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レンガ積みロボットでブロック壁の建設作業を効率化するMonumental

  • 無人搬送車(Automated Guided Vehicle; AGV)が建設産業において普及し、その市場規模は 2021年時点で47億ドルから2031年までに148億ドルへと、年平均12.2%成長を予測
  • オランダ・アムステルダムのMonumental(モニュメンタル)は、自動でブロック壁を建設するAGVの開発運営を行う
  • 2023年に、オランダにてオフィスと倉庫の複合施設の15メートル(約49.2フィート)の外壁工事の実証実験を完了

はじめに

画像引用元:Monumental 公式ホームページ

これまで製造業や運送業において、予め経路や作業内容を定められた(ガイドされた)仕事をこなす無人搬送車(Automated Guided Vehicle; AGV)と呼ばれるロボットが普及してきました。近年では、事前のガイドがなくても自ら状況を判断する自律走行ロボット(Automated Mobile Robot; AMR)がAGVの後発として普及していますが、なおAGVがこれまで活用されてこなかった分野にまで活用が進み、市場を拡大させています。AGV市場全体では、 2021年時点で47億ドル(約6990億円)であったところ、2031年までに148億ドル(約2兆2011億円)へと、年平均で12.2%の成長が予測されています(注)。

そこで今回は、建設産業におけるAGV活用の事例として注目されている、レンガ積みロボットのMonumentalをご紹介します。いったいどのような企業なのでしょうか?詳しく見ていきましょう。

注)https://www.transparencymarketresearch.com/automated-guided-vehicle-market.html

Monumentalとは?

Monumentalは2021年にオランダのアムステルダムにて創業されたスタートアップで、自動レンガ積みロボットの開発と運営を行っています。このスタートアップは、データ可視化企業Silk(現在はPalantirの傘下)を率いる二人によって設立され、すでに母国オランダで、オフィスビルの15メートルの外壁を含む限定的な試験施工を行っています。低所得者向け住宅を含む25の請負業者と提携しています。2024年2月にシードラウンドにて2500万ドル(約37億1800万円)の資金調達を実施しました。リード投資家はイギリス・ロンドンのPlural、ベルギー・ブリュッセルのHummingbird Venturesです。その他の出資企業として、イギリス・ロンドンのNorthzone、同じくロンドンのMaterial Ventures、オランダ・アムステルダムのNP-Hard Ventures、ドイツ・ベルリンのFoundamentalが名を連ねています。

Monumentalのソリューションの中核は、高精度かつ高速でレンガを積み上げる自動化ロボットです。従来の人手による作業と比較して、はるかに効率的かつ一貫した品質でレンガ積み作業を行うことができます。さらに建築設計のCADデータを直接取り込むことができるため、複雑な形状や曲線を含む構造物でも精密に施工することが可能であり、設計意図を正確に反映した施工を実現し、建築プロジェクトの質が向上します。また、上の紹介動画の中で、レンガの運搬補充を自動で行う運搬ロボットも、ソリューションに含まれています。

英国だけでも、住宅需要に対応するために年間30万戸の住宅を建設するのに必要なレンガ職人が7万5,000人不足していると推定されています。そこでMonumentalは、ロボットが作業を代替するソリューションを提案。安全面でも、重労働や危険を伴う作業をロボットが行うことで、作業現場の安全性が大幅に向上します。品質面でも、個人差や疲労の影響を受けずに、常に一定の高品質な仕上がりを実現します。さらに、様々な種類のレンガや石材に対応可能なカスタマイズ性を持ち、多様な建築プロジェクトに適用できる柔軟性も備えています。

Monumentalのロボットソリューションを支える技術

画像引用元:Monumental 公式ホームページ

Monumentalのロボットは、周囲環境を把握するためのセンサー、コンピューター・ビジョン、小型クレーンを搭載しています。ハードウェア開発においては、週単位でのアップデートを可能にするため、プロトタイプのほとんどを自社工房で内製化しているといい、エンジニアたちは、CAD設計だけでなく、3Dプリント、旋盤加工、CNC加工など、多岐にわたる製作プロセスに直接携わっています。

現場でロボットを操作するのは、モニュメンタルのAI搭載ソフトウェアであるAtriumです。ロボットは小型で人間が作業できる場所ならどこにでも移動が可能です。制御ソフトウェアのほとんどはRustで書かれているほか、3Dシミュレーションとデジタルツインはブラウザ上で動作し、TypeScriptで書かれています。

実証実験の事例

画像引用元:Monumental 公式ホームページ

2023年、Monumentalはオランダで初めての大規模プロジェクトを完了しました。このプロジェクトでは、オフィスと倉庫の複合施設の15メートル(約49.2フィート)の外壁をロボットによって建設しました。それ以来、同社は社会住宅プロジェクトを含む他のいくつかのプロジェクトにもロボットを導入しており、例えばオランダのトップ25に入るゼネコンとパートナーシップを結んでいます。

請負業者はモニュメンタルを二次請業者として雇い、同社のロボットを導入することで、ブロック積みの過程をさらに効率化していくことができます。

まとめ

画像引用元:Monumental 公式ホームページ

いかがでしたか?今回はブロック壁の建設を自動化するAGVソリューションを展開するMonumentalをご紹介しました。MonumentalはCADによって予め決まった建設図面に従って作業を行うほか、センサーやAIを用いた自律的な機能改善を行います。

レンガ積み労働人口が今後減少していくなかで、同社は今後どのように事業を展開していくのでしょうか。今後の動向が注目されます。