- 不動産×テクノロジー(プロップテック)の市場規模は、2022年から2023年までに年平均にして16.2%で成長することが予測されている
- シリコンバレー発のBelong Home, Inc.(ビロングホーム)は、不動産管理プラットフォームを展開している
- Belongは、不動産の検査と修繕により物件の質を担保し、所有者には家賃収入を保証し、入居者には適正家賃を提示する
はじめに
不動産(Property)とテクノロジー(Technology)を掛け合わせたProptechと呼ばれる領域で、新たなサービスが続々と登場しています。これらは不動産にかんする事業者や個人が、不動産の売買、貸借、調査、マーケティング、管理の方法を最適化するためのツールを提供するものです。全世界における市場規模は、2022年時点で302億ドル(約4.5兆円)であったところ、2032年までに1330億ドル(約19兆8000億円)と、年平均成長率にして16.2%の高水準で成長することが予測されています。
その中でも今回ご紹介するのは、賃貸住宅に特化して住宅修繕から仲介、管理、月々の決済までを一貫してサポートする、不動産管理プラットフォームのBelong Home, Inc.(ビロングホーム、以下Belong)です。一体どのような企業なのでしょうか。詳しくみていきましょう。
不動産管理プラットフォームを展開するBelongとは?
Belongは2019年にアメリカ合衆国カリフォルニア州サンマテオにて創業された、不動産管理プラットフォームを展開する企業です。2022年5月にシリーズCにて、不動産×テクノロジー関連投資を手がけるFifth Walを筆頭株主に、5000万ドル(約75億8000万円)の資金調達を実施。これと合わせて同日付けで3000万ドル(約45億5000万円)のデッドファイナンスを実施し、累計調達額を1億3800万ドル(約206億6000万円)としました。主要投資元はFifth Walのほか、ボストンを拠点とするグローバルベンチャーキャピタルのBattery Ventures、GGV Capital、シリコンバレーの名物VCのAndreessen Horowitzが名を連ねており、個人投資家としてElliot Cohen、Sarah Friar、Sam Corcos、Dave Vasenが参画しています。
Belongが提供するのは、長期で住宅を借りたい入居者と住宅を貸したい所有者をマッチングさせるプラットフォームです。現在の利用可能地域は、ベイエリア、南カリフォルニア、マイアミ、シアトルで、現在の利用者は住宅所有者側が2000人強、住宅貸借人4000人強となっています。建物は戸建てと多世帯住宅のいずれも扱われていますが、いずれも個人所有の物件です。このプラットフォームには決済インフラが備わっており、Belongは毎月の家賃の8%を決済手数料として、また入居者を斡旋するたびに家賃の6%を受け取っています。
住宅の所有者は以上の手数料を支払うことで、建物の修繕から物件情報の掲載、住宅貸出後の管理の全てをBelongに委託することができます。さらに、家主に投資を管理するための財務ツールや、貸借人不在の場合の家賃保証なども実施しています。
物件運用をサポートするBelongのプラットフォーム
Belongは地域情報と価格設定アルゴリズムに基づいて、地域や季節、リアルタイムの需要にあった適切な家賃価格を設定します。Belongが所有者向けに提供する2種類のプラン、Belong PRO(ビロング プロ)、そしてBelong X(ビロング エックス)のいずれにおいても、入居者の有無に関係なく、家賃の支払が保証されます。
Belong PROの使い方は以下の通りです。所有者はまず、所有する住宅のキャッシュフローと財務目標を設定します。残っている住宅ローンや修繕費、管理費などの継続的な支出を入力することで、Belongが資産分析を行います。続いてBelongは、所有者の自宅へと出向いて、ホームインスペクション(住宅診断)を行い、家の機能性と安全性を検査し、修理やメンテナンスが必要な場合は、10,000を超える業者ネットワークから専門家を派遣します。賃貸期間中に費用を分散することも可能で、早くにキャッシュフローをプラスに変えることができます。
以上の過程を終えたら、Belongは住宅を賃貸情報サイトへ掲載します。Belongの物件情報はZillow、Zumper、Trulia、apartments.com、Craigslist、PadMapper、Hotpads、Rentableなどの人気不動産サイトと統合しており、1件のホームリスティングに対して平均29件の応募があります。その後BelongPROの担当者が入居申込を処理し、賃貸契約が締結されます。Belongの入居者の3分の2以上が1年間の賃貸契約を更新しており、所有者には安定した収入が保証され、家の状態を維持することができるのです。
以上のサービスは、Belongが提供するモバイルアプリを通じて申し込みや確認をすることができます。
資産価値の査定と修繕により、物件の質を担保
Belongの大きな特長のひとつは、質の高い物件のみを選択して取り扱うことにあります。所有者は、Belongに接触する際に広範な検査プロセスを受ける必要があり、住宅に潜在的な問題があれば、すべての問題が修正されるまで、入居が決まることはありません。
一方でBelongは入居者選定や契約締結までを迅速に行います。入居希望者や信用の検査や面接などを受ける必要がありますが、一旦そのような手続きを経ればすぐに契約が承認され、入居日が決定されます。さらに、Belongは最低1年間の長期賃借を入居者と所有者の双方に条件として課しています。すべての住宅所有者は、少なくとも12ヶ月間は家を貸し出すことを約束しなければならならず、3分の2の入居者はこの期間を更新することを選択しているといいます。
まとめ
いかがでしたか?今回は賃貸住宅に特化して住宅修繕から仲介、管理、月々の決済までを一貫してサポートする、不動産管理プラットフォームのBelongをご紹介しました。Belongは地域の賃貸住宅市場のインサイトを元に、住宅所有者と賃貸入居希望者をマッチングさせるとともに、賃借契約後の住宅所有者の物件の運用をサポートするプラットフォームを展開していました。現在の利用可能地域は北米の一部地域に留まりますが、今後は調達資金を元に事業の拡大を進めていく方針です。今後の展開が注目されます。