現場を仮想空間に再現!?シームレスな情報管理を可能にするCogniteとは

海外事例
  • デジタル空間にリアルタイムの現場環境を再現する技術、デジタルツインが大きな注目を集めている 
  • ノルウェー大手石油会社の子会社として設立されたCongniteは、デジタルツイン技術を活用して重厚長大産業のデータ化に取り組んでいる 
  • Cogniteは2021年5月に1億5000万ドルの資金調達に成功し、ユニコーン企業の仲間入りを果たしている

はじめに

画像引用元:https://www.cognite.com/ja-jp/

近年、重工業(石油やガス、インフラ事業)を中心に「デジタルツイン」という技術が注目を集めています。デジタルツインとはIoTやAI、ARなどの最新技術を用いて、仮想空間にリアルタイムの現場環境を再現する技術です。デジタルツインを活用することで、遠隔地からでも効率的に現場のモニタリングを行える他、仮想空間上でシミュレーションや分析を行い、現場で起こり得る故障や変化を予測​​する事が可能になります。

そして、革新的な技術であるとも言えるデジタルツインには、世界的に大きな期待が寄せられており、米Deloitte社の調査によると、世界市場は年率38%で成長。2023年には160億ドル(約1兆8500億円)に達すると予想されています。

今回ご紹介するCognite(コグナイト)は独自のデータプラットフォームを重工業向けに展開しているノルウェーの企業です。

デジタルツインソフトウェアのCogniteとは?

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Cogniteは2016年にノルウェーの大手石油会社であるAKER/AKER BPが自社のIoTプラットフォームを開発するために子会社として設立。同社は重工業のデジタルトランスフォーメーションを実現するプラットフォーム’Cognite Data Fusion™ ‘ をノルウェーやアメリカ、日本にて展開しています。

共同創業者兼CEOのJohn Markus Lervik(ジョン・マーカス・ラービック )氏は、エンタープライズ検索プラットフォームベンダーのFast Search & Transfer(2008年マイクロソフト社が買収)を創業した経験を持つ人物。Cogniteの展開するプラットフォームには、このFast Search & Transfer社の情報やデータを集めて関連づけし整理して表示する技術がベースとして活用されています。

2019年11月には日本法人となるCognite株式会社を設立。三菱商事や住友商事など既に多くの企業にサービスを提供しています。また、同社製品Cognite Data Fusionは2019年に「Google Cloud Technology Partner of the Year for Manufacturing」を受賞しています。同賞はGoogle社がGoogle Cloudのテクノロジーを活用している企業の中から、重工業に最高のソリューションを提供しているパートナーを1社表彰するもので、期待値の高さが窺い知れます。

また、2022年2月にはサウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコが、Cognite社株7.4%を1億1,300万ドル(約130億1,00万)で取得。Cogniteは現在、デジタル化パートナーとしてサウジアラムコと協力しており、同社製品Cognite Data Fusionを通じて、サウジアラムコの業務のデジタル化を支援しています。

そして、資金調達では2021年5月に世界的な投資機関であるTCVなどから1億5000万ドル(約173億8500万円 )の資金調達に成功しており、ユニコーン企業の仲間入りを果たしています。そして、2022年2月には1億1300万ドル(約150億6700万円)の資金調達に成功。同社のこれまでの総資金調達額は3億3820万ドル(約391億9,700万円)に達しています。

それでは、こうして注目を集めるCogniteが展開するサービスとは一体どのようなものなのか、詳しく見ていきましょう。

産業のデータ化を支援するCognite Data Fusion™

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従来の重工業の現場では、それぞれの部門毎に異なるフォーマットや管理システムで情報が管理されてるケースが多く、全体のデータを一括管理する事が困難でした。そうした中、Cogniteが展開するプラットフォームCognite Data Fusion™では、それらの分断された膨大なデータを集約・統合し、紐付ける事を実現しました。

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現場のデータの集約には、既存のCADデータなどに加え、現地の作業員、ドローンや無人の自走ロボットなどが撮影した写真・映像データなどを活用。そして、集約されたデータはプラットフォーム上の3Dモデルに落とし込まれます。利用者は3Dモデルから設備や機器をクリック又は検索するだけで、それらに関する情報だけではなく、接続されている別機器や配管図、稼働状況など、関連する全ての情報を閲覧する事が可能です。

Cognite Maintain

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同社が展開する追加アプリケーションCognite Maintainは効率的に現場の状況を把握しスケジュール管理するためのアプリケーションであり、AIによる学習機能が応用されています。同アプリケーションを利用する事によって、未達成の作業指示、リスクの予測、資材の物量管理、設備の稼働率などが自動でコンテキスト化されます。つまり、全体の状況が一目でわかるようにまとめられるという事です。

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・進捗状況の確認

Cognite Maintainでは、各セクション毎の進捗確認や、今後行われる予定の作業を確認する事が可能。それぞれのタスクは色分けされており、一目でタスクの優先度や指示書と照らし合わせた際に予測される問題の数がわかるようになっています。例えば、緑色のハートは指示書と照らし合わせた際に、問題がないことを指します。

また、このタスクメニューから必要資材のステータスなども確認が可能です。

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障害を予測

さらに、センサーから得られる情報などを元に異常を検知した場合は、自動でアラート。予測されたリスクは重要度の高いものから順に表示されます。この機能により、早期の故障発見や的確な指示計画書の作成が可能になります。

CogniteRemote

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CogniteRemoteは管理者が遠隔から現場を管理するために設計されたアプリケーションです。同アプリケーションでは、Cognite Data Fusion™で集約されたデータを元に、遠隔地からの現場の状況確認、修理すべき箇所の指示や作業計画の作成が可能。遠隔からの管理というと、正確性に欠けるのではないかと思ってしまいますが、前述した3Dモデルを元に管理が行われるので、現場に実際に赴いての管理よりも効率的に管理を行う事が出来ます。

また、遠隔地からの情報収集を可能にするために、ドローンや撮影ロボットの遠隔からの操作も行えます。

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Cognite InFieldは追加で利用可能なアプリケーションで、同アプリケーションをインストールしたスマートフォンで設備や機器をスキャンすると、デバイス上で関連する全ての情報を閲覧する事が出来ます。そして、勿論の事ながら3Dモデルの表示も可能なので、広大な現場においても、どの場所にどの機器があるのかを3Dモデル上で確認することが可能です。

また、タスクの管理やレポートの送信も行う事ができるので、管理者とリアルタイムでの情報共有が可能。そして、管理者は作業員がどの情報を閲覧しているのか、どの作業を行なっているのかまでをプラットフォームを通して確認が行えます

まとめ

今回は独自のデータプラットフォームを展開するCogniteをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?同社が展開するプラットフォームサービスには、今回ご紹介させていただいた機能以外にも、様々な機能が備わっています。そして、同社の技術も含め、デジタルツイン技術は急速な成長を遂げており、今後多くの現場で活躍される事が期待されています。