブ化とオフサイト建設、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)などの技術が含まれます。これらの技術は主に建設プロジェクトにおけるコストや時間、品質の向上に役立ちます。
その中でも今回は、建設現場での技術革新に注目。施工現場では、施工位置や寸法などの必要な情報を2Dの設計図から実際の現場に描き出す「墨出し」という工程が必要不可欠です。この工程は建設地の測量から仕上げにいたるまで、プロジェクトを通じて必要とされる工程で、墨つぼや系を使ってアナログに書き出したり、レーザー測量機を使って墨出しが行われています。今回ご紹介するのは墨出しをレーザープロジェクターで効率化するカナダのMechasys(メカシス)です。一体どのような企業なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
Mechasysが展開するのは、建設現場に設計図を50メートル中1ミリメートル以内の精度で直接投影表示するレーザープロジェクター、FramR™です。この製品はハードウェアとソフトウェアを組み合わせ、建設現場における墨出し作業を大幅に効率化し、納期の短縮や作業品質を改善するものです。実際に建設現場での資材配置までの時間を40%削減することができるとしています。
Mechasysは2024年1月の調達資金を受け、量産型製品の技術開発を進め、2024年度内には日本市場に投入する計画です。日本では名古屋市の岡谷鋼機が輸入代理店としての国内での販売を担います。これまでにMechasysのレーザー墨出しソリューションは、北アメリカ、ヨーロッパ、アジアの50以上のプロジェクトで活用されており、その精度の高さやユーザビリティによって評価を得つつあります。
Mechasysが展開するFramR™は50メートル当たり±1ミリという高精度で設計図面を建設現場に照射するレーザー墨出しソリューションです。床から壁面、天井にかけて360度対応することができ、レーザーの投影範囲は最大8.0メートルまで対応しています。
使用にあたっては、建設会社が活用する既存のCADデータを読み込みます。Mechasysが展開するプラットフォームにクラウド上でデータをアップロードすることで、自動で設計図面が読み込まれます。データを読み込んだらFramR™のハードウェアを建設現場に設置します。すでに建設現場にある要素をもとにして位置を確定すると、本機がレーザーを照射して、設計図面を空間上に反映します。設計図面が照射されたら、そのレイアウトに沿って印をつけたり、施工を進めることができます。
とりわけ問題となったのが、異なる回転半径の半月型の舞台の施工です。従来のやり方では施工現場でそれぞれの半月の中心となる点を見つけ、円形に墨出しを行う必要がありました。しかし本プロジェクトでは先に壁の施工が完了しており、後からの墨出しが難しい状況でした。
そこで活用されたのがMechasysのFramR™です。レーザー型のソリューションは、半月型などの複雑な設計でも問題なく図面を施工現場に反映させることができるため、先に設置された壁に干渉することなく墨出しを行い、施工を実施することができました。
今回の資金調達に参画した戸田建設や小川電気、Tokyu Construction Innobation Fundは、日本の建設業界における人材不足問題に対するソリューションとして、Mechasysに熱視線を送っています。
日本の高齢化による人材不足は、とりわけ墨出しという高技能が要求されるような場面で深刻な影響を与えており、建設プロジェクト全般における作業の質や効率の低下をもたらしています。今回の日系建設ファンドによる出資はMechasysの製品に対する期待はもちろん、人材不足に対する戦略的な課題解決の必要性も提起しているといえます。
いかがでしたか?今回は建設現場における墨出しの工程をレーザープロジェクターで効率化する、カナダ発のスタートアップMechasysをご紹介しました。高齢化と人材不足に苦しむ日本の建設業界も熱視線を送っています。同社は今後どのように展開していくのでしょうか。今後の動向が注目されます。