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建設産業のバックオフィス業務をDXするMiter

  • 建設バックオフィス業務ソリューション市場は、2025年時点で106億4000万ドル(約1兆5700億円)から、2030年の166億2000万ドル(約2兆4500億円)へと、年平均9.33%で成長を見込む
  • アメリカに拠点を置く建設バックオフィス業務ソリューションのスタートアップMiter(ミター)は、2025年5月に2,300万ドル(約33億9000万円)を調達、累計資金調達額は3,800万ドル(約56億円)に
  • MiterはHR、給与管理、時間管理、経費処理、ジョブコスティングを統合したソリューションを展開し、700社以上で導入されている

はじめに

画像引用元:Miter公式ホームページ

建設産業におけるバックオフィス業務は多くの課題を抱えています。例えば給与計算や人事管理、時間集計、経費処理などが複雑で、特にユニオン規則や地域ごとの労働法対応には膨大な工数と専門知識が必要です。さらに、さまざまなツールを並行して使う現場ではデータの重複入力やバラバラなシステムによる非効率が常態化しており、リアルタイムな意思決定が難しくなることも珍しくありません。

こうした現場の負荷を軽減するため、HR・給与・時間管理・経費・ジョブコスティングなどの機能を一体化し、外部ERPやプロジェクト管理ツールとのシームレスな連携を実現するクラウド型ソフトウェアが求められています。建設バックオフィス業務ソリューション市場は、全世界で2025年時点で106億4000万ドル(約1兆5700億円)のところ、2030年までに166億2000万ドル(約2兆4500億円)へと、年平均9.33%で成長することが見込まれます(Modor Intelligence 2025)。

そこに登場したのがアメリカのMiter(ミター)です。建設・サービス業向けに特化し、これらの課題を統合的に解決するソリューションとして急速に支持を広げています。一体どのような企業なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

Miterとは?

画像引用元:Miter公式ホームページ

Miterは2021年に創業された、米国カリフォルニア州サンフランシスコに拠点を置くソフトウェア企業です。CEO兼共同創業者のConnor Watumull氏は、建設・フィールドサービス業者を支援するソフトウェアの構築を行なっています。2025年5月、MiterはシリーズBラウンドで2,300万ドル(約33億9000万円)を調達し、累計資金調達額は3,800万ドル(約56億円)に達しました。このラウンドにはBessemer Venture PartnersCoatue Managementが率いている他、Pear VCが参加しています。

Miterは建設業者やサービス事業者向けのクラウド型HR/給与/時間管理/経費管理/ジョブコスティングプラットフォームです。特に、ユニオン規則やCertified Payroll(認定給与)対応を含めた給与計算や、コスト管理への対応に強みがあります。Google Playのアプリ説明でもPCやいくつかのアプリを統合した「100%無料のタイムトラッキングアプリ」として紹介されています。現時点で700社以上の建設業者がMiterを利用。その導入効果は定量的にも明確で、「給与業務だけで週20〜40時間分の作業工数を削減」できた事例もあります。

Sage、NetSuite、Acumaticaといった主要ERPや、Procore、ServiceTitan、BuildOpsなどのプロジェクト管理・サービスプラットフォームとの連携が可能で、既存のワークフローとスムーズにつなげることができます。

Miterの統合バックオフィス管理クラウドソリューション

画像引用元:Miter公式ホームページ

Miterは「Miter Platform」として、建設・サービス業に特化したバックオフィス業務ソリューションを提供しています。HR・給与・時間管理・経費・ジョブコスティングを一つのプラットフォーム上で管理できます。現場作業員はスマートフォンアプリや現場設置のキオスク機器で簡単に打刻(clock-in/out)が可能。GPSとジオフェンシングにより、正確な現場ログを取得できます。上司はタブレット等からクルー単位で時間を登録・承認でき、時間情報はオフィスにリアルタイムで連携されます。

タイムトラッキング機能は現場作業の正確な時間管理や給与・成果物連携、コスト配分に直結します。地域別最低賃金やユニオン対応が必要な現場に最適です。さらに、休憩時間や残業対応、州ごとの労働法・ユニオンルール・Certified Payrollなどの複雑な労務対応を自動化し、プロセスの標準化とコンプライアンス遵守を支援します。Sage Intacctとの連携ページでは、月額ユーザーあたり15〜50ドルという価格帯で提供されています(モジュール使用状況や顧客規模による変動あり)。

ミターの導入事例

画像引用元:Miter公式ホームページ

Miterの効果は、導入企業の業務効率化と成長支援の両面で明確に表れています。たとえば、米国の屋根施工会社American Roofing & Metal(アメリカンルーフィング&メタル)では、給与計算とタイムトラッキング業務が慢性的に混乱しており、特に新しい州や公共案件に進出する際には、旧システムでは労働時間やコストの把握に遅れが生じていました。同社はMiterを導入することで、現場からの打刻情報をリアルタイムで集約し、複雑なユニオン規則や公共工事の賃金要件にも自動で対応できるようになりました。COOのGarrett Henke氏は「給与処理を救われた」と述べ、業務の安定化と迅速化に大きな手応えを示しています。

同様に、設備工事会社Green Mechanical(グリーンメカニカル)も、紙のタイムカードによる管理からMiterへの移行によって大きな改善を実感しています。従来は現場とオフィス間での情報伝達に時間がかかり、入力ミスや重複作業が頻発していましたが、導入後は現場での打刻と同時にデータがバックオフィスに反映され、承認から集計までがスムーズに進むようになりました。CFO兼COOのJason Chenoweth氏は「処理がこれまでになくスムーズになり、正確性も向上した」と語っています。

投資家の視点からも、Miterの価値は高く評価されています。シリーズBラウンドを主導したBessemer Venture Partners(ベセマーベンチャーパートナー)のKent Bennett氏は、建設業界特有の「高度に複雑な人材運用管理」という課題に対し、Miterがその最も負担の大きい部分を自動化し、成長企業の拡大を後押しする存在であると指摘しています。これらの事例が示すように、Miterは単なるバックオフィスの効率化ツールではなく、事業拡大や多州展開など、企業の成長フェーズを支える戦略的インフラとして機能しています。

まとめ

画像引用元:Miter公式ホームページ

いかがでしたか?今回は、建設業界のバックオフィス課題を一体で解決するプラットフォーム、Miterをご紹介しました。同社は2025年5月にシリーズBにて2,300万ドルを調達し、累計3,800万ドルの資金を獲得。HR、給与管理、時間管理、経費処理、ジョブコスティングを統合したそのソリューションは、Excelや紙作業を置き換え、週20〜40時間の工数削減を実現しています。主要ERP・プロジェクト管理ツールとの連携も豊富で、700社以上の導入実績があります。今後はさらに業界全体のオペレーション効率化を推進するキープレイヤーとして注目されます。

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