アバターがあなたに代わって活動する! 人間拡張サービスのGENCHI

画像引用元:GENCHI公式ホームページ
国内市場
  • 「人間拡張」とは物理的な身体の限界をテクノロジーで補い、人間の能力や生産性を高めていくことを指す
  • 人間拡張市場は2022年時点で1430億ドル。2030年までに6459億ドルへと年平均21.1%で成長が予測される
  • 兵庫発の人間拡張サービスGENCHI(ゲンチ)は、遠隔地にいながら現地のアバターと感覚を共有し、アバターとともに目的に沿った活動ができる

はじめに

画像引用元:Unsplash

「人間拡張」とは物理的な身体の限界をテクノロジーで補い、人間の能力や生産性を高めていくことを指します。例えばロボットアームは人間の身体に装着し、重いものを持ち上げる時に身体運動をサポートするといった用途が考えられます。またZOOMなどのツールも、物理的な身体では不可能なコミュニケーションを、ネットワークと映像、音声技術を用いて可能にしているという意味で、人間拡張の一種であるといえるでしょう。人間拡張市場は2022年時点で1430億ドル。2030年までに6459億ドルへと年平均21.1%で成長が予測されています(注)。

今回ご紹介するのは、2024年1月にラスベガスにて開催された最新電子機器見本市CES2024に出展された、株式会社toraru(トラル)の人間拡張サービスGENCHI(ゲンチ)です。現地のエージェントとリアルタイムで映像と音声によるコミュニケーションをとり、自分が遠隔地にいるような感覚を得ながら様々な活動ができるサービスとなっています。以下、詳しく見ていきましょう。

注)Fortune Business Insight

人間拡張サービスGENCHIとは?

株式会社toraruは2018年4月に兵庫県神戸市にて創業されたスタートアップで、世界に仮想交通網を構築するための人間拡張サービスGENCHI(ゲンチ)の運営を行っています。代表の西口潤氏は2012年に大阪にてソフトウェア開発企業PC AUTOMATION SERVICE(ピーシー オートメーション サービス)を立ち上げている連続起業家で、2016年にはネットサービス企業の合同会社toraruを設立。2018年には社名はそのまま株式会社へと移行し、GENCHIの提供を開始しています。資金調達に関する情報はありません。

GENCHIが提供しているのは、「諸事情により、簡単に現地に行けなくなった方や特定の日時に特定の場所に行くことのできない方に代わって、目的地付近にいるGENCHIアバター(ギグワーカー)に代わりに現地まで動いてもらい、現地にいる方に仕事として目的達成の支援作業をしてもらえる」というサービスです。「必要に応じて現地のスマートフォンのカメラを視覚、マイクを聴覚の代わりにして、スマートフォンを経由して、メタバースのようにリアル現地に疑似的に入り込む事が出来」ます(注)。

GENCHIの特徴は、Zoomなどのように映像や音声の先にいる人と1対1のコミュニケーションを志向するのではなく、現地のアバター(ギグワーカー)に指示を出し、現地の状況を映像や音声で確認し、現地にいるかのような体験を得るということです。これを応用することで、アバターと感覚を共有しながら、遠隔地の会議に出席したり、商品を購入したり、観光や視察をすることが可能となります。

注) PR Times

GENCHIのUI

Zoomなどのオンライン通話サービスとは異なり、GENCHIでは「実際にその場所にいる感覚」を忠実に再現します。画像と音声のリアルタイム共有はもちろん、現場にいる「分身」に対して指示を出し、現地で感じられることを遠隔地にいながら感じるということが目指されています。

特徴的なのは、GENCHIでは1人称視点のビデオゲームのように、方向指示やアクションを指示する機能があることです。これを通じて、例えば「直進して右へ曲がり、あの場所を映してほしい」などと、アバターに対して指示を出し、現地での目的を達成することができるのです。

現地でアバターとなってくれる人は、GENCHIのプラットフォームにてマッチングして探し出すという仕組み。目的の活動と場所の情報をGENCHIに登録し、対応可能な現地在住の人が手を挙げればマッチングが成立します。活用が想定されるのは①観光・視察、②購買・会議参加といったケースです。①ではあるイベントや観光地をレポートしたい現地在住の人から価格を提示し、それを遠隔地から視聴して体験したいという人がお金を払うというパターン。②では、ある物品を購入したり、会議に参加したいという人から価格を提示し、現地でその対応が可能な人が対応するということが考えられます。

GENCHIの活用事例

画像引用元:株式会社toraruよりContech Mag作成

2024年1月にラスベガスにて開催された最新テクノロジー見本市CES2024では、toraru代表の西口潤氏がアバターとなってデモンストレーションを実施。西口氏自身が会場を回り、東京から参加している人々の分身として体験を共有しました。当時の実際の動画はリンク先から視聴できます

そのほかにも、例えば地方移住を検討する際、移住先でGENCHIのアバターを雇い、不動産やモデルルームを回ってもらうといった事例も考えられます。現地のアバターとともに現地の状況をすることで、移動のコストや時間を抑えながら、しかし移住先の様子を「その場にいるような感覚」を得ながら観察することで、移住に関するよりよいヒントを得られることでしょう。

また、高齢や身体障害、感染症のパンデミックなどによって物理的な移動が制限されている状況で、遠隔地での体験を可能にすることにも活用できると考えられます。

まとめ

画像引用元:株式会社toraru公式ホームページ

いかがでしたか?今回はアバターを通じて遠隔地から現場の感覚を共有し、作業をすることができる人間拡張プラットフォーム、GENCHIをご紹介しました。toraru代表の西口潤氏はGENCHIのグローバル展開を通じて国内外での人々の移動障壁をなくし、将来的には人間拡張技術を応用して五感の共有を実現し、場所にしばられない自由な世界の実現を目指すといいます。同社の今後の展開が注目されます。