- インテリアデザインソフトウェア市場は、2018年から2028年度までに年平均9.07%の成長が見込まれている
- 中国を中心に展開するFREATHOME(フリートホーム)は本物そっくりのインテリアの3Dシミュレーションを提供
- FREATHOMEはユーザー同士で作成したインテリアデザインを共有・共同編集可能なプラットフォームの役割も果たす
はじめに
インテリアデザインに馴染みのない一般の消費者にとって、インテリアをデザインするという経験は非常に難しいものです。そのため物件や家具の販売において、3DのシミュレーションやAR・VR(拡張現実・仮想現実)を利用して、インテリアデザインを視覚的に、直感的に分かりやすく体験するサービスが増えており、買い手のイメージと実際の商品との相違を減らすために活用されています。
インテリアデザインソフトウェア市場は、2018年から2028年度の間に9.07%のCAGR(年平均成長率)を記録すると予想されています(注)。消費者は購買のオンラインへの移行、販売者においては予算管理や収益予測の精度の向上、建設設計のコストカットによる収益率の向上のため、こうしたソリューションが求められているのです。また、画像生成AI Midjourneyが大きく話題になるなど、インテリアデザインとAIの領域について大きく注目が集まっています。
特に市場拡大が見込まれるのがアジア太平洋地域です。アジア太平洋地域の主要都市、北京やムンバイなどでは人口の増加や都市化が進んでおり、例えば中国の都市政策(第14次5カ年計画)では、2025年末までに毎年1000万人の都市居住者を増やすことが目標とされています。さらにタイ、インドネシア、ベトナム、フィリピン、マレーシアなどの東南アジア諸国の都市化も予想されており、インテリアデザインソフトウェア市場は今後もアジア地域において成長していくことが見込まれます。
今回ご紹介するのは中国を中心に展開されているインテリアデザインソフトウェアFREATHOME(フリートホーム)です。一体どのようなサービスなのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
注:Mordor Intelligence, INTERIOR DESIGN SOFTWARE MARKET – GROWTH, TRENDS, COVID-19 IMPACT, AND FORECASTS (2023 – 2028)
インテリアデザインの3DモデリングプラットフォームFREATHOMEとは?
FREATHOMEとは、2018年11月に中国湖北省武漢市にて設立されたスタートアップ企業「绘一科技」(Huiyi Technologies)が展開するインテリアデザインソフトウェアです。強力な3Dモデリングエンジンとして知られるUnreal Engine(アンリアル エンジン)と、クラウド上で動作するアーキテクチャ設計により、タブレットやスマートフォンなどの端末から、直感的な操作によるリアルタイムで本物そっくりなインテリアデザインができるプラットフォームとなっています。
共同創業者兼CTOの雷赫(Lei He)氏は米国アマゾン本社のシニアエンジニアの経歴があり、湖北青年ビジネスインキュベーターでの創業期を経て事業を展開しています。2022年の春節(2月)に合わせて、内装や家具の配置を直感的な操作で体験できるFREATHOMEの限定体験版を公開しました。
绘一科技は2018年11月にエンジェルラウンドで100万元(約1940万円)を調達し、その後詳細な金額は公開されていませんが、2020年5月にプレシリーズAラウンドとして欧亚达家(Ayd Home Furnishing)より1000万元規模を調達、さらに2021年4月にはプレシリーズA+ラウンドとして虹一资本(Hong Yi Capital)より1000万元規模を調達、2022年1月にはプレシリーズA2ラウンドとして宝创资本(Bao Chuang Capital)より1000万元規模を調達しています。同社は登録資本金を240.6万人民元(約4690万円)としています。
インテリアデザインを共同編集できるUGCプラットフォーム
FREATHOMEは、3D CAD等で作成された設計図のレンダリングによる3Dモデリングだけでなく、エンドユーザー同士で作成した3Dモデルを共有したり共同編集できるUGC(ユーザー生成コンテンツ)プラットフォームを提供しています。ユーザーは、自分のインテリアを仮想空間に自由にデザインすることはもちろん、まるでゲームをプレイするように、友達の「部屋」を訪れて協力してインテリアをデザインすることもできます。
ユーザー同士で作成されたコンテンツを共有することで、さらなるユーザーを惹きつけていく仕組みを活用しているのがUGC(ユーザー生成コンテンツ)プラットフォームです。
绘一科技はこのインテリアデザインのUGCプラットフォームに蓄積された、ユーザーのお気に入りのインテリアや家具に関する情報を家具のサプライチェーンと結びつけることで、例えばユーザーが実際の製品をプラットフォーム上で注文できるようにしています。
サービスを体験できる「自由绘家居」ホールを武漢に開設
绘一科技は、FREATHOMEのユーザーが家具やインテリアを実体験できるようにするために、武漢に最初の「自由家庭家具体験ホール」を開設し、これまでに200世帯以上に体験を提供してきました。
創業者兼CTOの雷赫氏は、今後、需要に応じてさまざまな都市でイメージストアやポップアップストアを展開し、ユーザーがアプリで見る高品質な家庭用品の一部をオフラインストアで実際に体験できるようにしていく予定です。
まとめ
いかがでしたか?今回は中国の武漢を拠点とする绘一科技のFREATHOMEをご紹介しました。FREATHOMEは強力な3Dモデリング技術により直感的にインテリアデザインを作成できる機能のほか、ユーザー同士でインテリアデザインを共有・共同編集することができるUGCコミュニティの構築を通じて、インテリアデザインのオンラインプラットフォームを形成しています。
同社は今後どのように事業を展開していくのでしょうか。今後の動向が注目されます。