出張・転勤をより快適に!Zeus Livingが提案する新しいライフスタイルとは?

画像引用元:Zeus Livingホームページ
海外事例
  • Zeus Livingは法人向けの住宅シェアリングサービスを展開している。
  • 宿泊施設でありながら、日常的な生活空間を提供することにより、2019年にシリーズBでの資金調達を実施するなど、急成長を遂げている。
  • 働き方の変化に伴い、法人向けの賃貸住宅市場は今後の新規参入とイノベーションが見込まれている。

はじめに

日本で出張や転勤と言えば、異動先のビジネスホテルや会社が用意する社宅に1ヵ月〜1年ほどの期間滞在するというイメージがあります。一方アメリカでは、このような長距離の人事異動は希望制とされています。ゆえに移動先における生活の快適さが重視されますが、こうした異動に伴う住宅費用は企業や家計を圧迫しており、低価格で快適な生活ができる宿泊先が求められていました。

Zeus Livingは、こうした住宅需要を受けて、法人向けの住宅シェアリングサービスを提供しています。サービスの内容を早速見ていきましょう。

Zeus Livingとは?

Zeus Living(ゼウス リビング, 以下Zeus)は、2015年に法人向けの住宅シェアリングサービス提供する企業としてアメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコに創業されました。2020年1月の時点でカリフォルニア州を中心に2000戸以上の住宅を運用しており、延べ約19,000人に宿泊体験を提供しています。

2019年12月にはAirbnb(エア ビー アンド ビー)をはじめとする調達元からシリーズBで約55百万ドル(約60.3億円)を調達するなど、これまでに約79.1百万ドル(約86.7億円)を調達しており、その期待の高さが伺えます。特に2019年の資金調達ではAirbnbとZeusがパートナーシップを締結しました。これによりZeusが手がけるシェア住宅がAirbnbのサービスにも掲載されることとなり、Zeusはサービス提供地域を拡大していくことが予想されています。

Zeus Livingの法人向け住宅

快適性を追求した宿泊施設を提供

画像引用元:Zeus Livingホームページ

これまで転勤や出張等による長期間の滞在先として選ばれていたのは、ビジネスホテルや社員住宅など、既存サービスが提供する宿泊施設でした。しかしこれらの宿泊施設では交通の利便性や価格の低さが重視され、生活空間としての快適性や居心地の良さは犠牲となっていました。

そこでZeusは、個人が所有する住宅をオーナーに代わって管理し、法人利用者向けの宿泊施設として整備することにより、日常的な生活空間に近い宿泊体験を低価格で提供することを実現しました。

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Zeusはより快適な生活空間を提供するため、住宅ごとにインテリアデザイナーが家具や内装を整えています。机や椅子等の事務用家具、寝具やソファ等の大型家具も使いやすいものが選ばれているというだけでなく、内装にマッチしたものが備え付けられています。

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また、清掃用具や洗剤類、タオルやドライヤー等のアメニティ、キッチン用品等の生活必需品だけでなく、WIFIやドアのオートロック等の設備が基本的に全ての住宅で提供されています。加えて24時間のオンラインサポートや修理や故障時の技術者派遣サービスも追加料金不要で利用することができます。

どのように低価格を実現しているのか?

Zeusは次の2つの工夫によりコストカットを実現し、上記の宿泊サービスを既存の宿泊事業者以上に安く提供しています。それぞれ詳細を見ていきましょう。

①個人住宅のシェアリングによる不動産維持費用の削減

Zeusの提供する住宅は全て個人が所有する住宅です。Zeusは空いている住宅を貸したいと考えているオーナーから不動産を借り受けて賃貸経営を行います。

同様の住宅シェアリングサービスを提供しているAirbnbでは宿泊客と宿主を繋げるオンラインプラットフォームを提供しているに留まり、宿泊施設の清掃等の維持管理はオーナーが担うのが一般的でした。しかしZeusでは、オーナーの代わりにZeusが管理者を派遣し住宅の維持管理、さらに家具や内装の整備まで行うため、オーナーは住宅の管理に一切関わる必要がありません。

画像引用元:Zeus Livingホームページ

また、住宅のオーナーは宿泊客の利用日数に関わらず毎月一定の収入が得ることが保証されています。例えば1ヵ月に5,000ドル(約55万円)の宿泊利用料金を設定している住宅の場合、最初の1ヶ月を除いて毎月4,000ドル(約44万円)がZeusからオーナーに支払われ、オーナーは1年間で11ヵ月分の賃料44,000ドル(約484万円)を得ることができます。Zeusは宿泊客を途切れなく獲得した場合1年間で12,000ドル(132万円)を売り上げることになります。

住宅の維持管理費用及びオーナーに支払う賃料を含めても、不動産を所有して賃貸経営を行うのと比較して、費用を抑えることができるといいます。

②住宅獲得費用と顧客獲得費用の削減

上記のようなシステムを成立させるためには、より効率的に宿泊客を獲得するための工夫が必要になります。

まず住宅の獲得についてですが、Zeusは住宅オーナーに対し、一物件あたり最短で2年間の賃貸契約を求めており、契約は5年間まで延長することができます。この契約期間中、オーナーは最初の1ヵ月を除き毎月定額の収入を管理の手間をかけることなく得ることが保証され、契約終了後は内装や家具、その他の設備を引き続き使用することができます。

画像引用元:Skift.com “corporate-housing-is-getting-a-little-less-boring”

上記の画像のように、契約終了後の住宅は家具付きの物件となってオーナーに返還されます。こうした特典は、余っている不動産を運用したいと考えている住宅オーナーにとっては好条件だと言えるでしょう。

画像引用元:Techcrunch “Airbnb invests as Zeus corporate housing raises $55M at $205M”

続いて宿泊客の獲得については、Zeusのオンラインプラットフォームでは、上記の画像のように、地図や価格、日付から予約を行うことができ、支払いもクレジットカードで完結します。また、現地到着時に電子ダイヤル式玄関の鍵番号が通知されるようになっており、宿泊施設の予約から実際に宿泊するまでの手続きが全てオンラインで完結するようになっています。

Airbnbも同様のオンラインプラットフォームを展開していますが、Zeusは法人向けの利用に絞っているところに特徴があると言えます。Zeusは宿泊期間を最短で30泊に設定しており長期間の宿泊が前提となっています。また法人客は個人客と比べ、宿泊までの準備日数が長く、キャンセル率が低いため、需給の見通しが立てやすく、空室率を下げることができるのです。

まとめ

働き方の変化に伴い、出張や転勤だけでなく、リモートワーク、ノマドワークといった様々な働き方が認められるようになった背景には、生活の質を高めたいという根本的なニーズがあると考えられます。

長年宿泊サービス事業はイノベーションが進んでいませんでしたが、転勤・出張中の生活の質を高めつつ、価格を抑えた宿泊施設を提供しているZeusなどの企業が既存の宿泊サービス市場に参入していくことで、こうした働き方の変化はより進んでいくものと見られます。

Zeusがどこまで市場シェアを獲得できるのか、今後の動向に注目です。