- 鉄筋を加工する工程では、危険も多く、時間とコストがかかっていた
- Rebartekはこれらを自動化するロボットを開発、導入のしやすさも魅力
- これによって、作業員のタスクのうち90%を削減することに成功
はじめに
鉄筋コンクリートといえば、ビルやマンションなどに使われ、高層建築ではお馴染みとなっている建築構造です。その製造手順は、必要な鉄筋の加工、配筋、型枠作り、コンクリート打設という流れなのですが、これまで鉄筋の加工や配筋はほとんどが手作業で行われてきました。そして、それらの作業は多くの労力と時間を消耗する上、事故などのリスクも抱えていたのです。加えて、現場で必要とされている業務に対して、作業員の技術が追いつかないスキルギャップも、建設業界を苦しめていました。
そこで、ノルウェーのスタートアップ「Rebartek(リバーテック)」が、鉄筋の加工を自動化するロボットを開発。これまでの常識を覆す挑戦を始めています。今回は、そんなRebartekの取り組みについてご紹介します。
現場の経験から誕生。Rebartekとは?
Rebartekが生まれた経緯について、CEOであるMax Trommer(マックス トロマー)氏はこう話します。「私は過去15年間建設現場で働いてきました。そして、私が携わった最後のプロジェクトである橋の建設では、鉄筋かごを手作業で、多くの時間とコストをかけて製造していたのです。私はこの時、ロボットを使って何か変えられないかと考えました」。
しかし、既に確立された工程に新しいテクノロジーを導入することは、容易ではありません。ですが、実はTrommer氏、道路建設プロジェクトのワークフローを改善するためにWebアプリを開発し、展開していった経験がありました。そうしたノウハウを活かし、産業用ロボットを使用した鉄筋加工の自動化に乗り出したのです。
そして生み出されたのがこちらのロボット。配置と溶接という2つのタスクをこなすことができ、2台1組になることによって鉄筋の加工を効率的に進めていきます。
まずは配置を行うグリッパーロボット。必要な長さの鉄筋をピックアップして、サポートフレームに配置します。例えばこのビデオでは、短めの鉄筋を交互に配置し、正方形の格子パターンに組み上げています。溶接が完了すると、グリッパーロボットはそれを持ち上げ、完成されたパーツを1箇所に積み上げていくのです。
もう片方のロボットは、グリッパーロボットが配置した鉄筋を、溶接ツールを使用して接合します。高熱の伴うこの作業は危険も大きく、正にロボットが適任だといえます。
このロボットの導入によって、高品質の鉄筋ケージを短期間で加工することが可能に。また、作業員たちの危険を減らすだけでなく、多くの時間を消費していたこれらの作業から解放されることで、生産性も大きく向上させているといえます。
また、Rebartekは鉄筋の変形加工も自動化しています。現場で必要な鉄筋の長さや形、数を事前にプログラムし、それをコイルのように巻かれた鉄筋から切り出していくのです。
参考までに、手作業で鉄筋の変形加工をする様子をご覧ください。図面を見ながら一つ一つ手作業で形成していく作業は、人数とそのスキルを身に付けた人材が必要です。冒頭でも書いたように、こうしたスキルギャップが多いと言われる建設現場において、ロボットの登場は革新的な変化をもたらします。実際、同社の話では、ロボットを導入することで鉄筋の加工にかかる時間を90%削減でき、ここまで自動化を成功させた世界で最初の会社だといいます。
また、これらの自動化された工程は、RoboDKによって産業用ロボットにソフトウェアをシミュレートすることで実現します。
産業用ロボットの強い味方、RoboDKとは?
ここで、Rebartekが今回のロボットを作る上で使用したソフトウェア、RoboDKをご紹介します。
RoboDKは、カナダ最大のロボット研究室の1つであるCoRo研究所からスピンオフして誕生したシミュレーションソフトウェアです。ペイント、切削など、さまざまなロボットアプリケーションを、主要な産業用ロボットに直感的かつ手頃な価格でシミュレートすることができます。
加えて、操作性に定評のあるUIと、専門的なプログラミングを必要としない性質から、導入のしやすさも特長として挙げられます。
また、Rebartekが同サービスを利用した理由の一つに、RoboDKは特定のロボットメーカーに縛られていないことがありました。これによって、自社にとって最適なロボットにソフトウェアをシミュレートすることができたのです。
日本でも自動化の波!?T-iROBO Rebarの鉄筋結束
Rebartekは鉄筋の加工における一連の工程を自動化します。ですが、鉄筋の結束だけを自動化させた例は日本にもいくつかあります。その一つが千葉工業大学と大成建設が共同開発した「T-iROBO Rebar(ティーアイロボ・リバー)」です。
本製品は、鉄筋上を自走しながら鉄筋交差部を自動判別し、ロボットに設置された自動鉄筋結束機で結束する動作を繰り返し行います。動作制御において重要な要素となるロボットの位置決めには、本体に設置された複数の赤外線レーザーセンサーを利用しています。
このように、鉄筋の加工は単純作業でありながら手間がかかるため、自動化できないかと試みる例が多く存在します。日本でも更なる技術発展によって、結束だけでなく、一連の工程が自動化され始める日も近いかもしれません。
Rebartekの今後
同社のCEO、Max Trommer(マックス トロマー)氏は、「私たちのビジョンは、鉄筋加工の工程を完全に自動化することです。」と、ロボットの更なるブラッシュアップへの想いを話していました。そして、そのために必要な人工知能の開発は既に済んでいると語る同氏、近いうちに、何かまた大きな技術発展をもたらしてくれるのではないかと期待が高まっています。
まとめ
鉄筋加工の自動化を目指すRebartekの取り組み、いかがでしたでしょうか。作業員のタスクの90%を占めていた部分を自動化できるというのは、雇用主にとっても革命的な技術であるといえます。
あとは、その作業員たちが失業するのではなく、より安全でクリエイティブな仕事につける仕組み作りも、合わせて必要であると感じました。Rebartek含め、建設業界の今後の動向から目が離せません。