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設計もVRでプレゼン! Yulio Technologiesの新しい表現とは?

  • 建設物の設計はクライアントとのすり合わせが大切だが、設計図面やイメージ図だけではイメージを伝えにくい
  • Yulio Technologiesは、VRで建物の内外装を完成物を実際に見ているかのように確認できるサービスを開発
  • 同社のVRサービスでは、CADで制作した設計図や360度画像からVRコンテンツを制作でき、初期投資やVRの専門知識無しで導入可能

はじめに

建設物の設計段階では、設計者とクライアントは丁寧なコミュニケーションを経て建物の完成イメージをすり合わせています。しかし、建物の完成イメージを的確に伝えるためには精巧な3Dモデルや3Dイメージ図では限界があります。

今回ご紹介するYulio Technologies(ユリオ テクノロジーズ、以下Yulio)は、3D設計図からVR(仮想現実)コンテンツを制作するサービスを提供しています。VR(仮想現実)とは、専用のゴーグルを取り付けた端末を通じて、コンピューター上で再現された3次元の構造物を実物を見るかのように体験できる技術のことで、同社はこのVRを活用してデザイン会議でコミュニケーションを円滑に進行するために役立つサービスを提供しています。どのような技術や仕組みが活用されているのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

Yulio technologiesとは?

画像引用元:Yulio Technologies公式ホームページ

Yulioは2016年、カナダのオンタリオ州トロント市に創業されたスタートアップ企業です。主に建設設計事務所を顧客として、建設設計における内外装イメージをVRで再現し、完成物を実際に見ているかのように確認できるサービスを提供しています。サービスはVRコンテンツの制作から、コンテンツ視聴に必要なVRヘッドセットの貸与、モバイル・Webアプリケーションの提供からなり、VRの活用を一括で支援しています。

同社のサービスの強みは、既存のCADソフトウェア(コンピュータ上で建設設計図を描くソフトウェア)である「SketchUp(スケッチアップ), Rhino(リノ), 3DS Max(スリーディーエス マックス), CETデザイナー, Revit(レビット)」等で作成された建設設計図や現場の360度画像さえあれば、YulioのシステムがVRコンテンツを制作できるという点にあります。

顧客の建設設計事務所は、VRコンテンツ制作のための特別な技術や初期投資、専門知識を必要とせず、またVRコンテンツはYulioのコンピューター上で制作されるため、建設設計事務所のコンピューターの性能などとは関係なく利用できるなど、Yulioのサービスは導入へのハードルが低く抑えるように様々な工夫がなされています。

他社サービスを活用して家具家電の配置も丁寧に表現

画像引用元:Yulio Technologies公式ホームページ

Yulioでは、建物の構造・躯体設計だけでなく意匠設計や内装インテリアのVRコンテンツも制作できます。壁紙やフロア、インテリア、家具家電の再現には、アメリカ合衆国に拠点を置くWayfair(ウェイフェア)という企業が作成した商品のVRモデルが使用されており、本物のような質感のVRモデルを建物のモデル上に配置することでインテリアの再現度を高める工夫がなされています。

半日の工程を10分で完了するクラウドレンダリングサービスを提供

画像引用元:Yulio Technologies公式ホームページ(左はレンダリング前の3Dモデル、右はレンダリング後のVRコンテンツ)

YulioのVRサービスの強みは、VRについての専門技術や専用ハードウェアを必要としないというハードルの低さにあり、その秘訣がクラウドレンダリングにあります。レンダリングとは、コンピュータ言語で書かれたデータに光源や質感などの視覚情報、聴覚情報を組み合わせて画像や映像を制作することですが、個人用コンピューターの性能では3D設計図のレンダリングに半日以上の時間がかかってしまいます。

Yulioのクラウドレンダリングは、Yulioのコンピュータ上でレンダリングを行うサービスで、顧客は既存のCADで生成した設計図や360度画像を送信するだけで1カットあたり10分以内にコンテンツを制作でき、顧客のPC性能に関わらずVRを利用することができるのです。

VR活用でデザイン会議を改善

画像引用元:Yulio Technologies公式ホームページ

Yulioのエクスプロアモードとは、複数台のVRヘッドセットで同時に同じVRコンテンツを視聴できる機能です。デザイン会議において発表者は手元のコンピュータから、顧客はVRヘッドセットを通じてVR上で再現された建物を見ることができ、顧客は自由に視点を移動させて建物の設計を確認することができます。

また、エクスプロアモードでは発表者の端末を操作して、VRで顧客が見ている映像を見せたい映像に誘導することもできます。顧客に注目して欲しい場所をあらかじめ決めておくことで、会議やプレゼンの場面で伝えたいことを正確に伝えることができるのです。

まとめ

いかがでしたか?「百聞は一見に如かず」というように、実物の建物が完成していない建設物の設計イメージのすり合わせには、設計図を口頭で説明するよりも、設計図をVRコンテンツとして再現し、実際に完成物を見るようにして確認した時の方が正確に早く伝えることができるということは容易に想像ができます。

実は建物設計図をコンピュータ上で再現する技術は、設計段階から工事段階までの様々な工程での活用が進んでいます。例えば以前当サイトでご紹介したXYZ RealityのARゴーグルは、建設設計図の3Dモデルを実際の現場に重ね合わせることで、現場での施工誤差の発生を抑制することが期待されています。

今回ご紹介したYulioは、建物の構造や躯体設計だけでなく、意匠やインテリアまでVRで再現でき、さらに建設設計事務所は初期投資や専門知識無しに導入可能であることが最大の特徴でした。同社は今後サービスをどのように展開していくのでしょうか。これからの動向が注目されます。