- 建設業界においては工事を請ける建設事業者の資金繰りの確保が課題となっている
- Billdは最長120日の建設資金後払いを可能にする金融ソリューション「Material Financing」及び労働費の最長60日先払いサービス「Pay App Advance」を展開
- Billdは建設事業者の信用リスクを引き受け、建設資材プロバイダーと建設事業者の営業拡大に貢献する
はじめに
建設プロジェクトの施工は、ゼネコンからサブコン(下請業者)への多層的な請負構造が一般的であり、この関係において各事業者のキャッシュフロー安定化と資金流動性の確保が不可欠となっています。
米国の建設業界向けフィンテックスタートアップBilld(ビルド)の2024年報告書によると、サブコンが元請けから支払いを受け取るまでには平均57日を要する一方、資材の支払いでは30日以内の後払い方式が主流となっていました。この結果、77%のサブコンが資材費を一時的に立て替えることとなり、資金環境への負担となっています(注1)。
そこで上記の「Billd(ビルド)」は、建設業界のサブコン向けにキャッシュフローの改善を支援する金融サービス企業を提供してきました。同社のソリューションは最大120日の後払い条件を提供することで、サブコンの資金繰りを安定化させることに一役買っています。一体どんな企業なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
注1)2024 National Subcontractor Market Report
建設金融ソリューションのBilldとは?
Billdは2018年にアメリカ・テキサス州にて創業された、建設事業者向けの金融ソリューションを提供するスタートアップです。2024年10月に1750万ドルの資金調達を実施し、累計調達額を約2億5,570万ドルとしました。リード投資家にはLL FundsとMissionOGが参画し、そのほかにRJT Credit、Ulysses Management、HighSage Venturesが名を連ねています。
主な製品として、資材購入のための120日間の支払い期間を提供するMaterial Financing(マテリアル ファイナンシング)と、支払い申請書に基づいて即日支払いを行うPay App Advance(ペイ アップ アドバンス)があります。サブコンはこれらのサービスを通じて資金繰りを改善し、より大規模なプロジェクトに入札できるようになります。
Billdは2019年5月、貸付業界向けのローン管理ソフトウェアを提供するソフトウェア企業Fundingo(ファンディンゴ)との提携を開始し、Fundingoの信用管理システムを導入しました。これによりBilldのローンの審査プロセスは30%短縮され、規制遵守を強化しながら、借入申請者との迅速かつ透明なコミュニケーションを実現。運営効率を大幅に向上させました。
さらに2021年12月3日、建設ソフトウェア最大手Autodeskの製品であるAutodesk Construction Cloud(オートデスク コンストラクション クラウド)との統合を発表しました。この統合により、Autodesk のBuildingConnected(ビルディング コネクテッド)やBid Board Pro(ビッドボードプロ)のユーザーは、Autodeskのプロジェクト管理ソリューションであるAutodesk Build上から、直接Billdの金融ソリューションにアクセスすることが可能となりました。
同社は2021年から2024年までに120%の収益成長を達成しており、直近の資金調達によりBilldはサブコン向けの金融ソリューションをさらに強化し、建設業界における重要なパートナーとしての地位を固めることを目指しています。
BilldのMaterial Financing と Pay App Advance
Billdのソリューションの一つは、資材購入に対して120日間の支払い期間を提供する「Material Financing(マテリアル ファイナンシング)」です。利用者は約5分程度の簡単なオンライン申請を行い、信用審査が開始されます。多くの場合24時間以内に承認が得られ、承認後にサービスを利用できます。また、購入総額の2%の手数料が課されます。Billdは建設業界のキャッシュフロー改善、効率性向上、リスク軽減、事業成長をサポートし、業界全体の発展に貢献しています。Billdの事業モデルは、サプライヤーとの直接連携、建設業者の信用リスク引受にあり、ローン利息、サービス手数料、延滞手数料が主な収益源となっています。
ソリューションの二つ目は、労働賃金向けの金融サービス「Pay App Advance(ペイ アップ アドバンス」です。これは請負業者が自己資金を使わずに労働力を確保するための、最長60日間の資金借入を可能にするものです。これにより請負業者は労働費用と資材費の急騰による現金フローの課題を軽減し、プロジェクトへの参入が可能となります。
これらのソリューションは、サブコントラクターとゼネコンの関係強化にも貢献しています。サブコントラクターが財務的に安定し、プロジェクトを円滑に進行できることは、ゼネコンにとっても大きなメリットとなります。Billdのサービスを利用することで、サブコントラクターは信頼性の高いパートナーとしての地位を確立し、より多くのプロジェクト機会を獲得することができます。また、Billdのプラットフォームを通じて、サブコントラクターは自社の財務状況や能力をより透明に示すことができ、ゼネコンとの信頼関係構築にも役立ちます。
太陽光発電資材プロバイダーにおけるBilldの活用事例
米国ネバダ州リノを拠点とし、2013年に設立されたRE Supply(リ サプライ)は、大規模な商用ユーティリティ・プロジェクトに特化したソーラー資材のリーディング・プロバイダーです。これまで数十年にわたり、太陽光発電、建設、調達、販売事業に携わってきました。同社は事業拡大のため、太陽光発電事業者向けに最大30日間のクレジットによる支払いオプションを提供してきましたが、この支払い期間は顧客にとって短すぎること、しかし支払い期間を長期化することによる不良債権化というジレンマに陥っていました。
そこでRe Supplyは、Billdとの提携を開始しましたBilldが顧客の信用審査と与信管理を引き受け、複雑で負担の大きかったプロセスを大幅に効率化しました。また、顧客に最大120日の支払い条件を提供しながら、RE SupplyはBilldからの即時支払いを受けることができるようになり、キャッシュフローが安定化しました。これにより、RE Supplyは資材販売と顧客関係構築に集中できるようになり、顧客満足度の向上に成功しました。
まとめ
いかがでしたか?今回は建設事業者に対して建設資金の最大120日後払いを可能にする金融ソリューションを提供しているスタートアップBilldをご紹介しました。Billdは建設資材のプロバイダーや銀行に代わって建設業者の信用リスクを引き受け、建設事業者においては資金の流れを改善する金融ソリューションMaterial Financingを提供していました。同社は今後どのように展開していくのでしょうか。今後の動向が注目されます。