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建設設計を10秒で生成!中国AI企業の 小庫科技(XKool Technology)とは?

  • 建設設計において、AI(人工知能)が過去データを学習して新たな建設設計案を生成する製品が登場している
  • 中国の小庫科技(XKool Technology)が開発したAI建設設計システム「ABC(AI-BIM-Cloud)」は、AIが数秒以内に設計草案を生成
  • 同製品は、設計のどのタイミングでも人によるパラメータの調整が可能。CADやBIMにも対応している

はじめに

建設設計の場面で、AI(人工知能)の活用事例が増えています。開発が進んでいるのは、過去の膨大なプロジェクトデータから、次のプロジェクトに最適なモデルを推論するAIの開発。実現すれば、建設設計にかかる時間やコストを大幅に削減することができます。実現すれば、建設設計にかかる時間やコストを大幅に削減することができます。

今回ご紹介する小庫科技(XKool Technology エックスクール テクノロジーズ)は、建設設計ソフトウェアを開発する中国の企業です。どのような企業なのでしょうか?早速見ていきましょう。

小庫科技とは?

画像引用元:XKool Technology 公式微博ページ

小庫科技は、建築設計士とコンピューター技術者出身の経営者のもと、2016年に中国の深圳(深セン)で創業された企業です。2020年3月にはシリーズAラウンドで1400万ドル(約14億5800万円)を調達しています。

同社は創業以来、都市開発と建設設計のためのインテリジェント化(コンピュータによる最適制御)された設計ツールやサービスを提供しており、2020年7月には、設計事務所向け設計ツールの新製品「ABC(AI-BIM-Cloud、エーアイ ビム クラウド)」を発表。既製品のAIエンジンをさらにバージョンアップさせ、建設設計草案を完全に自動作成することができるようになりました。

画像引用元:小庫科技公式微博ページ

建設プロジェクトにおける構造設計の初期段階では、過去のデータを参考に検討を行います。ところが、プロジェクト用地の面積や階数、スパンなど設計上重要なパラメーターが複数あるため、単純な比較はできません。

そこで小庫科技が最初に取り組んだのが、データの構造化です。上記の画像は小庫科技の使用事例を示したもので、9つの建設例が並んでいるのが見て取れます。同社が構築したライブラリはビジネス街、商店街、教育施設(幼稚園や学校)など、都市の景観や建物の用途に合わせて複数の種類が用意されており、土地面積や戸数などのパラメーターを設定するだけで、過去データから最適な類似例を検索して自動で組み合わせ、設計草案を出力してくれるのです。

画像引用元:小庫科技公式微博ページ

また、小庫科技のAI建設設計システムは設計草案を出力するだけではありません。CADで読み取り可能な2D図面、SketchUpとRhinoで利用可能な3Dモデル、プロジェクト用地の周辺情報を分析した区画の評価、周辺地図、対応する経済データ指標等、数多くの実用的なデータを同時に出力し、計画に必要なあらゆるデータを可視化してくれるのです。

AIを活用し数秒で設計草案が完成する設計ツール

2020年7月に発表された、設計事務所向け設計ツール「ABC(AI-BIM-Cloud、エーアイ ビムクラウド)」は、既存製品のAIエンジンをさらに強化。ソフトウェアからプロジェクト用地等を最初に設定するだけで建設草案を数秒で生成できるようになりました。

設計草案を数秒で生成

画像引用元:36Kr Japan 「わずか数秒で設計草案が完成、建築にAIを活用する中国」

小庫科技の既存製品は、ユーザーが容積率等のパラメータをあらかじめ入力した上でAI設計が設計草案を作成するもので、詳細部分は人の手による編集が必要でした。新製品では自動計画(Automated planning)機能が実装され、設計草案作成のほぼ全ての工程をAIに任せることができるようになりました。作成にかかる時間もわずか数秒にまで縮めることができるようになったといいます。

設計のスマート化

画像引用元:36Kr Japan 「わずか数秒で設計草案が完成、建築にAIを活用する中国」

ユーザーは、部屋タイプや戸数内訳を入力することで、適切な設計事例を過去データが蓄積されたライブラリから検索することができます。適切な事例がない場合は推奨事例が表示され、一覧から新規で設計を組み立てることが可能です。

CADとの連動

画像引用元:36Kr Japan 「わずか数秒で設計草案が完成、建築にAIを活用する中国」

BIMやCADといった、従来建設設計に利用されてきたファイル形式への出力にも対応し、プラグインを通じてワンクリックでデータを連携したり、プラットフォームを自由に切り替える機能も搭載。主要なソフトウェアに対応しています。

同社はすでに、大手から中小までの設計事務所や、公的企業とのプロジェクトで提携を進めており、中国のIT最大手テンセントとのBIMを活用した計画・設計事業における業務提携を発表しています。

日本におけるAI建設設計の取り組み

日本の総合建設会社大手の竹中工務店は、2017年より将棋AIで知られるHEROZと共同で建設設計AIシステムの開発を進めています。

画像引用元:竹中工務店公式ホームページ

竹中工務店は、1966年に構造計算・構造体積算システム「RAHMEN(ラーメン)」を開発するなど、業界に先駆けてコンピュータ活用による設計の合理化を進めている企業で、2001年に開発された構造設計システム「Brain(ブレイン)」と、HEROZの自社開発AI「HEROZ Kishin(ヒーローズ キシン)プラットフォーム」を掛け合わせて構造設計の自動化を進めていく方針です。2020年までにAIを活用して構造設計のルーティン業務を70%削減することが目標とされており、近日中に詳細が発表されることが予想されます。

画像引用元:竹中工務店公式ホームページ

また構造設計に先駆けて、2019年にはAIを搭載した空間制御システム「Archiphilia™ Engine(アーキフィリア エンジン)」を発表しました。こちらは建物に設置されたセンサーから取得したデータをAIが解析し、照明や空調の運転条件を自動的に最適化、省エネルギーや省人化を実現するシステムです。今後実証実験を行い、建物設備にもAI適用を進めていくといいます。

まとめ

今回は、建設設計にAIを活用する中国企業、小庫科技(XKool Technology)をご紹介しました。同社は過去の膨大な建設設計データを構造化し、AIが類似の過去事例から適切な設計案を提案する製品を開発しています。2020年7月に発表されたアップデートでは、AIエンジンが強化され、さらに単純作業が削減されていることが分かります。

日本においても竹中工務店の事例をはじめとして、AI建設設計システムの開発が進みつつあります。どのような製品が現れるのでしょうか。今後の動向が注目されます。