IoT活用で建設現場のデジタル化に挑戦するYnomia

海外事例
  • メルボルンのスタートアップYnomiaが米国建設特化ファンドなどから360万ドルを調達
  • Ynomiaは作業現場の情報をデジタルに変換し、建設資材や人のリアルタイム情報を管理します
  • Ynomiaは「建設業界におけるデジタル格差の改善」を掲げる

はじめに

オーストラリア(メルボルン)のスタートアップであるYnomiaが米国の建設特化ファンドBrick & Mortar Venturesなどから360万ドルの資金調達に成功しました。彼らはbluetooth技術を用いた建設資材のトラッキングに取り組んでいます。

メルボルンというとあまりスタートアップのイメージがないかもしれませんが、他にもMatrakという建設スタートアップが同じく300万ドルの資金調達に成功するなどContech分野で今もっとも熱いエリアの1つであると言えます。
この記事ではメルボルンを牽引する若きcontech企業の中身を解説します。

Ynomiaとは

Ynomiaはシードラウンドで資金調達を実施したばかりのスタートアップです。シードラウンドのスタートアップということで公式のHP自体も事業内容を明確にしておらず不明な箇所は多いですが、Ynomiaは「リアルタイムの建設データ」を標榜しています。

YnomiaはもともとCSIRO(オーストラリア連邦科学産業研究機構)のアクセラレータープログラムの中で事業を開始しました。現在、月間5万ドル程度の収益をあげています。

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 Ynomiaが解決を目指す建設現場の課題

Ynomiaが解決しようとしているのはどのような課題なのでしょうか。Ynomiaは、「他業界が平均して2.8%の成長をしているにも関わらず建設業界は過去20年に渡って、1%の低成長を維持するのに甘んじている」と指摘します。

その中でもYnomiaが注目するのは情報の不透明性の課題です。現場での活動や物品の状況が可視化されていないために人員を適切に配置することができず、非効率な現場が生まれていることを指摘しています。

それに対しYnomiaは現場の人員・資材・道具などをリアルタイムで特定できるようにするソリューションの提供を行うことでこれらの課題を解決しようとしています。そしてそれらの位置データを建設作業員にゆだねることでコストカットを狙っています。

Ynomiaが手掛けるセンサー技術とは

Ynomiaが提供するのはbluetoothをもとにしたセンサー技術です。水平面と垂直面の両方で、現場の材料を追跡します。わずかな電力を使用し、追加のネットワーク接続を必要とせずにスケーラブルで展開しやすいように設計されており、センサーだけでなく取得した情報をもとに視覚化し、分析につなげ学習するというアルゴリズムを開発しています。

実はYnomiaのセンサー技術はあらゆる製造の現場にスケール可能なようです。最もデジタル化と遠く、インパクトの大きい業界として建設を選んだようです。

実際の大型建設プロジェクトへの導入がすすむ

現在、メルボルンの3つの建設プロジェクトやイギリスで、Ynomiaの技術は用いられています。

1.オーロラメルボルンセントラル

メルボルンの中心に位置し、完成すれば一帯で最も高い建築物となる、92階建の大型の集合住宅であるオーロラメルボルンセントラルでYnomiaの技術は用いられています。

2.グレンショッピングセンターの再開発

グレンのショッピングセンターの再開発でもYnomiaのセンサー技術が使われています。再開発のプラント、機器の監視システムとして用いられるこのプロジェクトは約5億ドル、78,000㎡にも及ぶ大規模なものです。

3.ウエストサイドプレイス

2つにまたがる1376のアパートメントとホテルで構成されるウエストサイドプレイスではYnomiaの技術を使って製造業者から施工までの資材の動きをトラックしています。他のスタートアップと協業して、2000枚のガラスパネルを追跡するなど実証実験を重ねています。

引用:Ynomia公式サイトより

日本における建設現場のデジタル化について

Ynomiaが取り組む建設現場のデジタル化は、日本のContech分野においてもとても注目されているジャンルです。とくにIoTによる効率化は、国が推進するiConstructionの資料内でも強調されています。

東急建設はNTTドコモが提供する「建設現場IoTプラットフォーム」を活用し、このシステムは建設現場ごとに、ビーコン(電波発信機)などで作業員・職員の位置情報を、スマートフォンやバイタルバンドで作業員・職員の心拍数・歩数・活動量情報を、専用装置で機材の稼働状況・位置情報をそれぞれ取得し、集約・分析した情報を可視化して所長や職員は、現場の状況変化や対応が必要な事項をタブレット端末などで一括して把握するなどをの実証実験を実施しています。

東急建設では作業員・職員や資機材など、人とモノのデータにAIの分析技術を組み合わせ、効率化や品質管理の省力化が見込まれるとともに、労働時間の削減など現場の働き方改革をサポートするために検証を重ねていくと発表している。

まとめ

Ynomiaはbluetoothという従来からある技術を活用することで、建設現場のデジタル化がすすむということを示唆しています。日本のContech領域のスタートアップは現在は、アプリやサービス完結型が多いですが、建設業界の生産性の向上は急務であり、今後は現場と密接に関わっていくスタートアップが増えていくことは間違いないでしょう。