現場管理もリモート時代!?BIM技術で革新を起こす Open Spaceとは?

海外事例
  • これまで、建設現場の記録作業には膨大な業務コストがかかっていた
  • Open Space は、3Dカメラで建設現場を容易に3Dデータに変換
  • JLLは、Open Space 導入で業務効率化や50%もの出張費の削減に成功

建設現場の情報管理の効率化を実現するBIMとは?

画像引用元:https://bim-japan.com/bim.html

建設現場において、施工管理は非常に重要なタスクの一つです。しかしながら、それらはこれまでアナログな方法が用いられ、大幅な業務コストがかかっている事例が散見されていました。例えば、建設現場を写真や映像で記録するために三脚やスキャナーなどの機材が必要になったり、外部の企業に機材の操作を依頼したり、現場の様々な場所を歩き回って記録する人件費などです。その上、収集したこれらの莫大なデータを整理し、進行中のプロジェクトに活用していくには、多くの時間と労力が必要でした。こうした建設現場のプロジェクト管理の課題に対して、近年ではBIM(ビルディング インフォメーション モデリング)という施工から維持管理までのあらゆる工程で、3Dデータをもとにした情報活用を行う技術が注目されています。建設現場の情報を3Dデータとして収集し、施工や維持管理を行うことによって、業務効率化が可能になります。今回はBIMの領域で、3DキャプションとAIを活用した技術で注目を集める企業、Open Space(オープンスペース)を紹介します。

建設現場の情報管理に革命を起こす Open Space とは?

 

Open Spaceは2017年8月に設立されたサンフランシスコを拠点とする企業です。同社は建設・不動産業界の企業に対して、3DキャプションとAIの技術を活用し、瞬時に建設現場を3Dデータとして取り込み、プロジェクトにマッピングすることでプロジェクト管理を効率化するサービスを提供しています。

同社は、2019年8月には、WeWork、JLL Spark、Navitas Capital、Suffolk Construction、Tishman Speyer、Zigg Capitalなどの不動産・建設業界の大手企業やベンチャーキャピタルから出資をうけ、Lux Capitalが主導する資金調達のシリーズAで1400万ドルもの資金調達を達成したことを発表しました。また、2020年7月には、リモートでのプロジェクト進行などの需要の急増から、Menlo Venturesが主導する出資によりシリーズBで1590万ドルもの資金調達を達成しました。現在では、世界中の建設現場で導入が進んでおり、収益の総額は500億ドルを超え、同社のサービスが非常に注目を集めていることが伺えます。

建設現場を3Dカメラで瞬時に3Dデータにするソフトウェアを開発

Open Space の創業者であり、CEOのKalanithi(カラニシ)氏は、Open Spaceの設立以前の2017年に、プロトタイプとしてのソフトウェアをテストした際に、現在のOpen Space の核となるアイデアを思いついたと述べています。
プロトタイプとして開発したソフトウェアは、建設現場の写真や映像などの視覚的な情報を容易に記録、整理でき、プロジェクト管理を効率化するものでした。テストした際、ソフトウェアに対する顧客の反応は非常にポジティブであった一方で、Kalanithi氏はもう一つの課題を発見します。それは、建設現場では写真や映像などのデータを収集することに多くの時間や業務コストを要することでした。この課題を認識したKalanithi氏は、現場担当者のハードハットに小型カメラを装着し、現場の情報を容易に収集・プロジェクトに自動で反映させるアイデアを思いつき、現在のOpen Space の開発に成功しました。Open Spaceを利用することでヘルメットに装着したカメラから収集された画像がクラウドにアップロードされ、AIがそれらを識別・プロジェクトへのマッピングまで行ってくれます。

出張費を50%も削減 !? リモートによる建設管理の効率化を実現

画像引用元:JLL公式HP

Open Space は、不動産事業や建設事業で世界中にサービスを展開しているJLL(ジョーンズ ラング ラサール社)で、作業効率化を目的として導入されています。導入当時のプロジェクトの管理担当であった副社長のSteve Borup(スティーブ・ボルプ)氏は、Open Space社にリモートでのプロジェクト管理の支援を依頼しました。JLLはリモートでのプロジェクト管理の際に、建設現場の画像収集や現場の情報をプロジェクトに反映させることの業務コストが大きいことを課題として捉えていました。例えば、毎週定期的に行われる会議で建設現場の状況などに懸念が生じた場合、Borup氏は現場担当者に特定の写真を撮影してもらい、それを確認するためにまた別のフォローアップミーティングをしなければなりません。現場を歩き、写真を撮り、アップロードし、プロジェクトにマッピングするまでに4時間ほどかかっていたとBorup氏は言います。

Borup氏は建設プロジェクトの管理にOpenSpaceを活用したことで、すぐに業務効率化の効果を実感したといいます。実際に、毎週の定期ミーティングの前に、現場担当者のハードハットに360度カメラを装着し、現場のウォークスルーを行うだけで、建設現場の画像が自動的にOpen Spaceにアップロード・プロジェクトにマッピングされ、多くの業務コストの削減に成功しました。これに加えて、リモートでのプロジェクト管理が容易になったことから、担当者が現場に出張に行ってプロジェクト管理をする必要性が低くなり、結果として出張にかかるコストを50%も削減することに成功しました。Borup氏は、Open Spaceについて「プロジェクトがどのように進行しているかをチームに知らせ、建設現場がどのような状況であるかを示すために使用しています」と述べており、Open Spaceは建設やメンテナンスなどに関わる社内外のコミュニケーションにおいて重要な役割を果たしていることが伺えます。

まとめ

 

今回の記事では、3DキャプチャとAIの技術を応用し、建設のプロジェクト管理のサービスを実現したOpen Space を紹介しました。建設のプロジェクト管理にイノベーションを起こしつづけ、急成長を遂げるOpen Space。今後も同社の活躍に注目です。