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ITのチカラで労災根絶をサポート!Safesiteが目指す安全な現場管理

  • 安全管理基準が整備されてもなお、管理の不徹底によりアメリカでは毎年5000人の方が労働災害で命を落としている。
  • Safesiteは安全管理基準の適切な運用をサポートするサービスである。
  • 安全管理への取り組みがデータ化されることで、保険業界に大きなビジネスチャンスの可能性。

はじめに

労働者の健康と安全を守ることは非常に重要です。どのような企業も雇用者の「安全第一」を掲げていることは間違いありません。アメリカでは”Occupational Safety and Health Administration”(労働安全衛生局、以下OSHA)という政府機関が労働環境の安全管理基準を定めており、企業はこの基準に従って安全管理を行うことが義務付けられています。しかしながら、アメリカで2017年に労働災害で亡くなった方は5000人以上にものぼり、日本でも約1000人の方が毎年命を落としています。安全管理基準を設置したことにより年々死亡者数は減少していますが、それでも労働災害を根絶するには至っていないのです。

今回ご紹介するSafesite(セーフサイト)は、不注意や慢心によって引き起こされる安全管理の不徹底を、チーム全体で情報を可視化することによって改善し、安全管理基準の適切な運用をサポートしてくれるSaaS(Software as a Service)です。それでは気になるその実力を見ていきましょう。

画像引用元:Safesite公式ホームページ

安全な現場管理を目指すSafesiteとは?

Safesiteを運営するSafesite Solutions, Inc.(セーフサイト・ソリューションズ)は、2012年にアメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコで創業されました。労働災害により知人を失くすという創業者自身の体験がサービス開発の原動力となり、テクノロジーを活用し安全な労働環境を構築することを目指してSafesiteが開発されました。現在までに合計22.5万ドル(約2500万円)の資金調達を実施しています。

Safesiteは、検査項目に沿ったチェックリストの運用、インシデントレポートの作成と共有、安全管理用機材の管理、ハザード管理など、現場作業者や監督者が安全管理を適切かつ効率的な運用を支援します。現在までにiOS, Androidのモバイルアプリ、およびWebサービスが提供されており、約4000の企業に導入されています。

参照:Safesite公式ホームページ(https://safesitehq.com/)

建設現場で事故が発生してしまう理由

Safesiteの共同創業者・Dave Paoletta氏は建設現場で事故が発生してしまう理由について以下のように述べています。

急ぎすぎ
納期や生産割当ての厳守を求められる圧力が存在し、安全管理項目を省略したり適当にこなして時間短縮を試みる結果、安全管理の不徹底が起こりやすい。

能力の欠如
適切な訓練を受けていない者や監督が配置されている場合、安全管理の不徹底が起こりやすい。

一度だけという甘え
安全でない行為も一度だけという甘えによっても、安全管理の不徹底が起こりやすい。

多すぎるルール
実態と乖離したルールや非合理的なルールが労働者に課されている場合、安全管理の不徹底が起こりやすい。

「チームのため」という同調圧力
同僚の危険行為を報告することがチームの信頼を裏切ることにつながると考えてしまう同調圧力が存在する場合、報告が共有されないなどの安全管理の不徹底が起こりやすい。

上記のように、管理基準が存在していてもその管理が不徹底になるような場合、事故が発生してしまう可能性が高まります。それではOSHAの定める安全管理基準とは一体どのようなものでしょうか?

OSHAの定める安全管理基準とは?

OSHA(Occupational Safety and Health Administration, 労働安全衛生局)は、アメリカで1970年に法制化された労働安全衛生法に基づき設置された政府機関であり、この法により、規制・司法・罰金・召喚などの権限を与えられています。
OSHAが作成する安全管理基準は建設業界から医療、一般事務にいたるまで全ての労働者の健康と安全を包括的に保護することを目的としています。概要を確認していきましょう。

安全管理者の設置
建設現場での安全管理として、個々の事業者が作業時の安全管理者を設置することが義務付けられています。

機械・設備の適切な設置と運用
建設用重機・設備の運用面では、設置環境、重機・設備の使用時の確認事項、連絡方法の規定や人員の確保など、項目が細かく設置されています。

作業ごとの適切な安全管理の運用
高所作業に対するハーネスの着用義務付け・足場や手すりの設置・組み立て方・ヘルメット着用、貨物吊上作業に対するヘルメット着用、適切なライセンス所持者の配置・吊荷の内容物への理解など、各作業ごとに項目が設置されています。

事故発生時の報告義務
OSHAは労働災害が発生した際に、自己調査を行う第三機関としての機能を果たします。先述した安全管理項目が適切に運用されていたかを確認し、もし基準を満たしていない場合は罰金による懲罰を下す権限を持っています。

これらの安全管理項目は作業ごとにチェックリストが存在します。OSHAはこれらチェックリストを適切に運用することを通じて、企業が労働者の安全管理を行うことを求めているのです。

Safesiteの機能

Safesiteのアプリケーションは、上記のチェックリストの適切な運用を支援します。
チェックリストは作業員一人一人が確認し検査を行う際に利用するチェックリストと、ミーティングの際に利用するチェックリスト、そして機械や設備の点検作業に利用されるチェックリストの3種類に分けられます。

画像元:Safesiteアプリよりスクリーンショット

画像元:Safesiteアプリよりスクリーンショット

テンプレートを利用して、チェックリストを端末に読み込みます。

画像元:Safesiteアプリよりスクリーンショット

上記のように項目ごとにチェックリストを確認していくことで検査が完了し、管理者は自分の端末から完了報告を受け取ることができます。

また、作業者自身から危険箇所の報告や災害のレポートを作成することができます。これらのチェックリストやレポートの作成雛形も、OSHAによって作成された基準に従っています。

こうして作業員自身が端末で安全管理を行うことで、適切かつ効率的に安全管理基準の運用を行うことができると同時に、管理状況が可視化されるのです。

保険業界への影響も?

安全管理状況がデータ化し分析が容易になると、1兆ドルもの市場規模を誇る保険業界の構造変化が起きる可能性があると指摘されています。

保険業界のエージェントの平均年齢は59歳でFaxなど生産性の低いツールが今だに利用されているなど、その業界は長らく巨大企業に独占され、イノベーションが進行していませんでした。

しかし、Safesiteのようなサービスの登場により、安全管理状況はよりデータとして可視化されることになり、そのデータを十分に活用する能力を持った新興保険企業が事業開発から販売までの全ての業務を改善できる可能性があり、これらが業界で台頭することは十分考えられます。

投資家たちがSafesiteのようなサービスの登場の先に見据えるのは、このような業界の破壊的革新なのです。

まとめ

Safesiteの創業者が目指す安全管理のあり方が今後労働災害の抑制にどこまで貢献できるのか、また同時に、同様のサービスがもたらす建設業界の働き方のデータによる可視化が周辺業界にどのような構造変化をもたらすのか、今後の展望が期待されます。