メガベンチャーAmazonの投資ファンドAmazon Alexa Fund(アマゾン・アレクサ・ファンド)がアメリカの建設テックスタートアップPlant Prefabへの7億円の投資を発表しました。
また世界的な投資ファンドであるObvious Venturesが主な資金を出資しています。まだシリーズA(初期フェーズ)ですが、その成長に大いに期待が高まっていると言えるでしょう。
Plant Prefabは、2016年にプレハブ住宅の設計・開発を行っていたLiving Homesの自社工場として設立されました。
Living Homesのプレハブ住宅は従来のモバイルハウスを進化させたカスタムハウスというものでした。
モバイルハウスとは、コンテナのように積み運びできるプレハブ住宅で、工場でユニットとして製造、敷地に運び設置するものです。これは低コストを実現するメリットがある反面、従来の生活空間とは程遠いいわゆるハコのような住宅でした。これに対して、従来の住宅のような生活機能・デザインを充実させたプレハブ住宅、それがカスタムハウスです。もともと都市の住宅が高価だという理由からアメリカではモバイルハウスやコンテナハウスが多く生産されてきました。
しかし、これらは低価格ではありましたがそれまでの都市の住居とは程遠い性能のものでした。
Plant Prefabはそれまでの住宅に近い高性能のモバイルハウス型の住宅(カスタムハウス)の供給のために創業されました。母体となった、Living Homesではそれまで外部工場に製造を委託する形で製造を行なっていましたが、業界の中で低コストのモバイルハウスの製造が主流になっていく中で、目指している高品質な「カスタムハウス」の実現が難しくなったきており、そこで生み出された自社工場がPlant Prefabでした。
よりよいデザインでさらに自社工場でのプレファブリケーションによってより低価格・高品質な住宅を提供できることが彼らの強みになっています。
また工場での住宅の建設することによって建設によって生じる騒音や都市への影響を無くすことができるのも彼らの強みです。
Plant Prefabは「持続可能な建設、資材、プロセス、および運営に専念する、国内の最初のプレハブ家庭工場」です。
そこでは高品質で環境に優しい様々な世帯を想定した家が作られています。
しかも、最初に手がけた住宅は独自のビルシステム特許によりわずか8時間という短時間で現地で施工・提供されました。
これは従来の施工時間を大幅に短縮するものであるだけでなく低コスト化にも繋がっています。
こちらがPlant Prefabによる実際の施工の様子です。
いくつかのユニット化された箱を積み上げて積み木のように作られていくのが分かります。従来の建設との違いがお分かりいただけるのではないでしょうか。
実際に彼らが提供している住宅は、下記のような美しいものも可能とのことです。
Amazon Alexa FundはなぜPlant Prefabに出資したのでしょうか。それはAmazonが目指す住宅のIoT化と関係があります。現在日本でもスマートスピーカーが普及してきていますが、米国ではスマートスピーカーの普及率は日本を大きく先行しております。
Adobeが2018年8月に実施した調査によると、米国人消費者の約3分の1が、アマゾンのエコーやグーグルホーム、アップルのHomePodなどのスマートスピーカーを保有しており、2018年末には50%近くに到達する予想とのことです。
Amazonは展開するスマートスピーカーAmazon Alexaをホームオートメーション(家庭内自動化)の中心におく戦略をとっております。スマートスピーカー所有者の多くは声を用いてショッピングが商品の検索を行い音声アシストを利用しております。
そのユーザー行動をより保管するために、家造りについても範囲を広げていくことを考えての出資と推測されます。
また、Plant Prefabは「自動化」と「接続性」に重点をおいており、Amazonの考えと一致したことや、環境配慮への姿勢も同様に評価されたようです。
今後も建築、不動産も巻きこんだ自動化の動きがさらに進んでいくことでしょう。
日本においては耐震性の問題もあり馴染みの薄いカスタムハウス。導入にはまだまだ時間がかかるかもしれません。しかしこうした施工の効率化は日本においても多く見習う点があります、Plant Prefabはまだまだ初期のフェーズのベンチャーですが、これからの動向に注目です。