建設現場は事故のリスクを常に孕んでいます。実際にアメリカの建設・石油・ガス・鉱業などの業界では、2019年に5,333人の労働者が仕事で亡くなっており、平均すると毎日約15人が死亡しているという事になります。そして、15秒に1人が負傷しているという現状も。このような高い事故発生率は作業員の健康や安全を脅かすだけではなく、生産性の低下にも繋がります。
こうした建設現場における安全管理に関して、近年ではテクノロジーを用いたソリューションが注目されています。今回は、ウェアラブルやIoTの技術を用いて建設現場のリスクマネジメントに関する製品を展開しているGuardhat Technologies(ガードハット テクノロジーズ)をご紹介します。
*参考:アメリカ労働省
Guardhat Technologiesは2014年にアメリカのデトロイトにて創業された企業です。同社はウェアラブル技術を搭載したスマートヘルメットと独自のソフトウェアによって、現場で発生する事故を検知、警告、防止するサービスをアメリカ国内のみならず、インドやフランスなど多くの地域で展開しています。また、同社は建設業界のみではなく鉱業・金属・石油・ガス・林業など、安全管理を必要とする多くの産業向けに幅広くサービスを提供しています。
CEOであるSaikataDey(サイカタデイ)氏は、世界的鉄鋼企業であるSeverstalInternationalの最高経営責任者を務めた経験を持っています。当時、同氏が工場視察を行なった際に、一酸化炭素警報が鳴ったにも関わらず、作業員が原因の究明をせず警報の電源を切った事に問題を感じるという体験をしました。そうした現場の安全管理への危機感をきっかけに彼は同社を設立。
Guardhat Technologiesの取り組みは高い技術性や安全性が評価され数々の賞にも輝いており、2019年に大手コンサルティング会社Frost&Sullivanの2019 North America Company of the YearAwardを受賞。そして、2020年にはTIME誌のTIME 100Greatest Inventionsにも選出されています。また、同社はConnect Worker、Real Time Location Systems、Wearable Solutionsの分野で8つの特許を取得しています。
そうした活躍が注目され、同社は2021年1月に行われたシリーズBのラウンドにおいて、General Catalyst(ゼネラルカタリスト)やAnnox Capital(アノックスキャピタル)からの資金調達に成功しており、現在の調達額合計は4000万ドル(約43億5千万円)を超えています。
そんなGuardhat Technologiesが提供するサービスとは一体どのようなものなのか、早速見ていきましょう!
Guardhatが展開するサービスにおいて要となるのが、最先端のウェアラブル技術が搭載されたスマートヘルメットHC1Communicator。同製品には高性能なセンサーやカメラ、マイクなどが搭載されており、独自のIoTプラットフォーム(KYRA、SCC、Guardhat Analytics)と併用する事によって、作業員や現場の状況の把握が可能となり、事故を未然に防止することができます。
それでは、具体的にはどのようにして事故防止に役立つのでしょうか。同製品の特徴を3つ、詳しく見ていきましょう。
Guardhatが展開するスマートヘルメット最大の特徴は、RTLS(位置測位システム)を活用した、リアルタイム位置追跡機能にあります。同製品は内蔵されたセンサーによりRTLS方式の高精度な位置追跡が可能となっており、管理者は作業員の正確な位置や動きをデスクトップPCやタブレットから一目で確認し、それらの情報を元にした安全管理を行えます。例えば、現場にて火災が発生した際には、それぞれの作業員に個別の避難ルートの指示が可能。急病や事故で倒れてしまい動かない作業員がいる場合には、早期発見する事が出来ます。
加えて、ソフトウェア上で立ち入り禁止区域の指定を行え、作業員が区域に侵入した際に、ヘルメットから警告のアラームが鳴るよう設定が可能です。また、ソフトウェア上に保存された行動データから勤務時間の管理や、作業行程の見直しをする事も出来るので、生産性の向上にも大きく貢献します。
Guardhatが展開するスマートヘルメット2つ目の特徴は、搭載された高性能なセンサー機能にあります。これがあることによって、温度・湿度・圧力・騒音レベル・帽子の着用有無・転倒の検出・物体の接近を感知する事が可能。加えて、ガス検知器や放射線検知器などが感知した外部からのデータの共有も行えます。
そして、感知されたデータは自動で処理が行われ、安全基準値をオーバーする数値(温度・ガス・放射能など)や車両等の接近が確認された場合には、即座に作業者と管理者に警告として通知。また、収集されたデータを元に、それぞれの建設サイトにおける、事故発生の危険性が高い箇所(ホットスポット)などを示したレポートを生成することも出来ます。
これらの機能により、熱中症や車両との接触、転倒事故など多くの事故リスクを大幅に下げられると同時に、事故が発生した場合には早急な対応が可能になりました。
3つ目は、優れた情報共有機能。同製品にはカメラとマイクが搭載されており、常に現場の情報を視覚的に共有する事が可能。この機能により、現場において問題が発生した際には、管理者と視覚的に問題を共有しながら遠隔で解決を目指す事が出来ます。加えて、画像や動画のキャプションを行うことが出来るので、建設現場におけるデータ収集や資料作成にも役立ちます。
また、事故や急病の際には、SOSアラートという機能を使用する事で、付近の作業員に即座に救助を求める事が出来ます。
今回は独自のウェアラブル技術により、建設現場の安全性や生産性の向上を目指す企業Guardhat Technologiesご紹介しました。今後は同社が展開するウェアラブル製品によって、建設現場における事故件数が大幅に減少する事が期待されます。
また、同社が展開するサービスは、仕事の遠隔化が必要とされるコロナ禍で需要が急増しており、今後の展開が注目されています。