- 建設現場において、非効率的な施工管理の改善が長年の課題となっている
- 大規模プロジェクトでは、平均して20%の工期延滞や80%の予算超過が発生
- Bulldozairは施工管理をアプリで一元化することによって、この問題を解決
はじめに
施工管理は円滑に建設プロジェクトを進める上で、最も重要な業務の一つです。しかし、現在も多くの現場では作業のデジタル化が進んでおらず、情報共有や資料作成などが紙ベースのアナログな方法で行われており、それらの影響による工期遅延やコストの超過が問題となっています。
実際に複雑な大規模プロジェクトにおいては、当初の計画より平均して20%の工期の延長や、最大で80%を超える予算超過が発生していると言われています*。
今回は施工管理をICT化することによって、それらの問題の解決を試みる企業Bulldozair(ブルドゼエア)についてご紹介します。
*参考:Mckinsey&Company
Bulldozairとは?
Bulldozairは、2012年フランスのパリで創業されたスタートアップ企業です。同社は、プロジェクトが進行する上で発生する膨大な情報を一元化し、クラウドで共有するプロジェクト管理アプリを提供しています。同サービスは建設業界のみではなく、不動産や医療現場など、効率的な情報共有を必要とする業界向けに幅広くサービスを展開しています。
同社の顧客にはEDF(フランス電力)、SNCF(フランス国鉄)、RATP(パリ交通公団)などの顔ぶれをはじめ、既に236社以上での採用実績があります。
同社はシードラウンドにおいて、世界有数のベンチャーキャピタルであるYcombinatorから12万ドル(約1,300万円)の資金調達に成功。立て続けに2020年11月にはシリーズAのラウンドにおいて、PRO BTP GroupやAnaxagoといった企業から466万ドル(約5億1,000万円)の資金調達。さらに有望なスタートアップ企業を各地から集める世界最大級のインキュベーション施設「StationF」にオフィスを構えるなど、業界から注目を浴びている企業であるという事が伺えます。
それでは、施工管理のICT化で注目を浴びている同社が、どのようなサービスを展開しているのか早速見ていきましょう!
直感的な施工管理アプリケーション
Bulldozairは、建設プロジェクトにおける情報を一元化し、直感的に管理・共有できるスマートフォン・PC向けのアプリケーションを展開しています。
例えば、紙の資料による情報の保管や共有、関係者各位との電話やメールによるコミュニケーション、移動を必要とする現場管理など、一つのプロジェクトの中には非効率的な工程が多分に含まれていました。ところが同社のアプリは、こうしたプロジェクトの企画立案から終了までに発生する作業を、オールインワンでサポート可能。その高い利便性に注目が集まっています。
それでは、同アプリの主な機能を3つ、詳しくみていきましょう。
01.迅速で安全な情報共有
Bulldozairが提供するアプリの魅力の一つは、建設プロジェクトにおける、作業の情報やドキュメントを一元化し、アプリ一つで共有や意見の交換をすることができるという点。アプリ利用の流れは非常に簡単で、まずは管理者がプロジェクトファイルを作成。その後プロジェクトに参加しているメンバーを追加することで、ファイルの共有が可能になります。
また、同アプリはチャットによるメンバー間のコミュニケーションも気軽に行えるため、プロジェクトに関するやり取りやフィードバックを、ストレスなく迅速に行うことができます。
アプリ内では、プロジェクトメンバーは異なる権限を持つ5つの役割(ビューアー、レポーター、コラボレーター、管理者、所有者)に振り分けられます。この機能により、情報の編集や閲覧ができる範囲を個人レベルで設定が可能。こうすることで、他社の人間がプロジェクトメンバーにいたとしても、安全かつ迅速に情報を共有することができます。ちなみに、各役割が持つ権限は上記画像のように振り分けられています。
02.管理を助けるタスクマネジメント
Bulldozairのアプリ2つ目の特長は、そのマネジメント効率の高さ。まず、アプリ内では建設現場における進行中のタスクを、作業内容やキーワード毎にグループ化をして管理することができます。そうすることで、施工管理者は一元化された情報の中から、効率的に必要な情報やタスクへアクセスすることができます。
また、事前にそれぞれのタスクの進捗状況や優先度は6色で表される旗によって視覚的に確認できるようになっているので、優先すべき事項がひと目でわかり、タスクマネジメントの能率性を飛躍的に引き上げることができます。
また、各プロジェクトの進捗状況は画像のように、色分けされたインジケーターで表示されます。さらにタスクの分類の際に期限の設定をすることで、納期の迫ったタスクの進捗情報などが施行管理者に通知することも。これによって施行管理者はひと目で複数タスクの進捗状況を確認することができるので、プロジェクト全体の進捗状態を効率的に把握することができます。
3.オンラインでの現場管理
特長の3つ目は、遠隔地における利便性。先ほど述べたように、同アプリではプロジェクトメンバー同士が密にコミュニケーションをとることのできるチャットシステムが有用です。これを利用して、作業員は現場の現状や不明点・問題点を共有。しかも、定規ツール使って実際の寸法を伝えたり、直感的に書き込むことのできる図を挿入してより分かりやすい形で情報を共有することができます。さらにファイルアップロードの際には、現場の図面やGoogleマップと紐づけることができるので、正確な位置情報の共有も可能です。こうすることで遠方でもタイムリーな現場の情報を得られ、プロジェクト関係者はオフィスにいながら現場の状況を把握でき、時間とコストのかかっていた移動を縮小することに成功しました。
また、施工管理者が当日の作業報告を行う際には、アプリが作業進捗をもとにしたレポートを自動で作成し、社内で共有。これによって、従来はわざわざ事務所に戻って作業していた手間を省略することができ、更なる効率化へとつながりました。
この他にも、建設プロジェクトの優先順位などに基づいて、自動生成または管理者がカスタマイズしたToDoリストを、アプリを通じて作業員へ共有する機能も。管理者は自分だけではなく、チーム全体が効率よく働ける現場を作り出すことが出来ます。
まとめ
今回は施工管理アプリを提供するフランスの企業Bulldozairをご紹介しました。今後は同社が提供するサービスにより、アナログな施工管理が一新され、施工管理や現場での作業が効率化することが期待されます。今回ご紹介したBulldozair以外にも以前当メディアでご紹介した、FieldwireLabs(フィールドワイヤーラブス)などの多くの企業が施工管理のICT化に乗り出しており、今後の展開が注目されます。