LLM(大規模言語モデル)活用で建設安全管理を自動化するviAct

画像引用元:viAct公式ホームページ
海外事例
  • 建設安全管理はプロジェクトの効率化に寄与する反面、時間や労力がかかる
  • viActは監視カメラの映像分析を主軸にAIによる建設現場管理の自動化ソリューションを展開する
  • viActはLLM(大規模言語モデル)を建設安全管理の自動化やプロセスの効率化に活用している

はじめに

画像引用元:viAct公式ホームページ

建設業界では、安全管理プログラムを導入することが、建設プロセスの効率化につながるということが知られています。例えばマクグロウヒルグループの調査によるとプロジェクトスケジュールを1週間以上短縮した企業が77%、予算を5%以上削減した企業が75%、ROIが5%以上向上した企業が76%に達しています(注)。

一方で建設安全管理は時間や労力を要します。たとえば現場巡回と検査、安全チェックリストを用いた装備や設備の確認、過去の事故データや経験を基にしたリスクアセスメントなどがその内容となっています。加えて、事故や非遵守事項を記録し、必要に応じて関係者へ報告する必要もあります。また、作業員への安全教育や訓練を通じた安全手順の標準化や徹底など、現場に大きな負担のかかる工程が数多く存在します。

そこで今回ご紹介するviAct(ヴァイアクト)は、このように多岐にわたる建設安全管理をAIを用いて効率化するソリューションを展開しています。一体どのような企業なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

注)McGraw Hill Construction “Safety Management in the Construction Industry”

viActとは?

viActは2016年に香港で設立された、建設業界向けのAIを活用した自動監視ソリューションを提供する企業です。現在はアジアとヨーロッパの顧客を対象に事業を展開しています。
主力製品はAIとIoTを組み合わせた建設現場の自動監視システムです。このシステムは、クラウドベースでリアルタイムに稼働し、建設現場の安全管理、効率化、コンプライアンス遵守に貢献します。

viActは2021年にシードラウンドにて200万ドル(約3億950万円)を調達しました。筆頭株主に香港のVectr Venturesが参画しているほか、同じく香港のHKAI LabAlibaba Entrepreneurs FundParticleX、アメリカのディープテック関連VCのSOSV、オーストラリアのArtesianなどが参画しています。

viActは、建設現場の生産性向上と安全性向上を支援する製品群を展開。主なプロダクトは次の4つ、viHUB(ヴィハブ)、viMOV(ヴィモヴ)、viMAC(ヴィマック)、viBOT(ヴィボット)です。

  • viHUB:クラウドベースの建設現場監視システムで、監視カメラの映像をクラウド上で分析し、建設現場の24時間365日のノンストップ監視を可能にします。プロジェクトの進捗をリアルタイムで追跡、データの自動保存、予測分析を実現し、効率的なワークフローを構築します。
  • viMOV:閉所作業の安全を強化する、スタンドアローン型のモバイルAIデバイスです。最長50時間の長時間稼働バッテリーと携帯性を特徴とし、外部電源やインターネット接続なしで建設現場の監視プログラムを導入することが可能です。
  • viMAC:建設機械の運転エリアをAIでモニタリングし、衝突や危険エリア侵入を検知、現場での迅速なアラートと詳細な記録で安全管理を支援します。
  • viBOT:完全自律型ロボットで、建設現場を自律走行して検査を行うものです。オフライン環境でも自動で遠隔検査が可能で、効率的な現場管理を可能にします。

viActは2024年初頭にUAE(アラブ主張国連邦)にて開催されたアクセラレーター・プログラム、モハメッド・ビン・ラシッド・イノベーション・ファンド(MBRIF)に参加しました。同社はこれを足掛かりにドバイの政府部門と連携を強化し、建設、石油・ガス、鉱業などの高リスクのプロジェクトにおける市場開拓を進めています。また現在、シリーズA資金調達ラウンドに向けた準備を進めています。

画像処理技術による建設安全管理の自動化

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viActにおける安全管理は、プロセスハザード分析(PHA)という考え方に基づいています。具体的には、画像分析に基づいてリスク要因を検知し警告を発出するというものです。viActの製品はAIを活用した映像解析機能を備えています。この技術は、建設、製造、石油・ガス、鉱業といった高リスク業界で活用され、作業員の転落、機械故障、化学薬品や電気設備の危険性、環境リスクなどをリアルタイムでモニタリングします。

検出されたリスクや非遵守行動は即座に安全チームにアラートとして送信され、事故を未然に防ぎます。また、過去データと現場のセンサーデータを基にした予測分析により、作業員の動作分析や危険領域への不正侵入を特定し、迅速な対応を可能にします。このシステムは、規制遵守にも対応し、作業員の長期的な健康維持や作業効率の向上を支援します。

LLM(大規模言語モデル)を建設安全管理に活用

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viActは、LLM(大規模言語モデル)を建設現場の安全管理に活用しています。LLMとはChatGPT(チャットジーピーティー)などで注目を集めている、自然言語を処理できるAIプログラムのこと。例えばLLMを組み込んだチャットボットを通じて、自然言語による直感的なコミュニケーションを可能にし、作業員や管理者がシステムと簡単に対話できる環境を提供します。作業員が安全に関する指示や手順をリアルタイムで問い合わせる際、LLMが的確かつ迅速な回答を提供し、効率的な対応を実現するのです。

また、LLMを通じて収集された安全データやインシデント情報が、viHUBプラットフォーム上で可視化され、全関係者が共有できるため、安全状況の分析や改善に役立てられています。さらに、LLMはプロセスの自動化にも活用されています。例えば、PPE(個人用保護具)のチェックリスト作成や報告書作成を効率化します。これにより、現場での負担が軽減され、手続きの正確性も向上します。加えて、LLMが安全管理者が過去のデータや傾向を基にリスクを予測し、対策を講じる際の意思決定を支援します。

まとめ

画像引用元:viAct公式ホームページ

いかがでしたか?今回は建設安全管理の自動化ソリューションを展開する香港のviActをご紹介しました。viActは高度な映像分析技術やLLM(大規模言語モデル)を活用し、建設現場における危険の検知や、建設資材やプロセスの状況把握に役立てています。同社は今後どのように展開していくのでしょうか。今後の動向に注目です。