・建設におけるプロジェクト管理は、建築家に大きな負担をかけている
・Monographはプロジェクトの進捗・コスト計算を一括で行うソフトウェア
・建設デザインの経験を持つメンバーによる洗練されたUIが強み
はじめに
これまで、建築家が一つのプロジェクトを進める際には多くの苦労がありました。プロジェクトの進捗や人の関わり方、コスト計算に至るまでを、大量のスプレッドシートによって管理していたのです。これはプロジェクトの規模が大きくなればなるほど複雑化し、建築家の大きな負担となっていました。また、進捗によっては途中でプロジェクトの方向転換が必要な場合もあります。その意思決定には正確な現状を把握することが欠かせませんが、従来の方法ではリアルタイムで情報が揃わないことが往々にしてあり、建築家たちを悩ませていたのです。本記事で紹介するMonographは、プロジェクトをソフトウェアによって一括管理することで、建築家の負担を大きく減らすことに成功しています。早速詳しくみてみましょう!
未来を予測!?Monographの魅力とは
Monograph(モノグラフ)は、2019年にRobert Yuen(ロバート・ユエン)氏、Alex Dixon(アレックス・ディクソン)氏、Moe Amaya(モエ・アマヤ)氏の3名が創業した、サンフランシスコのスタートアップです。
この3名はそれぞれ元・建築家という経歴があり、建設の現場でどれだけ非効率的なプロジェクト管理が行われているかを思い知ってきました。その経験を踏まえて開発したのが、建築家向けプロジェクト管理ソフト、Monograph(モノグラフ)です。従来のスプレッドシートなどの方法が手作業による過去のデータ収集だったのに対し、Monographは収益性や予算の予測も自動で行ってくれます。これは、建築家がプロジェクトを時間通りに予算内で進めていく上で大きな助けになり、より質の高い建築を実現していくことに繋がります。
また、Monographは誰がいつ何をしたのかまで管理することができます。そのため、一人一人の労働量をしっかりと把握し、適切な評価と仕事割が可能になるのです。こうした評価制度の充実は、働く側にとってもモチベーションアップのポイントですね。
そして2020年3月10日、MonographはHomebrew VenturesとParade Venturesの主導するラウンドにおいて、190万ドル(約2億円)のシード資金を調達に成功しています。
洗練されたUIでユーザー急増中
創業メンバーである3人は、創業以前に建築事務所を対象としたUI/UXコンサルタントとして、ともに働いていたことがありました。その経験を活かして、Monographはシンプルに洗練され、初心者でも直感的に扱えるソフトウェアになっています。これはMonographの大きな強みであり、その導入のし易さから、既に数百人の建築家が利用を始めました。契約者は一人で活動する建築家から60人以上の事務所までと幅広く、内容もキッチンのリフォームから大型ホテルの建設など様々。あらゆるシーンで活躍が期待できるサービスということが分かります。
実際に、利用者のレビューをいくつかご紹介します。
・『30~40のソフトウェアを試した結果、使い易さやデザイン性など、満足度でMonographに匹敵するものはなかった』(ワシントンDC スウォッチルーム)
・『視覚的に見やすく優秀。プロジェクトの進捗とタイムスケジュールをチームごとに確認できて、大変役立った』(ユタ州プロボ ナイトン建築)
やはり扱いやすさに関する意見が目立ちます。ちなみに、スウォッチルームは駅や町のアートキュレーションから、ホテルやレストランといった大型施設のデザインなど幅広く手がけています。そういった企業が『使い易い』と評価していることが、Monographの実力を物語っていますね。このような支持もあり、Monographは現在、1億2500万ドル(約130億円)以上のプロジェクトの管理に使われています。
大規模イベントにも参加
「AIA Conference on Architecture」は、AIA(アメリカ建築家協会)が開催する、アメリカ国内の建築系企業が一堂に会する展示会です。ワークショップやセミナーなども開催され、ソフトウェア、建築システム、建材や工具等、最新のハイテク製品や素材を体験することができるため、建設業界の最先端に触れることができる場だといえます。
2万人以上を集客する同イベントにMonographも参加しており、来場者は実際に担当者の説明を聞きながらソフトウェアを体験することができます。Monographの美しいビジュアルは会場でも目を引き、着実にユーザーを獲得しています。
柔軟な企業文化が進化の秘密!?
Monographは常に新しい考え方を取り入れることに積極的です。そのため社員にも多くの休日を与え、出来るだけリフレッシュした状態で仕事に取り組むことを推奨しています。また、毎週金曜日には他社の人も交えた恒例のランチミーティングを開催。家族の話や、休日の過ごし方などの他愛のないコミュニケーションが、仕事にも良い影響を与えるのだそうです。こうした会社としての柔軟な姿勢が、Monographのような先進的なサービスを生んでいるんですね。
Monographの今後
1つのプロジェクトには、規模に関わらず建築家やデザイナー、エンジニアといった人間が関わります。それに対してMonographは、2020年中に構造、電気、機械のエンジニアやその他の有資格者も使える新しいバージョンのリリースを開始する予定しているといいます。
また、さらなる成長をすべく、調達した資金はソフトウェアエンジニアとカスタマーサポートのチームの人材獲得に活用していくことを明らかにしています。2019年にサービスを開始したばかりのMonographは、ここから更に成長していくことが期待されます。
また、出資者であるHomebrew Venturesのパートナー、Satya Patel(サティア・パテール)氏は「Monographは組織とプロジェクト管理を変革するソフトウェアを提供している。我々は、この市場で同社が成長し革新を続けていくことに期待している」と述べています。
まとめ
建設の世界には、まだまだアナログな文化が多く残り、更にはこれらの問題が人材不足に拍車をかけています。一方で、ITを駆使した建設テック(Contech)の分野はめざましく発展しており、建設分野でもモダンな変化が期待されています。昨今では、様々な企業が新たなサービスをうち出し始めましたが、良いサービスもユーザーまで届かなければ意味がありません。建設のようにまだ先進的なシステムが根付いていない分野では尚のこと、ユーザーを意識して開発することが求められます。つまりMonographの直感的で美しいデザインのように、いかにアイデアをパッケージするかという点も、今後の課題となっていくのではないでしょうか。