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創業9年で評価額1600億円!住宅ローン業務のデジタル化を支援するSnapdocs

  • 住宅ローン業界では、契約プロセスのデジタル化が急速に進んでいる
  • 住宅ローンの契約プロセスには、公証人やエスクロー(仲介人)等の関係者が関わる必要があり、単に電子契約サービスを導入するだけではデジタル化はできない
  • Snapdocsは住宅ローン契約に関わる全ての関係者やサービスをつなげ、契約プロセス全体をオンラインで完了できるデジタルプラットフォームを提供している

はじめに

画像引用元:Snapdocs公式ホームページ

住宅ローン業界では、契約プロセスのデジタル化が急速に進んでいます。借り手の81%がデジタルな体験を好むようになっており(注1)、金融機関は住宅ローン契約をデジタル化することで他社との競争力を高め、また業務を効率化することで契約までにかかるコストを抑制しています。しかし、契約プロセスの自動化に取り組んでいる金融機関は、デジタルで行うことができる範囲とできない範囲を明確に切り分けなければなりません。さらに融資までの一部の工程をデジタル化するサービスが数多く登場する中で、それらをシームレスにつなげることで、より効率的なデジタル化が目指されています。

今回ご紹介するSnapdocs(スナップドックス)は住宅ローンに関わるすべての関係者やサービスをつなげ、契約プロセス全体をオンラインで完了することができるデジタルプラットフォームを提供しています。一体どのような企業なのでしょうか?詳しく見ていきましょう。

(注1)Snapdocs “Why Lenders are Digitizing Mortgage Closings Today

住宅ローンのデジタルプラットフォームを提供するSnapdocs


Snapdocsは2009年にアメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコにて創業された企業です。住宅ローン契約プロセスのデジタル化を実現するというビジョンを掲げ、お金の貸し手である金融機関や決済サービス、契約を進めるために必要なエスクロー(安全な取引を進めるために貸し手と借り手を仲介する第三者)や、ノータリー(公証人)などのステークホルダーをデジタルプラットフォーム上でつなぎ、電子契約サービスとシームレスに接続することにより住宅ローン手続きのすべてをオンライン上で行うことができるサービスを提供しています。

Snapdocsは2021年5月にシリーズDで1億5000万ドル(約164億円)の資金調達を実施しました。今回の資金調達における主要投資家はユニコーン企業への積極的な投資で知られるTiger Global(タイガー グローバル)、世界最大の運用資産額で知られるSequoia(セコイア)、その他5社が参加しており、資金調達総額は2億6,000万ドル(約284億円)、企業評価額は15億ドル(1600億円)を超えています。

業績についても著しい成長が見られ、2020年度は製品、エンジニアリング、カスタマーサクセス部門のスタッフがそれぞれ100%以上増加しています。2021年度には数百万件の住宅ローンの締結にSnapdocsのサービスが関わると見込まれており、これは米国の全不動産取引の約20%、取引額総額は600億ドル(6兆5500億円)以上という計算になります。

金融機関の住宅ローン業務のデジタル化を支援

画像引用元:Snapdocs公式ホームページ

Snapdocsの第一の顧客は「金融機関」です。多くの金融機関は、社内のIT部門にリソースを確保することが難しいため、コストを抑えて統合することができるシステムが必要とされます。Snapdocsは大手の金融機関に同社のサービスを提供した経験から、低コストで短期間のシステム統合を実現することができます。

例えば全米で住宅ローンサービスを展開するWaterstone Mortgage(ウォーターストーン モーゲージ)は2020年度の年間売上高が前年に比べて40%も増加するという高成長を記録しました。そこでSnapdocsのデジタルプラットフォームを導入することを決定し、70%の契約業務を電子契約で、30%の業務を従来の契約方式で行うハイブリット方式を採用しました。その結果、契約担当者数を増やすことなく従来より40%多くの住宅ローン契約を締結することができるようになり、また電子契約にかかるスピードは従来の契約方式に比べて60%早く、また80%も手続き上のミスを抑制できることが明らかになったといいます。

住宅ローン契約の関係者をオンラインでつなぐ

画像引用元:Snapdocs公式ホームページ

また、米国の住宅ローン契約のプロセスには公証人やエスクロー(仲介人)が契約に関わることが法律上必要となります。彼らは不動産やお金が動く前に、売却の条件がすべて満たされていることを確認し、取引が適切に行われることを保証する役割を果たしています。Snapdocsでは、住宅ローンを検討する消費者がサービス提供可能な事業者を一覧で確認することができ、オンライン上で手続きを進行させることができます。関係者間のワークフロー、面会や不動産査定の日程調整、ステータスの更新、通知などについても、それぞれの関係者が各自で管理することができます。

画像引用元:Snapdocs公式ホームページ

Snapdocsは住宅ローン契約の関係者のマッチングだけでなく、必要な書類の電子化を通じて契約業務のデジタル化をさらに支援しています。Snapdocs のeNoteは、住宅ローンの関係者が必要な書類を電子ファイル化し、オンライン上で署名をするといった作業を可能にするサービスです。電子化されたファイルはオンライン上で管理され、他の関係者と情報を共有しながら契約手続きを進めていくことができるため、契約に至るまでのコストを抑制し迅速に手続きを完了させることができるのです。

まとめ

いかがでしたか?今回は住宅ローン業務のデジタル化を支援するSnapdocsをご紹介しました。Snapdocsのデジタルプラットフォームは、住宅ローンの契約の関係者である公証人やエスクロー、電子契約サービスなどの様々な関係者やサービスを接続し、住宅ローンの全体をオンライン化することを目指していました。

またSnapdocsを活用していた金融機関は、Covid-19の流行下において対面式の契約を実施することができなくなりましたが、その代わりにオンラインで契約を行うことができたため、パンデミックによる影響が少なかったといいます。同社は今後どのように展開していくのでしょうか。動向が注目されます。