石油とガス分野では年々雇用需要が増加する傾向にあり、大手調査会社のIHS Markitの推定によると、この2分野は今後17年間で200万人以上の雇用を創出すると言われている。エネルギー業界において、安定した継続的な労働力の確保が無視できない課題となりつつある中、Rigupは高度に熟練した技術を持つ請負業者とエネルギー企業をつなぐプラットフォームを開発運営し、同分野において従来の人材派遣会社の市場をリプレイスを狙っている。
2014年アメリカ(オースティン)を拠点に設立されたスタートアップのRigUpは、エネルギー業界に特化し請負業者とエネルギー企業の人材マッチングサービスを運営しており、現在までに4億5,000万ドル以上を調達し19億ドルの評価額と言われいる。投資家には、Founders FundやBedrock capitalなどおよび著名投資家のAndreessen HorowitzがシリーズDラウンドで3億ドルを出資している。
RigUpの流通総額は20億ドルを超えており、2018年から200%も増加した。またプラットフォーム上には5,000を超える請負業者と250を超えるエネルギー企業が登録している。単純な人材マッチングだけでなく請負業者むけに人材を効率的にプロジェクトへアサインできるツール群を提供している。
RigUPの成長の背景には、シェール革命により世界最大の産油国となったアメリカの石油産業の市場成長が存在する。石油サービス産業はアメリカ国内で1500億ドルの規模があり、非常に細分化されている。今後5年以内にエネルギー関連労働者は50%が退職すると言われており巨大な人材不足というニーズが存在する。
RigUpは請負業者により良い条件と選択肢を、そして事業に合わせたオペレーションが行えるデジタルツールを提供する事で、エネルギー業界で最大のマーケットプレイスを構築している。
認定請負業者ネットワーク
25,000以上の請負業者のネットワークへアクセス可能で、その都度適任の高度な専門技術を持つ人材を見つけられる。
シームレスなデジタル請求システム
アプリを使用し、労働状況の管理シートに紐付いた翌日払いや支払状況の追跡などが行えます。支払いに関して、面倒な書類のやり取りなどを排除し、仕事に専念できる環境を提供しています。
コンプライアンスとリスク管理が可能な労務管理ツール
提供する労務管理ツールではコンプライアンスに準拠するチェック体制の支援を行います。FLSA(公正労働基準法)準拠のチェックなどが簡易に可能になる。
認定ベンダー企業ネットワーク
1万を超えるベンダーのネットワークを利用可能。また、既存のベンダーを追加することでRIgUPと統合した請求も利用できる。
効率的な請求システム
ベンダーの請求書を承認し、簡単に支払いを済ませられる。書面などのやり取りが存在しないため効率化されている。
コンプライアンスとリスク管理
カスタマイズ可能なコンプライアンスシステムを使用して企業別のニーズ毎の対応ができる。
レポートと分析
RigUp内の分析およびデータへアクセスする事で、支出の完全な透明性を獲得しながらオペレーションをより円滑に進められる。
現状、アメリカのエネルギー業界の大企業は多くの場合、さまざまなアナログな代理店と協力して人員を確保している。
また、働き方についても業界、職種別の専門スキル、地域、期間(2週間、6ヶ月、12ヶ月など)多種多様な労働状況が存在する複雑な業界のため、労働者は給料を受け取るために最大3時間程度の申請書類作成などが必要になり、紙の請求書を発行したあとに数週間かかってから給与が振り込まれるという状況だった。こういった複雑な業界において、人材を手配する代理店は情報の非対称性を利用することでビジネスを展開していた。
RigUpは正しい需要と供給のマッチングの裏には、質の担保を目的としたリスク管理、労働時間の可視化や迅速な支払い、レビューの蓄積などを全方面で対応し、業界を改革させている。
RigUPはまだ市場規模の2%程度のシェアですが、一部のサブカテゴリにおいては20%以上のシェアを獲得しており、前年比で200%を超える成長を見込んでいる。
近年エネルギー分野の求人数の伸びが著しく、中途採用の求人を行う企業が増えている。潤沢な資金力で日本のマーケットを狙う外資系企業や、省エネ関連ビジネスを中心にスタートアップ企業による採用の増加が目立つ。また、採用ポジションにも変化が見られ、例えば世界規模で雇用者数が増加する再生可能エネルギー産業では、土地の調達などの上流フェーズから建設フェーズを含めたプロセス全体へ広がり始めている。特にEPC(Engineering, Procurement & Construction、設計・調達・建設)の業務を遂行できるプロジェクトマネージャーが求められるようになり、技術的なバックグラウンドを持ったプラントエンジニアなどが歓迎されている。
その一方で自社の人材育成に断固として力を注ぐ大手企業も多く、まだまだ業界全体における人材流動は限定的である。
また、外部への情報流通が少ないと言われる日本のエネルギー業界では、技術の継承や独自の商習慣重視といった従来の思考を緩和せざる追えなくなってきた。より柔軟な人材の配置と業務の遂行を第一に見据え、意思決定の迅速さや新規参入障壁を低くしていく事で、業界全体の効率化を促しイノベーションをサイクル化させる仕組みが必要となっている。
RigUpの成長理由はレガシーな業務が横行している業界に対して、テクノロジーを用いて業務全体を効率化することでマーケットプレイスのネットワーク効果を効かせていったことにある。マーケットプレイスを支援するために、適材適所な人材の配置や保険、請求処理など様々な業務を最適化していった。
建設業界全体にいえることだが、巨大な産業においてまだまだマンパワーで業務が遂行しているカテゴリについて、テクノロジーによるアプローチは有効だろう。