建設資金に関する業務を効率化!建設ローン業務と財務管理サービスを提供するBuiltとは?

画像引用元:Built Technologies 公式ホームページ
海外事例
  • 建設プロジェクトにおける資金の流れは非常に複雑で、特に建設ローン業務と財務管理業務には時間とコストがかかる。
  • Built Technologies(ビルト テクノロジーズ、以下Built)は、金融機関の建設ローン業務と建設事業者の財務管理を自動化するサービスを提供している。
  • 2021年2月、アメリカ合衆国最大の地方銀行「U.S.バンク」は、Builtの建設ローン管理サービスを通じて建設ローン業務の自動化を進めることを発表した。

はじめに

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建設プロジェクトにおける資金の流れは非常に複雑です。まず、資金の流れは大きく分けて2種類あります。一つ目は、主に金融機関などの資金の貸し手と、住宅や商業ビルを建設したいデベロッパーなどの借り手との間における資金の流れです。建設ローンを通じた資金調達などがこれに当たります。アメリカ合衆国では、資金の貸し手や借り手の双方を守るために、建設ローンの手続きは連邦規則により詳細に方法が定められています。

二つ目は、建設事業者と、建設工事を請け負う施工業者の間での資金の流れです。特にアメリカ合衆国では、建設工事を行う施工業者や資材業者を保護するために、元請業者に対して作業費の支払を義務付ける「メカニクス・リーン法」(Mechanics Lien)と呼ばれる法制度が州ごとに導入されています。

このように、資金の貸し手からデベロッパー、施工業者に至る全ての利害関係者が互いの利益を保証しつつ建設プロジェクトを進めていくために、価格や契約関係を書面で明示する必要があり、建設資金の管理業務が非常に煩雑になるのです。

今回ご紹介するBuilt Technologies(ビルト テクノロジーズ、以下Built)は、建設プロジェクトに伴う資金調達業務や財務管理業務を効率化するサービスを提供している会社です。一体どのような企業なのでしょうか。詳しくみていきましょう。

建設ローンの最適化を目指すBuilt Technologiesとは


Builtは、2014年にアメリカ合衆国テネシー州にて創業された企業です。金融機関の建設ローン業務や建設事業者の財務管理業務を効率化するクラウドサービスを提供しており、建設ローン管理サービスとしては唯一、米国銀行協会(ABA)の公式ベンダーとして認定されています。

2021年2月には、アメリカ合衆国最大規模の地方銀行の一つ「U.S.バンク」が、建設ローン業務の自動化を進めるためにBuiltの建設ローン管理サービスと提携することを発表しました。Builtは同月に、シリーズCで8,800万ドル(約95億7,000万円)の資金調達を実施しており、今後は貸し手向けの建設ローン管理サービスの改善や、アメリカ合衆国、カナダにおける銀行やノンバンクの建設ローン金融事業者へのサービス拡大、建設事業者の財務管理サービスの改善を進めるとしています。

貸し手向けの建設ローン管理サービス

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建設ローンの管理業務は基本的に労働集約的です。資金の貸し手が多数の利害関係者との間で個別にコミュニケーションを取るような方法では、時間やコストがかかるだけでなく、リスクの発見が遅れる可能性もあります。

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そこでBuiltは、クラウドサービス上で資金の貸し手や建設事業者、住宅検査官など、建設プロジェクトに関わる利害関係者の間のコミュニケーションを一元化しました。建設ローンに関わる文書を電子化し、クラウド上で取引先とやり取りを行うことで、手続きを効率化することができます。

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また、建設ローンに関する情報を全てBuilt上で管理することで、確認や更新などの契約や支払いに関する業務にかかる手間を省略可能に。さらに、資金の貸し手は集約されたデータを用いて、建設ローンのリスク管理やポートフォリオの改善に役立てることができるようになります。こうして、資金の貸し手は不必要なリスクやコストを抑制することができるのです。

Builtのソフトウェアは、商業向け、消費者向けの建設ローンの双方で活用されており、これまでにアメリカ合衆国内の115の金融機関で導入されています。これまでにBuiltを通じて契約された建設ローンの総額は500億ドル(5兆4,600万円)規模にのぼるといいます。

建設事業者向けの財務管理サービス

Lien Waiver Management | Built | Powering Smarter Construction Finance

Builtが提供する二つ目のサービスは、建設事業者向けの財務管理サービスです。アメリカ合衆国では、建設事業者は建設工事の発注先となる施工業者や資材業者に対し「リーン・ウィーバー」(Lien Waiver)と呼ばれる契約文書を交わすこととなっています。これは、「元請け事業者が施工業者に対して対価を支払った」という事実を証明する領収証の役割を果たすもので、法律により発行が義務付けられています。

Builtのソフトウェアはこの「リーン・ウィーバー」の発行や、工事代金の支払い、契約文書の管理を一元化することで、建設事業者の財務コストを削減するのです。

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Builtのソフトウェア上での手続きの流れは上図のようになります。まず、総合建設事業者が、Built上でリーン・ウィーバーの書面を作成し、電子メールにて施工業者に送信します。続いて、施工業者は送られてきたリーン・ウィーバーに対し電子署名を行います。総合建設事業者がリーン・ウィーバーを受け取ると、自動的に施工業者の銀行口座には施工代金が振り込まれるのです。

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総合建設事業者の行う業務は「施工計画」、「施工管理」、「施工業務の発注」、「施工代金の支払い」など多岐に渡ります。そのため、様々なソフトウェアを使い分けながら業務を行うこととなり、データの確認などで余計な時間や手間が発生していました。

Builtのソフトウェアではこうしたコストを削減するために、主要なソフトウェアのデータを扱うことができるように設計されています。そのため、これまでリーン・ウィーバーを作成するために1週間がかかっていたところが、1日で作成することができるようになったといいます。

まとめ

いかがでしたか?今回は、貸し手向けの建設ローン業務管理サービス、及び建設事業者向けの財務管理サービスを提供するBuilt Technologiesをご紹介しました。

建設業界は非常に大きな産業であり、高額な資金が動きます。しかしながら資金調達業務や財務はいまだに非効率であり、デジタル化やデータの統合による業務の効率化が目指されているのです。同社の今後の展開が注目されます。