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仮想空間「メタバース」上でのバーチャルストア展開を支援するByondXR

  • Eコマースにおいて、仮想空間「メタバース」やXR(クロスリアリティ)を活用する事例が増加
  • イスラエルのByondXRはメタバース上でバーチャルストア展開を支援するサービスを提供し、購買客はデジタルショールームやアバターを介した購買体験が可能
  • ByondXRはP&G、Coca-Cola、三菱自動車などの大手グローバルブランドとの取引実績を持つ

はじめに

画像引用元:ByondXR公式ホームページ

Eコマースにおけるショッピング体験の限界の一つは、購買客が商品に触れることができないことです。購買客が商品を購入するかどうかを決定するためには、多くの情報が必要ですが、店頭では、商品に触れたり、服や靴を試着したり、商品を開封したり、試食したりと様々な方法で商品情報を得られる一方で、オンラインではそれができません。

そこでEコマースの売り手は何年も前から、購買客がより豊富な情報を得られるような仕組みを考えてきました。例えば書店はウェブサイトにレビューを掲載したり、購入しなくても本の冒頭を読むことができる機能を実装しています。アパレルの販売店では、バックパックを実際に使って見せたり、靴の履き心地や見た目を紹介する動画を制作しています。

そうした中、Eコマースにおいて仮想空間上でのコミュニケーションを可能にするMetaverse(メタバース)や、現実世界と仮想空間を組み合わせるXR(クロスリアリティ)といった技術を活用する事例が増えています。売り手はMetaverseやXRを用いてより「リアルな」商品体験を提供することで、購買客が得られるショッピング体験をより豊富なものにすることができるのです。

今回ご紹介するByondXR(ビヨンド エックスアール)は、仮想空間上でバーチャルストア展開を支援するサービスを運営しています。一体どのような企業なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

ByondXRとは


ByondXRは2015年にイスラエルのテルアビブにて創業されたスタートアップで、仮想空間上でのバーチャルストア展開を支援するサービスを提供しています。2021年8月にシードラウンドで700万ドル(約10億2000万円)の資金調達を実施し、累計調達額を1450万ドル(21億1000万円)としました。主要株主として、台湾のXR企業HTCとその元CEOでエンジェル投資家のPeter Chu、イスラエルの投資会社Firstime Venture Capital、OurCrowdが名を連ねています。

ByondXRでは、メタバースと呼ばれるインターネット上の仮想世界でバーチャルストア展開を支援するサービスを提供しており、ストア側は商品の3Dモデルをバーチャルストア上で出品することができ、購買客はバーチャルストア内を歩き、棚から商品を選び、試すことができます。ストア側はバーチャルストアを活用して、実店舗のように割引クーポンやサンプル等の商品を購買客に付与するゲームを実装したり、ライブ配信を行うことができます。

バーチャルストアを展開することで、ストア側は実店舗の維持費や管理コストなどの無駄を省くことができるだけでなく、遠隔地の購買客の訪問を可能にします。ByondXRのCEOであるNoam Levavi(ノーム レヴァヴィ)氏は、ByondXRのバーチャルストアでは、競合するオンラインストアよりも顧客平均滞在時間が250%増え、買い物かごに入れる商品数も60%増加、さらにストア側は数ヵ月後にリターゲティングキャンペーンを実施することで平均の2倍の訪問者を呼び込むことができると述べています。

主要顧客は大手グローバルブランドで、これまでにP&G、Coca-Cola、三菱自動車などとの提携実績があります。

ByondXRで展開するバーチャルストア

既存のEコマースにおける購買体験は、実店舗における購買体験とは全く異なるものです。Eコマースでは2次元のWebページ上で静止画や動画、説明文といった限られた方法によって商品情報を伝達しますが、ByondXRのバーチャルストアでは、実店舗の商品の陳列や装飾を仮想空間上のバーチャルストアとして再現することで、商品の質感やブランドを具体的に表現することができるため、購買客のエンゲージメントを高めることができます。

ByondXRのメタバース上でできるのは、バーチャルストアの展開にとどまりません。より購買客に没入感のある購買体験を提供するため、ByondXRは、AR(Argumented Reality、拡張現実)やVRを活用した商品体験、メタバース上にアバター(仮想的に構築した自分自身の「分身」)を作る機能を展開しています。購買客はVR(Virtual Reality、仮想現実)デバイスを使用したり、メタバース上に自身のアバターを作ることで、仮想的にストア内を歩き回ったり、商品を手に取って試用できます。

バーチャルストアは当然24時間無休で展開することができ、Eコマースのように客の購買情報に基づいた商品のリコメンドを行うことができます。また、化粧品や日用品、自動車といった実物商品に限らず、NFTアートや仮想通貨といったデジタルアセットを取り扱うことも可能です。このようにして、ByondXRでは実店舗とEコマースの双方の利点を生かすことができるのです。

ByondXRのメタバースプラットフォーム

画像引用元:ByondXR公式ホームページ

ByondXRのメタバースプラットフォームでは、ストアのメタバース戦略策定から実装までを支援するサービスを提供しています。使用すべきメディアや、実装すべきインタラクション機能、ゲーミフィケーション機能、コンセプトの構築からカスタマージャーニーの設定、KPIの定義など、サービスのローンチに向けた計画設定を支援します。

また、ByondXRは3Dモデルの作成にも対応しています。ストアが売りたい商品の画像等の情報を元に、モバイルとデスクトップの双方に対応した3Dモデルを作成しており、Meta Horizon Worlds(メタ ホライゾン ワールド)、Fortnite Creative(フォートナイト クリエイティブ)、Roblox(ロブロックス)、Sandbox(サンドボックス)、Decentrland(ディセントランド)、といった各種のメタバースプラットフォームと変換可能な形で3Dモデルが作成されます。

さらに、ByondXRはバーチャルストア上の客の購買履歴や行動履歴を分析するダッシュボード機能も提供することで、ストアのマーケティングを支援しています。

公式HPはこちらから↓
https://www.byondxr.com/

まとめ

画像引用元:venturebeat.com “Improving the customer experience with virtual and augmented reality”

いかがでしたか?今回は、メタバース上でバーチャルストア展開を支援するByondXRをご紹介しました。ByondXRは、メタバースにおけるバーチャルストア展開からマーケティング支援を行っており、購買客にバーチャルストア、XRといった様々なメディアを通じてより豊かな購買体験を提供しています。メタバースを活用したEコマースに注目が集まる中、ByondXRは今後どのように展開していくのでしょうか。今後の動向が注目されます。

建設分野からみたときに、リアルの店舗設計領域においてメタバースショップとの差別化などが今後求められてくるかもしれません。