
- 商業ビル・工業設備の液体漏れ事故による損害額は年間190億ドルにのぼり、保守点検ソリューションが求められている
- イギリス・ロンドンのLAIIER(ライアー)は、2022年に水漏れを検知するIoTデバイス「Severn WLD™」を発表
- LAIIERの水漏れ検知ソリューションは、建物所有者や保険会社などの顧客に受け入れられている
はじめに

画像引用元:LAIIER公式ホームページ
建物の保守点検ソリューション市場は、2024年に約92億ドル(約1兆3,100億円)、2030年には約189億ドル(約2兆7,000億円)に達すると評価されており、この期間中の年平均成長率は13.2%に達します(Grand View Research 2025)。
一方、商業ビルや工業設備における液体漏れによる被害やダウンタイムは、年間190億ドル(約2兆7,000億円)超の損失を生んでおり、資産管理における深刻な課題となっています。
そこで今回ご紹介するのは、建物の水漏れを検知するIoTプラットフォームを展開しているLAIIER(ライアー)です。一体どのような企業なのでしょうか?詳しく見ていきましょう。
LAIIERとは
LAIIERは、2020年にイギリス・ロンドンにて設立された、建物の水漏れを検知するIoTソリューションの開発企業です。共同創業者はMatt Johnson、Bibi Nelson、Isabel Lizardiの3名です。
同社は2022年に世界初となる貼り付け型の水漏れ検知デバイス「Severn WLD™」(セヴェン・ダブリュエルディ)をローンチしました。これは低コストで電子回路を大量生産できる印刷電子技術によって製造されたデバイスで、液体に接触するとアラートを発出する仕組みです。これをLoRaWAN®(IoTデバイスを低消費電力で長距離通信させるための無線通信規格)と、スマートフォンやデスクトップ上の管理画面で水漏れ箇所を確認できるLAIIER Cloud®を組み合わせ、建物の隅々で生じる水漏れを検知するシステムです。
2025年1月にClosed Loop Partners主導のシードラウンドで400万ドル(約5億7000万円)の資金調達を実施しました。これが初の資金調達となり、このラウンドには、Burnt Island Ventures、Mundi Ventures、Bonaventure Capital、Carlisle Ventures、One Small Planet、Virta Venturesが参画しています。
建物所有者や保険事業者などを顧客とし、Fortune 500企業や大手保険事業者を含む多数の企業に導入実績があります。パートナー企業として、印刷電子技術を扱うHenkel Printed Electronics(ヘンケルプリンテッドエレクトロニクス)、IoTネットワークのソフトウェア開発を扱うMachineQ(マシーンQ)、ビルメンテナンスソリューションへの連携としてWattsense(ワットセンス)、美術館などにおける文化財保護を扱うConserv、建物の水・空調設備企業のCox Engineeringがあります。
建物の水漏れを検知するIoTソリューション

画像引用元:LAIIER公式ホームページ
LAIIERの中核製品「Severn WLD™」は、厚さ0.2mmの粘着性プリント電子センサーとLoRaWAN®対応ハードウェア、クラウドプラットフォーム「LAIIER Cloud」で構成される一体型の水漏れ検知ソリューションです。センサーは12個の電極に分割され、水分が4電極以上に達すると1分以内にアラートを発信。通常時は4時間ごとに信号を送り、バッテリー残量やセンサー断線、温度センサーや加速度センサーによるデータなどを報告します。
データは暗号化された上でLoRaWAN®経由でLAIIER Cloudに集約されます。Web上のダッシュボードからは検知履歴の確認やデバイス管理が行えます。通知はメールおよびSMSに対応していますが、APIを介して既存のBMS(ビルマネジメントシステム)やCMMS(設備保全管理システム)へ自動連携が可能です。
デバイス本体はIP65の防塵防水で、単一のリチウム電池で駆動。常温・標準設定下で最長6年間の連続稼働を実現しています。850mmのセンサーテープは現場で自由に長さ調整でき、数分で貼付設置が完了します。価格はデバイスごとの月額課金または一括買い切りを選ぶことができ、60ヶ月契約が基本となります。
この技術は、HenkelとLAIIERの提携により実現した印刷型電子回路の共同開発成果の一部でもあります。
LAIIERの活用事例

画像引用元:LAIIER公式ホームページ
パブやアートスペースを運営するイギリスのBig Penny Social(ビッグペニーソーシャル)は、ワルサムストウにある約3,250㎡のコミュニティ&エンターテインメント施設にSevern WLD™を導入しました。同社はこれまで屋根やバーカウンター下など目視しづらい箇所の漏水の発生による修繕コストが課題となっていましたが、漏水箇所を早期に特定できるようになったことで、営業中の修繕による事業中断を抑制し、修繕費用の増大を回避することに成功しました。
またイギリスの大手害虫防除企業Rentokil Initial(レントキルイニシャル)は、同社のR&D(開発研究)施設において、加湿器の故障による漏水事故で実験室が数週間使用不能になった経験を踏まえ、Severn WLD™を採用しました。微小な漏水を早期に発見できるようになったことで、温湿度管理が厳格な環境での実験停止リスクと高額な修繕コストを大幅に削減しています。
まとめ

画像引用元:LAIIER公式ホームページ
いかがでしたか?今回は水漏れを検知するIoTプラットフォームを展開するLAIIERをご紹介しました。LAIIERのIoTプラットフォームは、年間190億ドル超の漏水被害問題に対し、印刷電子技術を活用した水漏れ検知デバイスSevern WLD™と、LoRaWAN®を活用したIoTネットワーク、及びLAIIER Cloudにより早期検知・アラートを実現しました。
2025年1月の400万ドルの最新資金調達を受け、北米・欧州市場でのさらなる市場展開が期待されます。