不動産賃貸の不便解消するフィンテックスタートアップJettyとは?

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海外事例
  • アメリカでは、賃貸契約時の高額な初期費用が多くのユーザーにとって重荷になっている
  • Jettyは賃貸における不便を借り手、貸し手も双方の体験向上させるFintechサービスを展開しているより手頃な価格で簡単に借りられるようにすることを目指した金融サービスをアメリカ国内で展開
  • Jettyのサービスを活用すると、初期費用をかけずに入居が可能になるだけではなく、家賃の延滞も防ぐ事ができる

はじめに

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Jetty(ジェッティ)が行なった全米調査によると、賃貸契約における最大の障壁は新規契約時の初期費用の捻出とのこと。また、同調査では、約60%の回答者が初期費用が高いことを理由に入居を見送った経験があると答えています。アメリカの賃貸契約では、日本と違い敷金・礼金はありません。しかし、契約時または入居時に1〜2ヶ月分の家賃をデポジット(預り金)としてオーナーに支払うケースが多いのです。

その他にも、賃料の支払い期日と給料日が合わず賃料の延滞が発生してしまうなど、これまでの賃貸契約では様々な問題が発生していました。

今回ご紹介するJetty(ジェッティ)は、それらの問題を解決するための独自の金融サービスを展開しており、手頃な価格での住宅レンタルを目指すフィンテック企業です。

手頃な価格での住宅レンタルを目指す金融サービスのJettyとは?

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Jettyは家賃が高いことでも有名なアメリカのニューヨーク市で2015年に創業された企業で、賃貸をより手頃な価格で簡単に借りられるようにすることを目指しています。同社が展開する金融サービスによって、利用者は賃貸契約における初期費用を抑えられるだけではなく、柔軟なサイクルでの賃料の支払いが可能となります。

同サービスは、BNPLモデル(Buy Now Pay Later)を取り入れたサービス。「今買って、あとで支払う」を意味するBNPLは、日本でいう「後払い決済」や「先延ばし決済」と似ており、クレジットカードに代わる決済方法として大きな注目を集めている。そして、同業界の市場規模は1,000億ドル(約11兆3600億円)と言われています。

同社はアメリカでもトップクラスの不動産管理会社や保険会社と提携しており、リース転換率の向上、不良債権の削減、業務の効率化による営業利益の増加を実現。提携企業にはGreystar、LivCor、Related、Pinnacle、MG Properties、Trammell Crow、Griffis Residentia、ZRS 、Managementなど全国で100万戸以上の物件を扱っている有名企業が名を連ねています。

2021年9月にFlourish Ventures(フラリッシュベンチェー)とCiti(シティ)が主導するベンチャーラウンドにおいて、2300万ドル(約26億4700万円)の資金調達に成功。また、2019年に行われた、シリーズBラウンドの資金調達では、​​PayPal創業者であるPeter Thiel (ピーターティール)のValar Ventures (ヴァラーベンチャーズ)などから、2500万ドル(約28億4000万円)の資金調達にも成功しています。そして、同社はこれまでに、計6ラウンドの資金調達を行い、総額7800万ドル(約89億1000万円)を調達。

それでは、こうして注目を集めるJettytが展開するサービスとは一体どのようなものなのか、詳しく見ていきましょう。

初期費用を抑えるJetty Deposit

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冒頭で述べた通り、賃貸契約の際に最も障壁となるのが敷金などの初期費用です。その様な状況の中、同社が展開するサービス“Jetty Deposit”では、従来の敷金を低コストの保証債に置き換える事が可能です。

同サービスでは、物件や賃借人の情報を基に設定された金額を月々の分割または一括で支払う仕組みとなっています。従来の敷金と比べると、比較的安価であり分割払いも行えるので、初期費用を大幅に削減することが可能となります。加えて、契約はオンライン上で簡単に行う事ができます。

また、退去時に賃借人が決済を行わなかった場合などには、保証金の総額を上限としてJettyが立て替える形に。その後、Jettyは賃借人から未払い金を回収する責任を負う事となっており、賃貸人にとっても負担の少ない、低リスクなサービスとなっています。

さらに同社は2021年8月に高級不動産を中心に取り扱う、不動産大手企業AMLI Residentialとの提携を発表。現在はAMLIが取り扱う22,000戸以上の高級アパートメントでも、同サービスの利用が可能です。

家賃の延滞を防ぐJetty Rent

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全米多世帯住宅協議会のデータによると、アメリカでは約21%の賃借人が期日までに家賃の支払いを行えていないとのこと。その原因としては、家賃支払いのタイミングと給料日がずれている事などが挙げられます。支払いの延滞は、クレジットスコアの低下などにもつながるので、一部の賃借人にとって家賃の支払い期日は悩みの一つとなっていました。

その様な状況を踏まえ、同社が展開するサービスが’Jetty Rent’。同サービスは家賃の支払期日になると、同社が家賃の支払を賃借人に代わって行うサービス。賃借人は本来の期日から24日以内に、分割払いか一括払いでJettyに支払いを行う事を前提としています。そして、利用料はリスクプロファイルに応じた月額15ドル〜25ドル。

Jetty Rentのローンシステムは、大手銀行Cross River Bank(クロスリバーバンク)との提携によって実現しています。金利や遅延損害金は発生しませんが、その代わりに、家賃の支払いが遅れている利用者は、返済ができるようになるまで、サービスの利用が不可となります。

同サービスによって、賃借人がライフサイクルに沿った支払いが行えるようになると共に、賃貸人側は期限内の支払いが保証され、家賃の延滞を追跡する手間が省けます。

低コスト賃借人保険Jetty Protect

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他にも、Jettyでは​​最安月額5ドル(約570円)から始めることのできる賃借人保険’Jetty Protect’を展開。月額5ドルからと言われると心配になりますが、同サービスでは大手保険会社FarmersInsurance(ファーマーズ保険)と提携し、通常の保険同様のサービスを受ける事が可能です。

そして、Jetty Protectのもう一つの特徴は、オンライン上で簡単に手続きを行える点にあります。同サービスではオンライン上で保険証書などのデータを送信すると、最短2分程で契約を完了する事ができます。また、保険プランに関する相談や変更もオンラインで行う事ができ非常に便利です。

まとめ

今回は賃貸向け金融サービスを展開するJettyをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?Jettyはアメリカ国内でのみサービスを展開していますが、世界的に見ても需要があるサービスである事は間違い無いので、今後同様のサービスが諸外国で展開されていく事が予想されます。不動産関係のベンチャー企業は急速な進化を遂げているので、今後の同業界には注目です。