鉱業や建設産業の造成・土木事業では、大量の土砂を効率的に運搬するためには、適切に工事車両や人材を配置するための正確な測量と作業計画が不可欠です。これらの産業では、測量や進捗管理にかかる膨大なコストを削減するために、ドローンによる空撮測量や撮影したデータを扱いやすくするためのソフトウェアの活用が進みつつあります。
今回ご紹介するPropeller(プロペラ)はドローン測量事業で数多くの実績を持つ企業です。同社の強みは、空撮データを詳細な3Dモデルに変換する技術や、データを作業計画や進捗管理に活かす拡張性の高いソフトウェアにあります。同社の製品にはどのようなアイデアが詰まっているのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
Propellerは、2014年にオーストラリアのシドニーで創業された会社です。主力事業はドローンによる土地の測量で、同社は鉱業が盛んなことで知られるアメリカのコロラド州デンバーにも支店を置くなど、積極的なグローバル展開を進めています。
Propellerはドローンのハードウェア世界シェアNo.1のDJI(ディー ジェー アイ)とパートナーシップを結び測量技術を開発。その製品は鉱業、骨材産業、建設産業における土砂運搬や土木工事、整地などの現場で、土地の測量、地図の作成から工事進捗の管理に活用されています。
2020年7月には、シリーズBの資金調達ラウンドで1800万ドル(約19億円)を調達するなど、総計3200万ドル(34億円)を調達しており、これまでに120カ国、2700社以上に導入され、測量回数は62,000回を超える実績を持つといいます。
Propellerの製品が世界各国で選ばれている理由は、ドローンによる測量からデータ活用までの全工程を一貫してサポートする Propeller Platform(プロペラ プラットフォーム)と呼ばれるシステムにあります。
Propeller Platformとは、工事現場の作業者や管理者が活用することを想定して作られたプロジェクトマネジメント用ソフトウェアで、PCやスマートフォンから利用することができます。インターネット上にデータを保管するクラウドという仕組みが採用されており、ドローンが撮影した工事現場のデータや管理者が作成した作業計画は、システム上にいる全員に瞬時に共有されます。
Propellerのドローンが撮影した高解像度の画像は、本社のデータセンターで分析され3Dモデル化されます。現場の管理者はこの3Dモデルを元に作業計画を作成し、作業者がその計画に沿って作業を進めることで、効率的な作業が可能になるという仕組みです。
また、測量を数日おきに繰り返すことで、作業の進捗を管理することができます。以下の画像にある通り、作業計画通りに作業が進んでいる部分は青のチェックで、作業が進んでいない部分は赤のマークで注意を促しています。Propeller Platform上でデータ解析を行うことより3Dモデルと作業計画とのずれを自動で検出するため、作業進捗の確認にかかる時間を短縮できるのです。
空撮技術にも工夫が凝らされています。PropellerとDJIが共同開発した Propeller PPK(プロペラ ピーピーケー)は、誤差3センチ以内という精度で高解像度の空撮測量を可能にする製品です。この製品はドローンの自動航行を制御するもので、DJIのドローン端末とAeroPoints(エアロポイント)と呼ばれる黄色で縁取られたタイル型端末からなります。
AeroPointsにはGPSモジュールが内蔵されており、測量GCP(測量評定点)の役割を果たします。GCPとは、水平位置や標高などの位置情報を記録した基準点のことで、ドローンが撮影した空中写真の中にGCPを含めることで測量精度を向上させることができるのです。
作業は以下の手順で行われます。
測量作業を開始する前に、ドローンの航行経路をあらかじめ設定します。
作業者はAeroPointsをドローンの離陸地点及びあらかじめ設定したいくつかのポイントに設置して準備が完了します。
ドローンを離陸地点に設置したAeroPoints上に置くと、ドローンが自動航行を開始し、定められた経路を飛行して現場の空撮を行います。
Propeller本社のデータセンターでは、AeroPointsに記録された座標のデータと、空撮された画像データを元に3Dモデルの地図を作成します。
他社のドローン測量の多くは空撮画像のみから地図データを作成していますが、Propellerの空撮ではAeroPointsを併用することで、空撮画像を修正し、正確な地図データを作成することができるのです。
さらに、Propellerが2020年に発表した新製品が DirtMate(ダートメイト)です。これは工事車両の屋根に直接設置する端末で、工事車両の位置情報をリアルタイムに把握したり、作業計画からの逸脱を検知することができるといいます。
DirtMateは端末の中にGPS、振動検知センサー、半径1km以内とのネットワーク機能を搭載しています。この端末を取り付けた工事車両はリアルタイムで位置や作業状況(作業中・休憩中)などが分かるようになり、管理者はこれにあわせて適切な作業指示を作業者に行うことができるのです。
以上で見てきたように、Propellerは高解像度の測量を実現する製品Propeller PPKや、工事車両の状況を把握するためのDirtMate、測量データを作業の全工程で活用できるよう多様な拡張機能を搭載したPropeller Platformなど、ソフトウェア、ハードウェアの両面から作業を支援しているのです。
いかがでしたか?本記事では、鉱業や建設産業で、測量のコストを抑制するためにドローンによる測量が普及していることや、その中でもPropellerのドローン測量支援ツールが多くの実績を獲得していることについて紹介してきました。
同社は2020年7月に19億円という大型の資金調達を実施しており、今後世界の工事現場で市場シェアの獲得を目指しています。今後の展開がますます注目されます。