- ドローン技術の向上により、建設現場におけるドローンの活用事例が増えている。
- Lucid Droneはドローンを活用して高層マンションやビルの清掃作業を効率化した。
- ドローンの活用例は測量・点検・運搬・調査など多岐に渡り、今後もその市場規模は拡大していく。
はじめに
企業は常に生産性を向上させるソリューションを模索しています。特にドローン技術は近年注目を集めており、飛行システムや測量技術、商用アプリケーションなどの開発により2016年には8400件を超えるドローン関連の特許取得が行われました。このドローン技術の急速な進歩に伴い、ドローンの市場規模は年々拡大傾向にあります。今回は、このドローンを清掃事業に活用したユニークな事例をご紹介します。
これまで高層ビルやマンションの建物外壁の清掃作業では、作業員が直接外壁を清掃するためにリフトや足場を使用することが一般的でした。しかし、清掃作業のたびに作業員を吊るための設備を設置したり、作業員の安全確保を行うことは大変なコストとなります。
今回ご紹介するLucid Droneは、ドローンを活用した建物外壁の清掃サービスを提供しています。Lucid Droneは清掃作業をどのように効率化していったのでしょうか?
Lucid Droneとは?
参照:Lucid Drone 公式Youtubeチャンネル
Lucid Drone Technologies(ルシッドドローンテクノロジーズ、以下 “Lucid Drone”)は、2017年アメリカ合衆国ノースカロライナ州で創業されました。Y Combinatorをリード・インベスターとして、2019年8月にシードラウンドで15万ドル(約1600万円)の資金調達を実施しています。
Lucid Droneのサービス
Lucid Droneは創業当初、作業員を雇い建物の清掃作業を行うサービスプロバイダーでした。しかし、ドローンを駆使した清掃事業のテストを実施するうちにその可能性に気づき、ドローンを駆使した清掃事業にシフトしました。現在はドローンを内製し、サポート・トレーニング・メンテナンス・レンタルを含んだサービスを月額3000ドルで提供しています。
ドローンを駆使した外壁清掃
従来、複層階の建物の外壁や窓を清掃するためには、リフトや足場を利用することが一般的でした。しかしLucid Droneの清掃作業ではオペレーターが地上からドローンを操作するだけで作業が完結します。
Lucid Droneのドローンは機敏な動きと操作性により、5分以内に約180平方メートルを清掃することを可能にしました。現在は36.6m(ビルの10~12階程度)までの高さの清掃に対応しています。
気になるその実力は?
Lucid Droneによる清掃が注目を浴びる理由には、「やさしさ」というキーワードがあります。強い水圧に任せて汚れを落とす従来の清掃方法とは異なり、空を自由自在に行き来することができるというドローンの特性、そして、特殊な洗剤を使用することにより、弱い水圧で汚れを落とすことを可能にしたのです。
清掃作業の様子
参照:Herald Sun “Company using drones to clean exteriors of buildings”
Lucid Droneのドローンは、地上の移動式タンクと送水用ホースで接続されています。レンガや石灰岩質の外壁・窓に付着したカビや汚れを弱い水圧でも落とせるよう、生分解性の液体洗剤を含んだ水を吹き付けて清掃作業を行います。
高圧洗浄では噴射時にドローンが反動によって操作性を失う危険があります。しかし、弱い水圧での清掃を行うことでドローンの操作性を保ち、また送水用ホースも高圧洗浄機に比べ細く軽いものを使用することができるため、ドローンの運搬能力の制約の中で清掃作業を実施することが可能となりました。
ドローンの法規制について
日本と同じくアメリカでも、ドローンは航空法により制限されています。アメリカの航空法によると、機体の総重量が0.55ポンド(約250g)を超える場合、連邦航空局(FAA)に機体の登録をする必要があり、55ポンド(約25kg)を超える民間・商業用のドローンは運用が禁止されています。
Lucid Droneのドローンは総重量を約11~13kgに抑え、FAAのガイドライン従うように飛行速度や操作性が調整されています。
建設現場におけるドローンの活用事例は他にも
すでに様々な場面でドローンの活用が進んでいますが、今回は特に建設現場での活用事例をご紹介します。
施工管理
ドローンによる観測を行うことで、高層ビルや橋梁、ダム、トンネルなどの大規模事業でも、低コストでプロジェクトの進捗管理を行うことができます。
調査・測量
広い土地・人が立ち入ることができない場所の調査・測量にも、ドローンの活用は適しています。カメラやレーダーといった観測機器を搭載し、高い地点から観測を行うことで、障害物などの影響を受けずに建設現場や災害現場の地形データを収集することができます。
点検作業
橋梁、プラント・化学工場など、人の立ち入りが困難な現場や、広範囲の点検が必要な現場では、人に変わってドローンが空撮を行うことで、人員・時間の削減、安全性の確保ができるなど、様々なメリットがあります。
まとめ
少子高齢化による慢性的な労働力不足、生産性向上といった産業からの要請だけでなく、空を自由に飛行することができない人間にとってのドローンへの少なからぬ憧れからも、ドローンへの期待は今後も高まっていくでしょう。
しかしドローンを本格的に社会実装するためには、自律飛行や衝突・落下回避などの技術面での課題のみならず、安全性の検証、プライバシーの保護といった法的課題など、様々な障壁が存在します。
今後の技術革新や法整備により、産業での活用がどのように展開していくのか、ドローンの今後の動向に注目です。