事業用資産管理のデジタル化を支援するVEERUM

画像引用元:VEERUM 公式ホームページ
海外事例
  • 全世界の投資計画の90%は予算超過しており、その総額は約1.6兆ドル(174兆円)にのぼる
  • 建設事業や保守、改修事業を予算内で計画的に行うためには、現場の詳細な情報を取得する必要がある
  • VEERUMは現場情報の取得コストを抑制するために、事業用資産やインフラ資産を3Dモデル化、可視化するサービスを提供している

はじめに

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新規の設備工事、既存建物の改修工事や保守点検の計画を行う際には、現場の詳細な情報を取得することが不可欠です。しかし、現場の情報を得るためにはコストがかかるだけでなく、不確実性も伴います。全世界の投資計画の90%は開始後に見つかった課題のために予算超過が発生しており、その総額は約1.6兆ドル(174兆円)にものぼるといわれています。

今回ご紹介するVEERUM(ヴィーラム)は、現場の情報取得やデータ活用に必要なコストを削減するために、事業用資産、インフラ資産の現物を3Dモデル化、可視化するサービスを開発、運営しています。一体どのような企業なのでしょうか?詳しく見ていきましょう。

VEERUMとは

VEERUMは、「現実をデジタルの世界に持ってくる」ことをミッションとして、事業用資産やインフラ資産をコンピュータ上で3Dモデル化、可視化するサービスの開発運営を行っている会社です。現場での測量や視察による情報取得から、データの3Dモデル化、データを活用するオンラインプラットフォームを一貫して提供しています。

2014年にカナダのアルバータ州に創業され、2021年2月3日には、建設・不動産業界や農業に特化して資金提供を行うBDC Capital(ビーディーシー キャピタル)やBuilders VC(ビルダーズ ベンチャーキャピタル)を筆頭株主として、シードAラウンドで740万ドル(約7億9800万円)を調達するなど、これまでに総額で1560万ドル(約17億1千万円)の資金調達を実施しています。調達資金は主に海外市場への販路拡大のために充てられる予定です。

現場情報を活かすオンラインプラットフォーム

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VEERUMのオンラインプラットフォーム、VEERUM Reality Site(ヴィーラム リアリティ サイト)は、現場で取得したデータを3Dモデル化し、可視化するサービスです。

同社はまず、レーザースキャナやカメラ付きのドローンなどで現場の情報を取得し、2Dまたは3Dモデル化を行います。資産の所有者または管理者はオンラインプラットフォーム上で設備や建物に位置情報を付したタグをつけることで、モデルを通じて計画を検討することができるようになります。

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オンラインプラットフォーム上で設備工事計画を立てると、建物や設備、部品などの3Dモデルを仮想的に配置することで完成のイメージを視覚的に把握することができるようになります。

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また、建物や部品だけでなく、土地の形状などのデータも扱うことができます。計画と実際の現場の状況を比較し、進捗状況を明らかにすることができ、さらにレポートを作成することも可能です。
プロジェクトの全体像を把握し、問題を早期発見することで、工事費と工事計画を20%から40%削減することができるだけでなく、工事の安全性を高めることができるといいます。

現場のデータを取得する技術

地上走行型のレーザースキャナ

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主に採掘業向けに開発されたのが、こちらのロボット、Franchesca(フランチェスカ)です。レーザースキャナやカメラを搭載し、地上を走行しながら現場の情報を取得します。建設中の建物だけでなく、土地の形状や転がっている障害物などを認識し、3Dモデルにすることができます。

ドローンによる空撮測量

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2020年11月には、ドローン空撮測量サービスを提供するEye-Bot Aerial Solutions(アイ-ボット エアリアル ソリューションズ)とパートナーシップを締結し、主に鉄道運輸業や、石油ガスインフラ業向けの資産管理サービスを強化することを発表しました。

両業界とも、設備の規模が大きいことが特徴ですが、ドローンによる空撮測量技術とVEERUMのデジタルプラットフォームを掛け合わせることで、既存設備のデータを低コストで収集、可視化することが可能になりました。顧客の資産管理や設備投資計画に役立てることが期待されています。

また、空撮測量技術を用いたプロジェクト管理は、カナダのブリティッシュコロンビア州におけるサイトCダムの建設プロジェクトに活用されています。このダムは同州の電力需要に合わせて計画された水力発電施設で、2024年の工事完了を予定しており、VEERUMは現場のデータの取得活用を通じてプロジェクトの進捗を管理する業務を担っています。

IoT機器によるモニタリング

同社は同じく2020年11月に、現場の3Dモデルを生配信するサービス、V-Stream(ヴィー ストリーム)を発表しました。同サービスはIoT(アイ オー ティ)機器とセンサー技術を組み合わせて、現場の設備や機械、部品、あるいは人の動きをリアルタイムで3Dモデル化、可視化するものです。

IoT機器は、設備が正常に作動しているかや、作業員の体調、現場の気温などをリアルタイムで測定し、モニタリングします。異常を発見するまでの時間を短縮するなど、保守管理業務のコストを抑制することが期待されています。

まとめ

いかがでしたか?今回は、現場の情報取得やデータ活用に必要なコストを削減するために、事業用資産、インフラ資産の現物を3Dモデル化、可視化するサービスを開発、運営しているVEERUMをご紹介しました。

VEERUMは現場における測量などのデータ取得から3Dモデルの活用までを一貫して支援しており、現在は、測量技術の多様化や、市場の拡大を進めています。同社の今後の展開が期待されます。